忠清北道清州で発生した20代女性への性的暴行・殺害事件の犯人とみられるクァク・クァンソプ容疑者(45)に対し、警察は昨年、所在地の把握が可能な電子装置(以下、電子バッジ)の装着を裁判所に申請したが、裁判所は「再犯の可能性はない」として棄却していたことが14日までに明らかになった。警察はこの日、自宅近くに住む20代の女性に性的暴行を加え殺害した後に、遺体を周辺の倉庫に遺棄したとして、クァク容疑者を指名手配した。
クァク容疑者は2004年、実の娘と内縁の妻の娘に性的暴行を加えた容疑などで起訴され、5年間服役し09年に出所した性犯罪の前科者だ。
大邱地検西部支庁は昨年5月、性犯罪の前科者であるクァク容疑者について、再犯の恐れが高いとして裁判所に電子足輪の装着を申請した。10年7月に施行された改正電子足輪法は、08年に刑務所から出所した性犯罪者についても、再犯の恐れが高いと判断された場合には、遡及(そきゅう)して電子足輪を装着させることを認めている。
しかし、大邱地裁西部支院は昨年8月「クァク元受刑者は出所後、マンションなどの建設現場でまじめに働いており、服役中も高卒検定試験に合格するなど、模範的な生活を送っていた。また今回の事件(当時)以前は前科もなく、出所後も犯罪で処罰を受けることはなかったため、再犯の危険性が高いとは断定できない」として電子足輪装着請求を棄却した。これに対し検察は大邱高裁に抗告したが、大邱高裁は「改正電子足輪法は(遡及適用を認めた点で)違憲の疑いがあるため、現在憲法裁判所が審議を行っている」とし、決定が出るまで判断を先送りした。
今回の事件のように、裁判所が電子足輪装着請求を棄却、あるいは決定を保留したケースは、検察が遡及請求した件数の84%以上に当たる。検察は10年7月から今年8月末まで、性犯罪の前科者2709人に対してバッジの装着を遡及して請求した。その中で裁判所が装着を認めたのは429人(15.8%)、クァク容疑者のように裁判所によって棄却されたのは233人(8.6%)、憲法裁判所の決定後まで保留になったケースは2047人(75.6%)だった。しかし、この2047人のうち20人以上は再び性犯罪で検挙されている。
韓国刑事政策研究院のキム・イルス院長は「犯罪に対する恐怖心や不安が高まった社会では、裁判所は『被害者の安全』を最優先に司法サービスを提供しなければならない。もし憲法裁判所が後から違憲との判断を下せば、その時点で国が賠償すれば良い。今のように裁判をためらっている間に、新たな被害者が発生する状況を放置してはならない」と指摘した。