米国製ドイツ車? 輸入車の複雑な生産事情

 ドイツブランドのスポーツタイプ多目的車(SUV)を購入しようとしたPさん(34)は最近、販売店員に「欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)でかなり安くなったのか」と尋ねた。しかし、店員から「この車は米国製だ」と告げられ驚いた。Pさんは「車の構造や設計は同じだが、ドイツ製ではないと聞いて、どうもだまされた気分だった」と話した。

 自動車輸入業者がブランドの国籍とは異なる第三国で生産された車を輸入し、輸入車のアイデンティティーがあいまいになったと指摘する声が聞かれる。

 顧客の需要が多様化するにつれ、代表的な車種だけを輸入していた過去とは異なり、世界各地の生産拠点から異なる車種を輸入するケースが増えているためだ。国産車との激しい価格競争に勝つため、あえてFTA締結国で生産されたモデルを戦略的に輸入するケースもある。

 フォルクスワーゲンが今月初めに発売した中型セダン「パサート」の運転席のドア開閉部には「米国製」という黒いステッカーが貼られていた。これまではドイツ・ボルフスブルグで生産されたモデルを輸入していたが、新モデルからは米国製に切り替えた。

 米国製モデルは車内が広々としていて、韓国の消費者の好みに合うというのが表向きの理由だが、実際には価格を抑える狙いがある。米国製はドイツ製とは異なり、バイゼノン・ヘッドランプ、発光ダイオード(LED)を使用した日中走行用ライト、パノラミック・サンルーフなどの装備がないため、価格が480万ウォン(約33万7000円)安い。

 米国製という点が不評を買うのではないかと懸念した同社は、ディーゼル仕様の「2.0TDIエンジン」など重要部品はドイツ製だと強調している。

金垠廷(キム・ウンジョン)記者
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