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社会・言論 石川 温の「スマホ業界新聞」

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石川 温の「スマホ業界新聞」 Vol.001

2012-09-15 22:30:00配信 コメント : 0

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 石川 温の「スマホ業界新聞」

                                                  2012/09/15(vol.001)

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《目次》

1.いよいよ創刊。iPhone5発表記念総力特集号
ーーKDDI vs.ソフトバンクモバイル LTE情報戦を追え

2.iPhone5テザリング解禁!KDDIのLTEはどこまで使えるか

ーーKDDI・ネットワーク担当者に聞く2GHzLTEの実力

3. ソフトバンクiPhone5に赤信号? なぜテザリングができないのか。

ーーソフトバンクモバイル・宮川潤一CTOに聞く

4. 今週のリリース&ニュース

5.編集後記

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1.いよいよ創刊。iPhone5発表記念総力特集号
ーーKDDI vs.ソフトバンクモバイル LTE情報戦を追え

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 どうも。ケータイジャーナリストの石川温です。

 ついに、メルマガ「スマホ業界新聞」が創刊となりました。

おかげさまで9月10日の公開以来、まだ1号も出していないにも関わらず、かなりの方々にチャンネル購読者様になっていただき、本当に感激しております。週間購読ランキングで11位になっていたときには、うれしい半面、期待に応えるべき、身が引き締まる思いでした。

 さて、このメルマガをこのタイミングに創刊したのは、何といってもiPhone5の発表があると噂されていたからでした。iPhone5に関する情報をいち早く、どこよりも濃い内容でお届けしたいということもあり、9月中旬という時期を狙っておりました。

 予想通りにアップルが9月12日に発表、日本では21日発売となりました。

 今週、来週は創刊記念ということもあり、iPhone5総力特集をお送りしたいと思います。今号はLTEネットワークについて掘り下げます。iPhone5で待望のLTEに対応し、ソフトバンクモバイルとKDDIはiPhoneのために2GHzでFD-LTEをスタートさせます。

 しかも、KDDIは「禁断」かと思われた「テザリング」も解放します。

 果たして、2GHzのLTEはつながるのか。そもそも、本当に速いのか。2キャリアのLTE担当者にそのあたりを突っ込んで聞いていますので、ぜひとも参考にしていただければと思います。


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2.iPhone5テザリング解禁!KDDIのLTEはどこまで使えるか

ーーKDDI・ネットワーク担当者に聞く2GHzLTEの実力

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「LTEサービス開始日に照準を合わせています」

 9月14日14時30分、KDDIは21日よりサービスを開始する「4G LTE」に関する記者説明会を行った。その2時間前の12時30分より、KDDIのLTE担当者に個別でインタビューを行うことができた。iPhone5に対応するLTEネットワークの詳細、Wi-Fiに対する取り組みなど、突っ込んだ話を聞くことができた。なお、担当者名は、業務に支障を来すということから匿名となっている。

ーーKDDIにiPhoneが導入され、1年が経過しようとしていますが、まずは感想を教えてください。

LTEネットワーク担当者

「やはり、LTEの2GHz対応が一番のトピックだと言えます。そこに向けて準備は進めてきましたが、期間としては1年も経っていない感じです。数千局を立ち上げるまで、過去に例のないスピードで実施してきました。言い方は悪いかも知れませんが、(アップルという)黒船がやって来たという感じです。ただ、この状況に対応できたと言うことは、とてもいい勉強をさせてもらった気がしますし、社内も『やればできる』といういい雰囲気になっています」

ーー実際、iPhoneユーザーはどのようなネットワークの使い方をするのでしょうか。Androidとの違いはありますか。

「トラフィック量は同じくらいです。ただ、iPhoneのほうが事業者に優しい感じがします。端末からのシグナリングに違いがあり、iPhoneは一気に要求がきて、すぐに終わるのですが、Androidはちょこちょことつながりっぱなし状況があります」

ーー気になるiPhoneが対応する2GHzのLTEネットワークですが、実際にどのようなエリア整備をされているのですか。

「エリアについては東名阪のトラフィックの高いところに面でしっかり打っています。そこに設備を追加していっています。

 うちは、数をピンポイントで打っていったり、数だけを稼ぐのではなく、面でしっかり整備していきます。

 屋外の基地局だけではなく、インドア、地下街なども計画をしており、12年度中にはメトロの駅なども含めてLTE化されていきます。単に基地局数だけを追いかけるという計画にはなっていません」

ーー速度はどうなりますか。75Mbpsはどれくらいになるのでしょうか。

「基本は75Mbpsだと思ってくださって結構です。最初は一部、37.5Mbpsのところもありますが、もともと使えなかったPHSのガードバンドが使えるようになり、そこにEV-DOを持って行き、空いたところをLTEにしています。

 他社のようにひねり出して、カツカツでLTE化を進めているわけではないので、品質はかなりいいです。もっと帯域を広げる計画をしていて、すみやかに75Mbpsになっていく計画です」

ーーすでにLTEを展開している他社を見ていると、エリアを広げるのに相当、苦労しているようです。75Mbpsのエリアも羽田空港や歌舞伎町など、いまだにごく一部です。KDDIとは何が違うのでしょうか。

「すでに開始している他社と、これから始める他社が苦労しているのは4波吹いているうち、ひとつをリプレイスしていくからです。このリプレイスするときに境界が干渉してしまうのです。LTEと3Gが並ぶと相当、お互いが干渉して品質が劣化します。このため、なるべく干渉しないように慎重に作業をしなくてはいけません。

 我々の場合、もともと5MHzは何もないし、EV-DOは幅が狭い(筆者注、HSDPAなどは5MHz幅なのに対し、EV-DOは1.25MHz幅)ので、全部に影響をしないので、お互いの干渉を気にせずにおいていける。広げるときもタイミングを見て広げられるのです」

ーーKDDIのLTEはメインは800MHzで都心部などは1.5GHzでエリア化していく計画がiPhone5の導入により、2.1GHzも採用することになりました。2.1GHzはiPhone専用の周波数帯といえるのでしょうか。

「結果的に2.1GHzはiPhone専用になっています。しかし、この先ずっとというわけではありません。この2GHzバンドはグローバルで使われており、我々の戦略的にも重要で、ベースバンドとして位置づけられるものとして考えています。スピードもそうだし、トラフィックもLTEにシフトさせいくのを速やかに行っていきたい。2GHzは20MHz幅の上り下りでいずれはすべてLTEにしていく。高速化をロードマップを担っていくバンドになっていきます」

ーー2.1GHzというと、ソフトバンクがプラチナバンドのCMでこれ見よがしに「つながらない」とアピールしています。屋内への浸透度はどうなのでしょうか。

「電波の特性としては、やはり800MHzと比べても屋内には入りにくいです。そのため、屋内もしっかり展開する計画を立てています。しかし、実際にはLTEが使えなくても、今回のiPhone5では、マルチキャリアRev.Aが使えます」

ーーiPhone5のスペックには、EV-DO Rev.Bという表記があります。これはマルチキャリアRev.Aが使えるということでいいのでしょうか。

「規格上ではCDMA EV-DO Rev.Bですが、我々はマルチキャリアRev.Aと独自に呼称し、サービス名称としてはWIN HIGH SPEEDとなっています。実際は一緒のものです。CDMA EV-DO Rev.Bは規格上何百メガで通信できるというものになっていますが、実現できているのは3波までを束ねるところまでです。

 アップルのスペックにあるCDMA EV-DO Rev.Bはほかの国ではやっておらず、うち以外のキャリアはないと思います。CDMA EV-DO Rev.Aと同じくソフトウェア的には基地局にインストールされており、混んでいるところは柔軟に3波を束ねていくという感じです」

ーーLTEというと、NTTドコモのLTEを見る限り、バッテリーの消耗がとても速い印象です。KDDIのLTEも同様なのでしょうか。

「LTEには通信中も賢くバッテリーをセーブする技術が入っています。通信中も賢く寝る機能が入っており、バッテリーをセーブできます。

 待ち受けにおいても、基本的には性能向上しており、例えばいままでは1XとEV-DOを両方見ていましたが、LTEに一本化されることで効率化が図れます。実際、iPhone5ではLTE通信時間が8時間とiPhone4Sの3G通信の6時間から増えています。3Gでの音声通話時間は8時間と変わりませんが、LTEの通信時間が延びています。通話時間が変わらないということはバッテリー自体の大きさは変わっていないにも関わらず、通信部分においてはうまく眠る仕組みがあるので、時間が延びているようです。また、アップルはプロセッサーも含めてチューニングしているから(通信時間が延びる)という言い方もしてますね」 

ーードコモのLTEを見ると、XIやFOMAハイスピード、3Gなどを異なる通信規格を頻繁に行き来して安定していないからバッテリーが消耗しているようにも見えます。その心配はないのですか。

「ああいった状態をピンポン状態というのですが、あの問題は端末側がLTEをつかみたいけどつかめない状態の時に起こります。端末は定期的にLTEを探しにいくので、バッテリー寿命に影響します。KDDIのLTEでは、端末にEV-DOのネットワークから『ここにLTEネットワークがあるよ』と教えて、端末にLTEネットワークを探させます。LTEのエリアでなければ、LTEを探させないように指示します。常時、LTEを探しにいくような余計な動きをしないので、バッテリーを無駄に消耗することがありません」

ーーそのあたりはドコモのLTEとは違うのですね。

「他社の詳細はわかりませんが、やはり干渉に苦しんでいる可能性はあります。電波の強度において、どの閾値に下がったら3Gをつかみに行きなさいと言う設定に苦労しているかも知れません。フィーチャーフォンなら、素晴らしいものを作れた可能性はありますが、やはりスマートフォンとなると、勝手にアプリが動き出すことがあり、バッテリー消耗につながることもあります」

ーーフィーチャーフォンやAndoridなら、キャリアのネットワーク環境に合わせた設定を本体に入れておくことができると思います。その点、iPhoneというのはアップルにお伺いを立てなくてはいけないため、キャリアの通信環境に合わせたカスタマイズができないので、大変なのではないですか。

「最小限にはなりますが、実はキャリアの意向がiOSに反映されています。iPhone4Sではau Wi-Fi Spotの設定プロファイルをダウンロードしてインストールしてもらっていましたが、iPhone 5では事前にOSに組み入れています。お客さんは意識することなく、公衆Wi-Fiスポットに接続されます。

 iPhone5ではアドレスが登録されており、自動的にレイヤー2でつながり、レイヤー3で認証されてネットにつながります。今回、iPhone5では5GHzのWi-FIに対応しており、通信速度が期待できるので、対応しました。これが2.4GHzだけだと、遅いので見送らざるを得ませんでしたが、5GHz対応ということで搭載しました」

ーーアップルは、そういったキャリアからの提案に理解があるんでしょうか。

「キャリアはサービス面に踏み込めないですが、インフラ連携や緊急地震速報メールなどの機能についてはアップルに対応してもらっています。アップルも垂直統合ですべてやっている会社なので、理解は早いです」

ーーほかのキャリアもアップルにそういった提案をしているのでしょうか。

「提案力勝負になっていると思います。今回、iPhone4Sの緊急地震速報の部分にあった『バッテリーの持ち時間が短くなる場合があります』という文言を消してもらいました。これはCDMA版は技術的にバッテリー寿命が短くなることがないのを理解してもらったのが理由です。お客様の利便性につながることであれば、アップルは対応してくれます。また、おそらく、アメリカではAT&T版で4Gという表示がでますが、あれもベライゾン対抗という意味合いから、表示してもらうようにお願いしたのかも知れません」

ーー今回、テザリングをやるということで、ネットで大騒ぎとなっていますが、インフラは大丈夫なのでしょうか。

「LTEを3つのバンドでやりますので、テザリングを含めたトラフィックを収容できる余裕がありますし、自信があります。今回、料金的には総量規制で5985円となっていますが、我々はWiMAXも経験済みなので、きちんとコントロールできると思います。

ーー今回、7GBという設定がありますが、実際、ユーザーはどれくらい使っているものなのでしょうか。

「普通の3Gスマートフォンユーザーだと平均2GBちょっと、+WiMAXスマートフォンだと3~4GBぐらいです。7GBというのはほとんどのお客様にとって意識する必要のない数字です。ほんの一握りの人が大幅なキャパシティを食っているわけで、そこは一般のお客さんを守る仕組みが必要です。

ーーソフトバンクがテザリングをやってこないのですが、どう見ていますか。

「いずれやってくるとは思います。今回、KDDIはアップルと、テザリング機能を先行で開発するパートナーになっています。テザリング機能は契約者が利用可能な契約状態にあるかのチェックをサーバーに見に行っています。以前はキャリアごとに独自にカスタマイズが必要でしたが、今回からインターフェースをより簡単にしようと共同で開発することになりました。

 ソフトバンクはその仕組みの接続試験が遅れていると言う可能性もありますし、ネットワークのキャパシティが対応できないという可能性もあるかも知れませんが、全く我々にはわかりません」

ーーKDDIの場合、データ通信と音声通話の同時利用ができないのが弱点とされていますが。

「現状、LTEデータと音声通話が同時にできるキャリアはありません。そのため、その機能がどこまで訴求されるかは未知数だと思います。

 ベライゾンはLTEデータと音声通話の同時利用が可能ですが、ベライゾンの端末は1XとLTEの両方のチップセットを貼り合わせて実現しています。AT&Tに対抗するためのようです。

 LTEと音声の同時利用はできず、事業者にもよりますが、LTEの機能改善をして、LTEの通信を3Gに落とせば、通信と通話の同時利用は可能です。

 アップルが今回の記者会見で、『シングルチップ、シングルレディオ』を強調していたのは、ベライゾンのAndroidスマートフォンがそれぞれ2つ貼り合わせていることへの対抗のようです」

ーーLTEの海外ローミングは実現できそうでしょうか。

「ぜひアメリカへのローミングを実現したいですが、アメリカ国内の地域事業者が多く、整理に時間がかかっているようです。アジアはLTEキャリアも多く、実現性は高そうです」

ーーLTEは地域によって周波数が異なり、Androidメーカーは国ごとに違ったモデルを投入してきましたが、アップルは3モデルにまとめてきました。かなり驚きだったのですが、どう見ていますか。

「あれは実質2つだと思います。CDMモデルの我々とGSMモデルのソフトバンク向けであるA1429は一緒です。AT&T仕様はバンド4がメイン。バント3とバンド4は送信が一緒なので、同じ筐体に入れるのが難しいようです。RFの部品屋さんが苦労しており、そのためiPadやiPhoneでは2モデルに分ける必要があるようです。ただ、来年に一緒にできる見通しがついています。

 また、アメリカのバンド13とバンド17も共存が難しいのでわけたようです」

ーー当初、LTEの開始は12月でしたが、予定を9月に前倒しするというのは相当、大変だったのではないでしょうか。

「休み返上でいまもやっています。アップルは本当に何も言ってくれないので、8月開始も視野に入れてエリアを広げてきました」

ーーネット上では、ライバルとLTE対応基地局の数を比較されたりしていますが。

「もともと免許数の公表にはタイムラグがあります。1カ月前の情報が少なくても、基地局数が急速に増えているので、情報が更新されれば問題ありません。

 ただ、ネットワークは基地局数だけではりません。エリアをどう設計するか、数字で見えないところがいちばん大事です。うちの会社はどの周波数帯でもそうですが、お客さんの手元に電波を届けるのがアイデンティティとしてやっています。

 バラバラに基地局を建てるのではなく、エリアをすべて整備してからでないと電波をオンにしない。穴ができてしまうし、日々変わっていては仕方ない。きっちりと面で整備して、オンにしていく。

 今回は開発期間が短く、免許申請の手続きが遅れている。まさにいま立ち上がってきている段階で、サービス開始日に照準を合わせています」

■取材後記

 iPhone5の発表イベント会場から、「KDDIはテザリングができる」とTwitterに書き込むと、アプリから次につぶやけなくなるほどリツートが止まらず、祭りと化した。ユーザーからするとKDDIの「禁断のアプリ」はSkypeではなくテザリングだったというわけだ。

 KDDIは「点ではなく面で勝負する」といっており、エリアはかなり期待したいところ。「数で争うものではない」とソフトバンクモバイルに敵意むき出しなのも面白い。

 個人的に期待しているのはマルチキャリアRev.A。iPhone4Sの3Gでもそこそこソフトバンクと対抗できていただけに、LTEだけでなく、3G環境でも快適になっていきそうだ。

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3. ソフトバンクiPhone5に赤信号? なぜテザリングができないのか。

ーーソフトバンクモバイル・宮川潤一CTOに聞く

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「(7GBの容量制限ならテザリングも)アリだと思う」

「2時間後にうちの宮川と会ってくれませんか」

14日16時半頃、電話に出ると開口一番、こう言われた。16時からiPhone5の予約が始まると言うことで、ソフトバンクショップで受付の順番を待っていたときだった。宮川とは、ソフトバンクモバイルのCTOである宮川潤一氏。LTEのネットワークに関して、話したいことがあるという。

 KDDI担当者への取材から6時間後の18時半、汐留のソフトバンクモバイルで宮川氏に再会した。以下、宮川氏が記者たちに語ったLTEやプラチナバンドについてのコメントだ。

■iPhone5が対応する2GHz帯のLTEネットワークについて

「相当前から工事している。政令指定都市は来年3月に終わるだろう。(KDDIが指標としている)実人口カバー率でいうと、(KDDIと)同じ定義とは限らないが、だいたい91~92%程度になる(筆者注、KDDIは98%)。KDDIは800MHzと1.5GHzがメインだが、うちは2GHzであり、数値を達成するのは大変だ。かなりの本数を建てており、すでにアウトドア基地局は7万弱ある。W-CDMAベースの基地局だが、ソフトウェア更新でLTEにできる。9割以上はLTE基地局対応で、リモートで更新できる。簡単なのだが、実際は周波数が足りず、やりくりが大変な状態だ。そこで手こずっている」

■都心部のLTEネットワーク構築について

「都心部は(現在3Gサービスを)2GHz帯で4波(20MHz×2)での運用をしているが、すでに山手線内はパンパンで限界に来ている。5波目の900MHzのプラチナバンドにユーザーを収容して運用し、2GHz帯の1波を空けて、そこをLTE化していく。一番欲しい都内は(逼迫しており)LTEは1波運用となる。東京とそれ以外はパラメータが違うが、来月ぐらいから乗せ始める。チャンスがあればもう一波を切り替えていきたい。まずは2波のLTE化をなんとか来年中にやりたい」

■LTEの通信速度について、37.5Mbpsか75Mbpsか。

「残念ながら、一番確保したい都心部は1波運用(37.5Mbps)になると思う。山手線の品川駅から新宿駅の間は17日以降、1波確保が終わるため、停波させればLTEがふける。ここは今月末までには着工する。

 埼玉県や群馬県はもう1波確保できるため、2波運用として75Mbpsにできる」

■都心部の逼迫状況

「全国6万7000の基地局のうち、山手線内には1000局弱あるが、特に1波を剥がせるチャンスがない。山手線内で言うと100局ほどはパンク状態で剥がせる見通しが立っていない状態。ただし、なんとか9月の最終週で止めて、1波を止めてしまえば、翌日からLTEとして動かせる。いまは最後の山場で、これをしくじったら、私の首が飛ぶ。ものすごく綱渡りをやっている。

 特に厳しいのは山手線の品川駅から新宿駅のあたり。反対側の秋葉原から上野、池袋あたりはすでに1波を停波し、LTE化されている基地局もある」

■工事の進捗状況

「プラチナバンドについては、毎月2000局を超えるスピードで展開している。FDD-LTEも同じくらいのペースだ。AXGP(TD-LTE)も毎月2000局ペースで工事をしている。

 1年間やりくりできれば、翌年度は900MHzを10MHz幅×2で運用できるので、そこからは堂々と、開設計画通りにやり遂げようと思っている。

 プラチナバンドは3万局と開示したが、アグレッシブに攻めてドコモを超えるエリアにしていきたい。そこはLTEを乗せていくつもり。プラチナバンドの基地局はLTE対応を最初から導入している」

■auのLTEネットワークに比べてのソフトバンクモバイルの優位点

「今回は2GHzのLTEということもあり、長年、2GHzで3Gを展開してきた、我々のほうが経験があり、LTE化を加速できるのではないか。都内では2GHzにおいてはKDDIのほうが空いているだろうが、エリアについても、後から追いつくことになると思う。

 LTEであってもデータ通信を行いながらの通話は可能(筆者注、LTEでの通信を継続するのか、3Gに落ちるのかは不明)。LTEと3GとのCSフォールバックはずっと作っており、iPhone検証チームが動作確認を行っている。iPhone4Sで提供している機能はLTEになっても基本的には同じように提供できる」

■なぜ、ソフトバンクモバイルはテザリングを提供できないのか。

「営業部門からはテザリングの提供を急かされているが、もう少し落ち着かないと厳しいと思う。上位4%のユーザーが50%程度のネットワークを占有しており、テザリングをやるとさらに偏ってしまう。それよりもまだスマートフォンデビューしていないユーザーが多いので、彼らのスマートフォンデビューを加速させていきたい。そうしたユーザーが青天井の料金でビックリしてしまってはいけない。社内にこの意見がいつまで通るかわからないが、今のところは理解してもらっている」

■KDDIのように7GBなどの容量制限を設けてのテザリングはできないのか。

「それはありだと思う。受け入れられるかどうか冷静な判断をしたい。使う人からお金をいただき、使わない人は今まで通りというのが一番の理想。ドコモはよく考えられたのだろう。ただ、7GBは大きな幅で、アメリカのように1GB刻みにすればやりやすいのではないか」

■iPhone5のデータ定額プランは容量無制限であるのはどうしてか。

「いまのiPhoneユーザーに制限がついてしまうのは良くない。iPhoneユーザーをたくさん抱えた我々としては、今まで通りにしていくのがベターではないか。

 iPhoneを販売した当初、我々の想定よりもユーザーが飛びつかなかった。それが本音。ソフトバンクにはインターネットばかりやって来た連中ばかりで、もう少し、我々は行けると思っていたもののユーザーは反応しなかった。そのなかであきらめず、iPhoneマスターなど使い方を教えるような仕組みをつくり、売れるようになるまで2年ぐらいかかった感覚がある。いまだにスマートフォンにたどり着いていない人が多く、そういった人たちにスマートフォンになったら、料金が上がるという印象を持って欲しくない。データ通信の従量課金が受け入れられるかまだ未知数と言える」

■AXGP(TD-LTE)について

「AXGPのネットワークは作り込めている。都内は今でも30Mbpsは出ている。スペック競争ではなく、スループットでユーザーに満足してもらいたい。理想的なのが、iPhoneのTD-LTE対応だが、なかなかアップルがイエスと言ってくれない。確かに世界でTD-LTEを頑張っているのがうちぐらいなので、仕方ない。いろんな意味で説得を続けていくつもりだ」

■ソフトバンクWi-Fiスポットの5GHz対応について

「いまある31万局のうち、1~2割ぐらいのスポットが5GHzに対応済み。機材の入れ替え作業を行っており、来年3月末までには、ほとんどが5GHz対応になっているはずだ」

■取材後記

 宮川さんは実にいい人で、包み隠さずいろんなことを教えてくれます。話を聞いていると本当に勉強になります。

 ソフトバンクのLTEはやはり山手線圏内、特に品川から新宿はかなり厳しそうな感じ。2GHzのノウハウはあるというが、最初は苦戦しそう。21日以降、各メディアでは一斉にiPhone5のLTE対決をするだろうから、ここで「つながらない」「遅い」というイメージがついてしまうのは何とか避けないといけないだろう。

 取材をしながら、ふと思ったのが「iPhoneは2年間、売れなかった」という発言。孫社長は決算会見で事あるごとにiPhoneが売れ行き好調なプレゼン資料を背に「かつてiPhoneが売れないといった専門家がいた。反省して頭を丸めるべきである」と言いまくっている。ネットでは自分がそれを言ったことになっており、いつも納得いかない時間をすごしているのだが(確かにテレビで『自分はハワイに買いに行くほどiPhoneは素晴らしいスマートフォンだと思う。しかし、日本で普及するには時間がかかるのでは』と言ってきた)、やっぱりソフトバンク社内でも「売れてない」という判断だったわけだ。孫社長は、相変わらず「過去を曲げるなぁ」というのが宮川さん取材をしての感想だ。

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4. 今週のリリース&ニュース

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 毎週、膨大に出されるキャリアやメーカーからのプレスリリースや、話題のニュース記事をピックアップ。ニュースとしての重要度とともに、キュレーションしていきます。

■9月11日(火)

 「ソフトバンク かんたん募金」をリニューアル

<重要度★★★>

http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2012/20120911_01/

音声通話やアプリを使って募金ができる。地味だけど、いいサービス。でも、募金してもらえるお父さん犬の壁紙は別に欲しいとは思わないけど。お父さんってまだ人気があるのでしょうか。

NTTドコモとリンク・プロセシングがスマートフォンを活用した法人企業向けクレジットカード等決済ソリューションの提供に合意

<重要度★★★>

http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2012/09/11_00.html?ref=nr_index

ソフトバンクのPay Pal here対抗っぽいサービス。カードリーダー兼プリンタが大きいので、こっちにAndroidを埋め込んだ方が早そう。手軽さという意味ではやはりソフトバンクのほうが優位な感じ。

■9月12日(水)

JR東日本仙石線地下区間で携帯電話サービスが利用可能に

<重要度★★★>

http://www.nttdocomo.co.jp/info/notice/tohoku/page/120912_01.html?ref=nr_index

ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの連名プレスリリース。イーモバイルはどうした?

■9月13日(木)

Apple、iPhone 5を発表

<重要度★★★★★>

http://www.apple.com/jp/pr/library/2012/09/12Apple-Introduces-iPhone-5.html

事前にネットに流出していたまんまのデザインに逆にビックリ。

Apple、新しいiPod touchとiPod nanoを発表

<重要度★★★★★>

http://www.apple.com/jp/pr/library/2012/09/12Apple-Introduces-New-iPod-touch-iPod-nano.html

今回の会見で、意外と良かったのがiPod touch。質感も高く、機能もiPhoneに匹敵するだけに、若者を中心にかなり売れそう。iPod touchを触ってしまったが故に、アップルへのお布施人生が始まりかねない。

Apple、新しいiTunesを公開

http://www.apple.com/jp/pr/library/2012/09/12Apple-Unveils-New-iTunes.html

iPhone5が9月、iPod touchが10月発売。iTunesも10月以降ということは、もしかすると、iPad miniも10月あたりに発表になるのか?

KDDI、iPhone5に関するお知らせ

<重要度★> 

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0913a/index.html

まぁ、とりあえず出します的なプレスリリース

ソフトバンクモバイル、「iPhone 5」について

<重要度★> 

http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2012/20120913_01/

上に同じ。

■9月14日(金)

au、iPhone 5を9月21日より発売

<重要度★★★>

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0914f/index.html

田中社長はアップル本社に待機し、料金などをその場で決めたという噂。

KDDI、MNP基本料割引キャンペーン「女子割」の実施について

<重要度★★>

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0914e/index.html

今回、攻めている感じのKDDIだけど、この「女子割」というネーミングだけは意味不明。女性限定かと勘違いさせつつ、ちゃんと男子割もあったりするわけだし。全員が対象のキャンペーンなら、もうちょっとおもしろいネーミングはなかったのか。

auの次世代高速通信サービス「4G LTE」の提供開始について

<重要度★★★>

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0914a/index.html

Andori向けはテザリングがオプション料金になってしまっている。+WiMAXの料金との整合性をつけようとしているようだが、逆にわかりにくくなってしまった。ツメが甘い感じ。

KDDI、「4G LTE」が海外132対地で「海外ダブル定額」に対応、対象事業者の自動選択でさらに便利に

<重要度★★★★>

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0914b/index.html

各キャリアで使える国と地域を競っているが、もはや日本人が一般的に行く場所は網羅されており、あまり意味が無い競争かと。でも、対象事業者の自動選択はかなり便利になりそう。NTTドコモもすべての事業者が定額対象になった。あとはソフトバンクだな。

KDDI、「電話きほんパック」の提供開始について

<重要度★★>

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0914c/index.html

待ちうた(105円)、三者通話サービス(210円)、迷惑電話撃退サービス(105円)とか、それらに必要性を感じないのは自分だけか?

KDDI、5GHz対応で外出先でもご自宅でもサクサク快適インターネット
公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」のスポット数が20万を突破

<重要度★★★★>

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2012/0914d/index.html

iPhone5の5GHz対応をしっかり準備していたのは立派。ちゃんと高速で使えるのか早く試してみたい。

「SoftBank 4G LTE」の提供開始について ~9月21日、2.1GHz帯でFDD-LTEがスタート!~

<重要度★★★>

http://mb.softbank.jp/mb/news/contents/201209141009260000/

AXGP(TD-LTE)が「Softbank 4G」で、FD-LTEが「SoftBank 4G LTE」って、わかりにくいな。で、他社に影響を受けた感じの料金プランになってしまった。ソフトバンクがすっかり守りに入ってしまった感じがあって残念。

ソフトバンクモバイル、9月21日より「iPhone 5」を発売

<重要度★★★>

http://mb.softbank.jp/mb/news/contents/201209141009590000/

テザリングができないことがどう影響を及ぼしてくるか。結構、auにMNPする人も多そうだし、10月初旬のTCA発表が楽しみ。

ソフトバンクモバイル、「下取りプログラム」を9月21日より開始

<重要度★★★★>

http://mb.softbank.jp/mb/news/contents/201209141709150000/

ソフトバンクらしいナイスアイディア。これ、auも対抗して、ソフトバンクのiPhoneを下取りしてくれればいいのに。でも、冷静に考えると中古スマートフォン買取業者にもっていったほうが得なんだよな。

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5. 編集後記

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 今週は本当に中身の濃い一週間でした。

 月曜日はのんびり原稿が書けたものの、火曜日は羽田空港から朝7時10分発の台湾・松山空港行きで現地9時過ぎに台北に到着。現地で原稿を書きつつ、お昼は小籠包、13時30分からはHTCのKDDI向けモデル「HTC J」が台湾と香港で発売されるという記者会見に参加。現地のプロモーションも乃木坂46が担当するのだが、彼女らがやってくるのは翌日ということで撮影できず。3時間ほど取材や撮影、囲みをこなしつつ、16時過ぎには空港に戻り、18時15分発で羽田空港には22時25分頃到着。台湾なら日帰りでも出張できるんだと実感。

 水曜日は午前中に原稿を書き、午後イチから日本テレビ、夜はテレビ朝日でコメント撮り。その後、友人と会食した後、深夜1時半からニコニコ生放送のアップル記者会見実況中継放送に参加。朝4時半ぐらいまでしゃべり、帰宅途中に歩きながら「めざましテレビ」の電話コメント収録。朝6時から日経新聞電子版用コラムを書き、8時過ぎにはiPhone5発表イベントを開催する渋谷ヒカリエに移動。開始前にTBSからコメント取材を受け、10時から2時間の中継録画を見た後、タッチアンドトライを経て、12時半には汐留の日本テレビへ。コメントを取り終え、またも14時半に渋谷に戻り、取材をしたのち、17時からはテレビ朝日。ここでは「iPhone5が採用したLTEがどんなに速いか」を実験するため、なぜかNTTドコモのXi・GALAXY SⅢとFOMA・GALAXY SⅡでYoutubeで動画をダウンロードして速さを比較するという実験に立ち会いつつコメント。しかし、LTEが不安定だったり、GALAXY SⅡのほうがXiよりも速くダウンロードできてしまうなど(何度もトライした後、SⅡは低解像度の動画だったことが判明)。無事に実験が終了した後、次は四ッ谷のスタジオにいって、端末撮影に立ち会う。23時にこの日は終了。

 金曜日は朝10時半から取材があり、さらには12時半からKDDIでLTE担当者に話を聞く。14時半からはKDDIのLTE記者会見。16時からソフトバンクショップでiPhone5の予約待ちをしていると、ソフトバンクモバイル広報に呼び出され、18時半から宮川さんの取材。20時からは某雑誌の鼎談企画に参加。その後、2件の打ち合わせをこなして終了という感じ。

 で、土曜日は朝からこのメルマガを書いています。。。

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日々、発信されるスマートフォン関連のニュース。アップル・iPhoneにまつわる噂話から、続々と登場するAndroidスマートフォンの新製品情報。ネットワーク障害やキャリアの新サービスなど、話題に事欠かないのがスマートフォン業界です。膨大なニュース記事があるなか、果たして、どの情報が重要で、今後を占う意味で重要になってくるのか。ケータイジャーナリスト・石川 温が独自の取材網を生かしたレポート記事を執筆。さらに業界のキーマンにもインタビュー取材を行い、スマートフォン業界の「今」を伝えます。スマートフォン業界人の「必読紙」を目指します。
著者
石川 温
プロフィール
ケータイ/スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。現在は国内キャリアやメーカーだけでなく、Googleやアップル、海外メーカーなども取材する。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」という連載を執筆中。新聞、雑誌だけでなく、テレビやラジオでもコメント出演をこなす。近著に『スティーブ・ジョブズ 奇跡のスマホ戦略』(エンターブレイン刊)がある。
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