「謝罪外交」とか「土下座外交」という言葉があります。戦後の日本は韓国を始めとするアジア諸国に対してくりかえし謝罪し、多額の賠償も行ってきた、なのにどうしていまだに謝罪を求めなければならないのか、我慢ならん、という意味合いで使われる言葉です。謝罪や賠償を繰り返してきたなどというのは大嘘なのですが、驚くほど多くの人がこれを信じているという現実があります。投稿先: fj.soc.history他
こうした嘘を広げてきた元凶の一つと言えるのが、右派マスコミが執拗に出しつづける「嫌韓本」です。韓国人自身が自らへの反省を込めて書いたと大々的に喧伝された『醜い韓国人』など、その代表例と言えるでしょう。この本は、実際には「評論家」加瀬英明氏が韓国人名を騙って書いたものであることが明かになっているのですが、こうした悪質なプロパガンダ本がどのような害悪をもたらしてきたか、そのサンプルを下記の記事などに見ることができます。
加瀬英明氏は映画『プライド 運命の瞬間』の製作委員会代表でもあります。日本の過去を美化するためなら嘘も改竄も平気、というその体質は、『醜い韓国人』の頃から少しも変わっていないようです。
| タイトル | 投稿日 |
| Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu" | 1996.05.29 |
| Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu" | 1996.05.31 |
| Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu" | 1996.06.04 |
| Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu" | 1996.06.17 |
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Subject: Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu"
Date: 29 May 1996 03:30:30 GMT
高橋(亨)です。
In article <...> Y.Y writes:
>
>我が国はすでに韓国に50億ドルの賠償金を払っているはずなのである
>が。
これはびっくり。どこからそんなガセネタを拾ってきたんですか?
1965年の日韓協定で日本が拠出したのは5億ドル(政府無償贈与3億ド
ル+政府借款2億ドル)、民間借款を含めても8億ドルですよ。
それに、「賠償」という文字がどこにも入っていないことからも分かる
ように、これらの金はあくまで「経済協力」として出したもので、賠償
として支払った金など1ドルもないはずですが。
>ついでに、当時の外相が、謝罪しているし。(これについて詳しい
>情報求む。どこにもくわしくかいてくれてない・・・)
謝罪なんかしてませんよ。交渉の過程で韓国側は謝罪を求めたけど、日
本側は最後までつっぱねてます。
>今の状況を見る
>と、もはや「謝罪のための謝罪」という気がする。「けじめをきっちり
>つけないからだ」?我が国はかれこれ30年も韓国にあやまり続けてい
>る。永遠にあやまり続けるしかあるまい。
これも何を根拠におっしゃってるのか分かりませんけど、日本政府が朝
鮮植民地支配に関して明確な謝罪をしたのは、1990年3月(サハリン残
留韓国・朝鮮人問題に関する中山太郎外務大臣による謝罪答弁)が最初
ですよ。
>南京事件(蒋介石が起こした方)、尼港事件、通州事件、漢口事件、済
>南事件、日本人従軍慰安婦について真相究明するように、求めていくべ
>きだ。やったことはどちらもかわらない。正当化するつもりかって?不
>可能だね、それは。「被害者の痛みが分からないのか」って?痛み分け
>ですな。空襲なんて虐殺だろう?それに、上に挙げた事件のうち、いく
>つ知ってたの?
もちろん全部知ってますけど、それが何か?
>片手落ちの知識ほど恐いものはない。
いや、全くその通りですね。
Newsgroups: fj.soc.history
Subject: Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu"
Date: 31 May 1996 10:04:55 GMT
こんにちは。高橋(亨)です。
In article <...> C.C writes:
>
>ここにNGに書くのは久しぶりです.
いや、本当にお久しぶりですね。
>In article <96May29...>, t-takaha@... says...
>>In article <...> Y.Y writes:
>>>我が国はすでに韓国に50億ドルの賠償金を払っているはずなのである
>>>が。
>>これはびっくり。どこからそんなガセネタを拾ってきたんですか?
>
>補足させてください.
では私も多少補足を。
>1.賠償について
>
>50億ドルのうちわけは恐らく以下のようなものだと思います.
>- 1965年の日韓基本条約に同時に結ばれた4つの協定の中の一つ,
> 「請求権及び経済協力に関する協定」の中の8億ドル
> - 3億ドル相当の日本の生産物および日本人の役務の10年間無償供与
> - 2億ドルの政府借款
> - 3億ドル以上の民間信用供与の期待
>- 1983年に当時の中曽根首相が,就任直後に韓国を訪問したときに
> 表明した,韓国第5次経済発展5ヶ年計画に対する40億ドルの資金協力
>
>なお,日韓基本条約にも4つの協定の中にも,「植民地支配」とい
>記述も「謝罪」の言葉も一切ありません.当然「賠償」という言葉も
>でてきません.
ただ金だけ出して賠償になるわけがないというのは分かった上での蛇足
なんですが、まず、借款というのはお金を差し上けるわけじゃなくて貸
すんですよね。利子つけて返してもらう金を賠償だと言うのはいくらな
んでも無理というものでしょう。1983年の40億ドルももちろん借款です。
もしこれが賠償なら、例えば日本はエジプトにも1993年度までの累計で
4326億円にのぼる円借款を供与している[1]ので、エジプトに対しても
莫大な賠償金を支払っていることになってしまいます。:-)
で、無償で提供したのは結局日韓協定中にある3億ドルだけなんですが、
これはなぜかお金じゃなくて上にあるとおり「日本国の生産物および日
本人の役務」で供与しています。どうしてこういう方式をとったかにつ
いて、外務省条約局長(当時)の中川融氏は次のように述べています。
「大声じゃ言えないけれど、私は日本の金ではなくて、日本の品物、機
械、日本人のサービス、役務で支払うということであれば、これは将来
日本の経済発展にむしろプラスになると考えていました。それによって
相手国に工場ができるとか日本の機械が行くことになれば、修繕のため
に日本から部品が輸出される。従って経済協力という形は決して日本の
損にならない」[2]
相手国への経済進出の足掛かりになる、出す方にとって得な賠償なんて、
まるで形容矛盾ですね。
>3.「謝罪」について
>
>よく「土下座外交」ということばを聞きますが,日本の戦後処理は
>それどころか,十分「毅然」としていたというのが私の印象です.
同感ですね。謝罪と補償を徹底的に値切り倒した辣腕ぶりは確かに相当
なものです。
>だれがどのような意図でこのような話を流し始めたのかよくわかりませんが,
>30年も謝罪を続けているという話を否定する人がこのニュース上でも
>ほとんど現れなかったところをみると,結構定着した考えのようですね.
私も元記事の誤った事実認識を前提としたフォローばかり出てきたのに
は驚きました。一般人の無知に付け込んで加害者と被害者の立場をすり
替えようとする一部マスコミ・文化人の策動のせいでしょうか。日本が
韓国に対して30年も謝罪し続け、賠償もしてきたなどという認識が広まっ
ているとしたら、実に困ったことです。
>私の知っている「謝罪」をならべてみました
>- 1965年日韓基本条約仮調印のため韓国を訪問した当時の椎名外相
> が空港での到着声明の中で,
> 「両国の長い歴史の中に不幸な期間があったことはまことに遺憾な
次第であり,深く反省する」
> という話がありました.
> 1990年代以前のものとしては,一番踏みこんだものでしょう.
> とはいえ,正式な会談の中での話でもありませんので,国としての
> 「謝罪」とは言えないでしょう.(条約調印のためのリップサービス
> として性格が強いと思います)
これじゃその「不幸な期間」が具体的にどんなもので、それを作り出し
た責任が誰にあるのかすら言ってないですからね。それに「反省」とい
うのは一人でするもので、相手に対してする謝罪とは違います。
おまけにその同じ椎名外相が、
「台湾を経営し、朝鮮を合邦し、満州に五族協和の夢を託したことが帝
国主義というならば、それは栄光の帝国主義である」[3]
なんて本音をばらしちゃってますから、相手にされないのは当然でしょ
う。
>- 私の知る限り,首相の発言としてはじめて,戦前の日本の行為に対して
> 「反省(謝罪だったかもしれない)」を口にしたのは,海部元首相だと
> 思います(1989年 or 90年?).どういう席で言ったかは
> 覚えていません.
1990年5月、当時の盧泰愚大統領を迎えての首脳会談の席上ですね。植
民地支配について、「謙虚に反省し、率直におわびの気持ちを申し述べ
る」と発言しています。
>- 細川元首相が「侵略戦争」という言葉を初めて口にしたと思います.
> ここで初めて謝罪表明があった,と私は認識しています.
> ただし,対称国に対して個別に謝罪が行われた訳ではないので,
> その後の日本国首相のアジア訪問は「謝罪表明」とセットになりました.
>
>とまあこんなところです.
>最後に,「土下座外交」を嘆いている面々へ.
>少なくとも橋本現政権においては,「土下座外交」はないでしょうから
>ご安心あれ.なにせ「先の戦争を侵略戦争だと申し上げるつもりはいっさい
>ありません.」と国会で言い切っていらっしゃいます.
一時金に添えて元従軍慰安婦に出すことが求められている謝罪の手紙に
ついても、「なぜ謝罪しなければならないのか、私にはわからない」そ
うですから。(ここは記憶に頼っているので、細部は違うかも知れませ
ん。)
[1] 朝日新聞1994年7月23日朝刊「円借款、急激な円高で返済負担重く
対応追われる借入国」
[2] 高崎宗司『「反日感情」韓国・朝鮮人と日本人』講談社現代新書 P.47
[3] 内田雅敏『「戦後補償」を考える』講談社現代新書 P.117
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Subject: Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu"
Date: 04 Jun 1996 04:48:08 GMT
こんにちは。高橋(亨)です。
In article <...> Y.H writes:
>In article <...> S.H writes:
>>この本って、韓国内の知識人から「韓国人のフリをした日本人がデタラメを書
>>いている」っていってツッコミが入っている有名な本ですねー。
>
>「有名」なのは、「歴史検証編」じゃない方の本だと思います。
これはまぁそうなんですが、Y.Yさんは
In article <...>
Y.Y> これは、「醜い韓国人」(2冊でてます)からの引用。
と書いてますから、彼は「有名」な方も含めて両方参考にしてるようで
すね。
>あと、この本は加瀬英明氏が書いてるという指摘は、日本国内でも
>ありましたね。宝島30のバックナンバーを見れば出てくるでしょう。
この『醜い韓国人』騒動に関して私が見たのは:
姜尚中「『醜い韓国人』と醜い言論人」(『噂の真相』1995年8月号)
申東薫「『醜い韓国人』を書いた加瀬英明氏の”犯罪”」
(『週間金曜日』1996年3月29日号)
などですが、これらによると、この騒ぎの経緯は大体次のようなもので
す。
(1) 1993年3月:朴泰赫『醜い韓国人』(光文社) 出版。ベストセラーに。
(2) その直後から、「著者は韓国人ではないのではないか」という指摘
が出始める。理由は韓国人が書いたとは考えられないほど韓国の歴史、
民俗、言語等に関する誤りが多いため。
(3) 更に、朴氏の実在が確認できないこと、加瀬英明『「畏まる」日本
人、「恨」の韓国人』(講談社)との類似点が(誤りも含めて)が多数あ
ることなどから、実質的著者は加瀬氏らしいことが同年秋ごろまでにほ
ぼ判明。
(4) 1995年3月:『醜い韓国人<<歴史検証編>>』(光文社) 出版。韓国人
協力者張世淳氏の存在を明かす。
(5) 1995年4月:韓国SBS(ソウル放送)の調査報道番組『そこが知りた
い』放映。張氏がインタビューに答え、自分が提供した原稿に加瀬氏が
勝手に加筆・歪曲して『醜い韓国人』を出版したと証言、加瀬氏側に
(長期滞在ビザの入手等をめぐって)懐柔された過程まで明かしてしま
う。更に、著作権者を加瀬英明氏とした『醜い韓国人』の出版契約書の
存在が明らかとなる。
前記の雑誌記事が正しいとすると、加瀬氏は張氏から提供された資料や
原稿を素材として、あたかも韓国人の著者自身が日本による朝鮮植民地
支配を高く評価しているかのような著書をでっちあげたということにな
ります。もしそうなら、この種のペテンとしては架空のユダヤ人をでっ
ちあげた山本七平『日本人とユダヤ人』以来の*怪挙*と言えるんじゃ
ないでしょうか。(内容のデタラメさ加減からボロが出てしまうところ
なども似てますね。)加瀬氏側から説得力のある反論が出されているな
ら見てみたいところですが、私が知る限りそういうものはないようです。
蛇足:
私は宝島30は見てないんですが、これに載った記事としては、
黄民基「『醜い韓国人』を書いた醜い日本人」(『宝島30』1993年9月号)
申東薫「追撃!『醜い韓国人』を書いた醜い日本人」(同10月号)
があるそうです。
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Subject: Re: Let Gov'nt Accept UN Recomm. on "Juugun Ianfu"
Date: 17 Jun 1996 10:07:30 GMT
高橋(亨)です。
In article <...> S.H writes:
>In article <96Jun4...> (Toru Takahashi) writes:
>>>前記の雑誌記事が正しいとすると、加瀬氏は張氏から提供された資料や
>>>原稿を素材として、あたかも韓国人の著者自身が日本による朝鮮植民地
>>>支配を高く評価しているかのような著書をでっちあげたということにな
>>>ります。
>
>「正しいとすると」という具合に僕は仮定はしません:-)韓国人のフリをした
>日本人(加瀬氏)が書いたと思っています。
前回は加瀬氏を批判する側からの資料しか読んでなかったので、一応こ
の点は保留しました。で、その後加瀬氏側の弁明が載っている資料[1]
も見つかったんですが、それによると:
(1)「カタカナ表記は、筆者とファクスでやりとりした部分が多くて、
字がつぶれ間違ったところがあるのは事実だ。しかし、筆者は間違いな
く韓国人。迫害される可能性があるので、表に出すことは出来ない」
(光文社「カッパ・ビジネス」の藤本恭・編集長代理)
(2)「筆者の日本語があまり上手ではなかったので、私とリライターで
原稿をリライトした。その時に私の本から引用した部分があり、似た内
容となったところもあるが、間違いなく韓国人が書いたものだ」(加瀬
英明氏)
ということだそうです。
しかし、「丁卯胡乱(チョンミョホラン)」が「チョユホナン」という
ように字数が変わってしまったり、「尊待語」が「尊大語」になっちゃっ
たりするような低品質のファックスで校正ができるとはとても思えない
し、資料提供者の張氏が何らかの迫害を受けたという話も聞かないので、
藤本氏の説明は説得力がないですね。加瀬氏の弁明の方も、日本語のて
におはを直すためと言いつつ自分の書いた文章の挿入(二十数箇所ある)
を認めちゃってるんだから何をかいわんやですね。普通はそうやって勝
手に原稿を書き変えることを*改竄*って言うんじゃないでしょうか。
というわけで、私もこれは(張氏の書いた元原稿があったとしても)基
本的には日本人が韓国人のふりをして書いたクズ本である、と思います。
>こんなデタラメ本を読んで、韓国人がこういってるみたいな、わかった気になっ
>て、それで発言を繰り返すわけですから、加瀬氏の出発点から、どんどん雪ダ
>ルマ的にデタラメが膨らんでいくんですよねー。これってすっごい怖いことで
>すよね。
そうですね。日本がかつて朝鮮半島でやったこととか、戦後もロクな謝
罪・補償をやってないことなどから考えれば韓国人が「反日感情」をも
つのはやむを得ないこと(むしろ当然と言うべきか?)として理解でき
るんですが、日本側の「嫌韓」となると大体こういうクズ本のデタラメ
から出発して、加害を被害にすり替えた妄想ですからねぇ。これは怖い
し、醜いし、恥ずかしいことです。
『醜い韓国人』に反論した『醜い韓国人が醜い日本人に答える』(三一
書房)を書いた金容雲氏は、まだ著者論争の決着がついていない段階で、
「これは韓国のことわざで『竹やぶで将棋をする』ということになりか
ねない。つまり事実が分からないまま、王手、王手と大きな声で言って
いた人がいつのまにか勝ったことになっているという意味で、『嫌韓』
対『反日』の不毛の戦いとなる危険な兆候だ。『醜い日本人』は一方的
な日本人批判にならないように建設的な方向を示したい」[1] と述べて
います。これはやはり向うの方が理性的と認めざるを得ませんね。
[1] 朝日新聞1994年8月5日朝刊『「醜い韓国人」筆者名乗り出て 抗議
のグループが来日』