SAO:デスゲームで少年はどう生きる――― (犠牲者)
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リアルが忙しいのですいません。



第十二話:ムリゲー降臨(ただし相手が)

無事、『プネウマの花』を手に入れ、後は帰るだけ。幸い、帰り道はシリカも相当レベルが上がっているためモンスターのエンカウントにはそれほど苦戦しないだろう。あとは街道を一時間歩くだけ、それでまたピナに会える――。弾む胸を抑えながら、来た道を戻ろうとしたとき。
不意に後ろからレンの手が肩にかけられた。きょとんとして立ち止まる。振り返ると、レンは厳しい顔で洞窟の向こう、暗い道の出口に繁る穴を睨み据えていた。その口が開く。



Side:レン


「そこに居る人……そろそろ出てきたら?」


その言葉にシリカは慌てて出口に目を凝らした。だが人影は見えない。緊迫した数秒が過ぎたあと、不意にカツンと足音が聞こえた。そして、プレイヤーを示すカーソルが表示される。色はグリーン、犯罪者ではない。
が、その穴の向こうに現れた人物は、シリカの知っている顔だった。
炎のように赤い髪、同じく赤い唇、エナメル状に輝く黒いレザーアーマーを装備し、片手には細身の十字槍を携えている。


「ろ……ロザリアさん……!? なんでこんなところに……!?」


 驚愕するシリカの問いには答えず、ロザリアは唇の片側を吊り上げて笑うと言った。


「アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、小さな剣士サン。侮ってたかしら?」


そこでようやくシリカに視線を移す。


「その様子だと、首尾よく『プネウマの花』をゲットできたみたいね。おめでと、シリカちゃん」


ロザリアの真意がつかめず、シリカは数歩あとずさった。見る限りなんとなくだが嫌な気配を感じているようだ。すると、その直感を裏切らないロザリアの言葉が驚くべきことを言い放った。


「じゃ、さっそくその花を渡してちょうだい」
「……!? な……何を言ってるの……」


シリカは訳が分からないといった感じになっているが。僕はまあ、そうくるだろう。とは思っていたので別段驚きはない。
そして、ここまで無言だった僕は前に進み出て、口を開いた。


「流石にそうは行きませんよ、ロザリアさん。いやこういったほうがいいかな?――――犯罪者(オレンジ)ギルド『タイタンズハンド』のリーダーさん」


ロザリアの眉がぴくりと跳ね上がり、唇から笑いが消えた。チラリと横を見てみるとシリカは何度目かの驚愕に捕らわれ、呆然と僕の方を見ている。


「え……でも……だって……ロザリアさんは、グリーン……」
「オレンジといっても、何も全員が犯罪者カラーとは限らない。タネは単純、グリーンのメンバーが街で獲物をみつくろい、パーティーに紛れ込んで、待ち伏せポイントに誘導する。昨日の夜、僕たちの話を盗聴してたのも彼女の仲間だよ」
「そ……そんな……」


 シリカは愕然としながらロザリアの顔を見やる。


「じゃ……じゃあ、この二週間、一緒のパーティーにいたのは……」


 ロザリアは再び毒々しい笑みを浮べ、言った。


「そうよォ。冒険でたっぷりオカネが貯まって、おいしくなるのを待ってたの。本当ならあのパーティーは今日ヤッちゃう予定だったんだけどー」


 シリカの顔を見つめながら、ちろりと舌で唇を舐める。


「一番楽しみな獲物だったあんたが抜けちゃうから、どうしようかと思ってたら、なんかレアアイテム取りに行くって言うじゃない。その『プネウマの花』、今が旬のレアだから、とってもいい相場なのよね。やっぱり情報収集は大事よねえー」


 そこで言葉を切り、僕に視線を向けて肩をすくめた。


「でもそこの小さな剣士サン、そこまでわかってながらノコノコその子に付き合うなんて、バカァ? それとも本当に体でたらしこまれちゃったの?」


ロザリアの下衆な侮辱に、シリカは視界が赤くなるほどの憤りを覚えた。剣を抜こうと腕を動かしかけたところで、僕はシリカの肩をぐっと掴んだ。


「残念ながら、どちらでもないんですよ」


別に怒るわけでもなく、物静かに言う


「僕も貴方を探してたのさ、ロザリアさん」
「――どういうことかしら?」
「貴方、十日程前に、38層で『シルバーフラグス』っていうギルドを襲いましたよね。メンバー七人が皆殺しにされて、リーダーだけが脱出した。――――結構話題になったんですよ?」
「……ああ、あの貧乏な連中ね」


 興味のなさそうな顔でロザリアが頷く。


「リーダーだった男は……毎日朝から晩まで、ゲート広場で泣きながら仇討ちをしてくれる奴を探してたんですよ。」


僕の声は、あくまでも静かだ。


「でもその男のひとはね……依頼を引き受けた僕達に向かって、貴方達を殺してくれとまでは言わなかったんですよ。黒鉄宮の牢獄に入れてくれと、ただそれだけを言ったんですよ。――貴方に、あの人の気持ちがわかります? ――こんな小さな子供にすら泣いて縋ったあの人の気持ちがわかりますか?」
「わかんないわよ」


面倒そうにロザリアは答えた。


「何よ、マジになっちゃって、馬鹿みたい。ここで人を殺したって、ホントにその人が死ぬかどうかわかんないじゃない。そんなんで、現実に戻った時罪になるわけがないわよ。だいたい戻れるかどうかもわかんないのにさ、正義とか法律とか、笑っちゃうわよね。アタシそういう奴が一番嫌い。この世界に妙な理屈持ち込む奴がね」


ロザリアの目が凶暴そうな光を帯びる。


「で、キミはその死にぞこないの言う事真に受けて、アタシらを探してたわけだ。ヒマな子だねー。大体さぁ、一人でどうにかなるとでも思ってんの……?」


 不意に口をつぐみ、やや不安そうにきょろきょろとあたりを見回した。


「そういえばさっき、僕『達』て、言ったわよね?まさか、アンタも仲間を隠して……」
「いいや、僕とこの子だけですよ。だから安心して、そこに隠してる手下を出したらどうですか?」


第一仲間がいるならさっきの戦闘に参加させているし………
僕が否定の言葉を言ったことに再びニヤリと笑うと、ロザリアは片手を上げた。


「じゃ、お言葉にあまえてそうさせてもらうわね」


すると、出入り口の穴から、次々と人影を吐き出した。シリカの視界に連続していくつものカーソルが表示される。ほとんどが禍々しいオレンジ色だ。その数、十。一つだけロザリア以外にグリーンのカーソルがある。針山のように尖った髪型は、間違いなく昨夜宿屋の廊下を逃げていった男のものだ。
新たに出現した十人の盗賊は、皆派手な格好をした男性プレイヤーだった。現実世界名でいうならチンピラみたいなやつらが好んでつけそうな装備だ。男たちはにやにやと笑いを浮かべながら、シリカの体に粘つくような視線を投げかけてきた。僕に対してもなめ腐りきった視線を送っている。
激しい嫌悪を感じて、シリカは僕のフートの陰に姿を隠した。僕も素だったらプラスあんな視線を受けてたんだろうなぁ~
するとシリカが小声で囁きかけてきた。


「れ、レンさん……人数が多すぎます、脱出しないと……!」
「だいじょうぶだよ。僕が逃げろ、と言うまでは、結晶を用意してそこで見てればいい」


Side:三人称


穏やかな声で答え、レンはシリカの肩にぽん、と手を置き、そしてそのまますたすたと彼らの前に向かって歩き出した。シリカは呆然と立ち尽くす。いくらなんでも無茶だ、そう思ったのか、再び大声で呼びかけた。


「レンさん……!」


シリカはクリスタルを握り締め、必死に叫んだ。気絶していたからレンの実力を見ておらず、あの花?を倒したとはいえ、いくらレンが強くてもあの人数相手に勝ち目はないと思えた。だがレンは動かない。
そのレンの様子を諦めと取ったか、ロザリアともう一人のグリーンを除く九人の男たちは武器を構えると、猛り立ったような笑みを浮かべ我先にと走り出した。そう長くない距離をドカドカと駆け抜け――


「ウオラァァァ!!」
「死ねやァァァ!!」


うつむいて立ち尽くすレンを取り囲むと、剣や槍の切っ先を容赦なく次々にレンの体へと叩き込んだ。同時に九発もの斬撃を受け、レンの体がぐらぐらと揺れた。


「いやあああああああ!!」


シリカは両手で顔を覆いながら絶叫した。
だが男たちは無論耳を貸すわけもなく。


「ゲハハハハハ!!」
「オラァ!! クソがぁ!!」


暴力に酔ったように、ある者は哄笑しながら、ある者は罵り声を上げながら、手を休めることなくレンに向かって武器を、攻撃を叩き込み続ける。その後ろほどに立ったロザリアも、顔に抑えきれない興奮の色を浮かべ、右手の指を舐めながら食い入るようにその惨劇を見つめている。
シリカはぐいと涙をぬぐい、短剣の柄を握った。自分が飛び込んでも何の助けにもならないとわかってはいたが、これ以上見ていることはできなかった。レンに駆け寄ろうと、一歩踏み出したところで――シリカはあることに気付き、動きを止めた。
レンのHPバーが減っていない。
いや、正確には、絶え間ない攻撃を受けることでほんの数ドットずつわずかに減少するのだが、その攻撃スピードに負けないくらいすぐに回復してしまうのである。そのせいか、レンのHPバーがバグを起こしたんじゃないかというくらいに左右を行き来している。
やがて、男たちも目の前のフードの剣士が一向に倒れる様子が無い事に気付き、戸惑いの表情を浮かべた。


「あんたら何やってんだ!! さっさと殺しな!!」


苛立ちを含んだロザリアの命令に、再び数秒間にわたって無数の斬撃がレンに襲い掛かるがやはり状況は変わらない。


「お……おい、どうなってんだよこのガキ……」


一人が、まるで異常なもの………化け物を見るように顔を歪めながら、腕を止めて数歩後ずさった。それが呼び水になったように、残りの八人も攻撃を中止し、距離を取る。
静寂が周囲を覆った。その中、ゆっくりとレンが顔を上げた。静かな声が流れた。


「――十秒あたり300~350、ってとこかな。それが、貴方達九人が僕に与えるダメージの総量だね。現時点での僕のレベルは85、ヒットポイントは16700……さらに戦闘時回復スキル【バトルヒーリング】による自動ヒールが十秒で600ポイント、常時回復スキル【リジェネレート】による自動回復が1F毎に2……分かりにくいだろうからもっと噛み砕いて言うね………一秒は60F……つまり1秒で120……10秒で1200………つまり実質1800回復する。その程度の攻撃じゃあ、何時間攻撃しても僕は永遠に倒せないよ」


レンは残酷なまでの現実を目の前のプレイヤーに突き付けた。
男たちは愕然としたように口を開け、立ち尽くした。やがて、サブリーダーらしき両手剣士がかすれた声で言った。


「そんなの……そんなのアリかよ……。ムチャクチャじゃねえかよ……」
「そうだよ」


レンは当然のように言った。


「たかが数字が増えるだけで、ここまで馬鹿げた差がつくんだよ………言ってしまえばそれがレベル制MMOの最大の理不尽さというものなんだよ。当たり前ですよこんなこと」


最もレンの場合、はある程度それを融和する手段を持ち合わせているが………


「チッ」


 不意にロザリアが舌打ちすると、腰から転移結晶を掴み出した。宙に掲げ、口を開く。


「転移!」


だがいくら叫んでも結晶はうんともすんとも言わない。


「どうして!?」
「無駄だよ………マップを見てごらん」
「?」


言われるままに、シリカを含め全員がマップを見る。マップは常に自身の居場所を示してくれる。


「これは!?………いったいどういうことなんだ!?」


見るとダンジョンの名前は書いてあるがマップの現在位置は【unknown】つまり不明となっており、現在位置を特定できない。


「ここは隠しエリア【黄泉の陵墓】……………そして隠しエリアの共通する特徴として一つは『ある一定の条件を満たしたプレイヤーしか転移結晶を使えない』二つ目、『マッピングができない』…………というより、此処に来たのならマッピングできない時点で気付くはずだと思うんだけど?無料配布されるガイドブックにも隠しエリアについては載っているんだし……」


その言葉にロザリアは苦虫を噛みつぶしたような苦い表情をしており――――
シリカは彼が何故今までマップを出さなかったのかその意味を知った……………出したところで意味がないのだ。表示されないから。なら出そうが出さまいがどうでもいいことだ。
そしてレンは一際大きい転移結晶を発動させ、この最深部唯一の出入り口をふさいだ。


「それは、僕達に依頼した男が全財産をはたいて買った回廊結晶だ(キリトにトレードしてもらった)。黒鉄宮の監獄エリアが出口に設定してある。貴方達全員これでジェイルに跳んでもらう。あとは『軍』の人たちが面倒見てくれるさ」


 地面に座り込んだまま唇を噛んだロザリアは、数秒押し黙ったあと、赤い唇に強気な笑いを浮かべ、言った。


「――もし、嫌だと言ったら?」


レンは別にどうもしないといった感じに言い放った。


「別にそれでもいいけど――――――死ぬよ?そろそろ時間だろうし……」










―――――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――










レンが言った言葉と共にいきなり大きい地響きが鳴り響いた。


「な、なんだ!?何が起こってやがる!?」
「貴方達が僕に無駄な攻撃をしてくれたおかげで此処の(ボス)再出現(リポップ)し始めたんだよ。残り五分くらいかな。行くなら急いだ方がいいよ。再出現が完了したら強制的にゲートが閉じられるから」


が、盗賊の一人が強がりを言った。


「ハ!そんなの倒しちまえば――――」


だがレンは淡々と現実を突きつけていく


「言っておくけどこの隠しエリアにいる裏ボス、イソ………デッド・リリーカーネーションのレベルは105………そしてその攻撃は僕でさえ最初の攻撃でHPを4000持って行かれている。貴方達の防具がどれほどのものかは知らないけど、耐えられるの?」
「!?」


それは、死の宣告にすら等しかった。レベルが二倍近くあり、あれだけの回復スキルを持つレンですら。一撃で25%のダメージを負っているのだ。こんなところで弱い者いじめをして悦に浸っているような輩が勝てるわけがない。一発でも食らってどれだけのダメージを負うかわかったものじゃない。


「ああ、でも勘違いしないでね?僕は監獄エリアへのゲートを開いただけ。もしも君たちが本気でその気なら、入る意思は君たちに任せるよ………『ここで死んだところで本当に死ぬとは限らない』それが君たちの考え………でしょ?」
「ク!!………騙してこんなところにおびき寄せやがって………ここが隠しエリアだとわかっていたら………」


オレンジの一人が苦し紛れの罵倒を言った。しかし、それすらもレンはどこ吹く風だ。


「騙してはいないけど……もしそう思っているなら、君たちの流儀………お決まりの常套手段で返そうか……『騙される方が悪いんだよ』」
「!?」
「どう?今の気持ちは…………それが…お前たちが今まで他人に与えてきた絶望だよ。」
「チ!?なんでこんなガキがこんなに…………まさか!?」
「?」
「聞いたことがある……確か最前線の攻略組の中にたった一人……ガキがいるって噂……まさかテメェが……」
「………そうだよ。君たちの推察通り、僕は攻略組に属するソロプレイヤーだ」
「!?」







Side:シリカ



レンさんが攻略組?



確かにその噂は聞いたことがある。いや、おそらく私くらいの年齢のプレイヤーでその噂を知らない者はいないだろう。
だって私はそのうわさがきっかけでここまで来られた…………いやもっと言うならその噂のおかげでピナに出会えたのだから。
デスゲームの初日………正確にはあのチュートリアルの後、私は怖くなって始まりの街から出られなくなった。最初は自殺も考えた。そうすればもしかしたらあのいつも通りの日常に帰れると思ったから。しかしやっぱり本当に死んだらと思うと怖くて部屋に閉じこもっていた。偶に、外の情報……新聞を見たが2000人が死んだといった情報しかなく、助けが来ることもなくただただ怯えていた。
でも、そんなときにいつも通り何かないかと思い新聞を見るとある記事が書いてあった。『攻略組の最前線で活動し続ける子供プレイヤー』
最初は何かの間違いだと思った。だって、私たちのような子供プレイヤーの殆どはこの始まりの街に籠っているのだから。しかし軍の人間の話を聞くに本当だと思った。
すごいと思った。だってその子はこんな理不尽な状況にもかかわらず、恐怖に打ち勝ち最前線の攻略組………私達から見れば攻略組は伝説的な存在だ。なぜなら、彼らの力はSAO攻略にのみ注がれ、中層フロアに降りてくることすら滅多にないと聞いていたから。
それから私はある日初めて外に出始め、気まぐれで降り立った層の気まぐれで立ち寄った森の中で、初めて遭遇したモンスターが攻撃せずに近寄ってきて、前日に気まぐれで買った袋入りのナッツを上げたところそれがたまたまそのモンスターの好物だったというわけだ。馬鹿馬鹿しいと思えるがこれが私とピナの出会いでもあった。
不安と寂しさに押しつぶされそうになっていた私にとってその子が間接的に勇気を与えてくれ、そしてそれがきっかけでピナというパートナーを得て、ようやく私の冒険は始まったのだから。最もその子はそんなふうには思ってもいなかっただろうけど………はっきり言ってその子が与えた勇気は私だけじゃなく私と同じくらいの子供プレイヤーにも影響を与え、私が層を出始めたときにはすでに5、6人すでに子供プレイヤーが外に出たのだから。最も私を含め攻略組にまで上り詰めた子は一人もいなかったけど。
そして今、このアインクラッドにおいて全子供プレイヤーにおいてまさしく英雄的な存在が今目の前にいる。その子が出す雰囲気に若干の戸惑いも出たが昨日の彼の優しさと興奮でそんなものは瞬時に吹き飛んでいた。私はただただ目の前の状況と彼の背中を見ていた。その小さくも大きく見える背中を………



Side out



地鳴りが響く中、レンは再び声を上げた。


「さあ、どうする?もう一分ぐらいしかないけどこのままいけば文字通りここが君たちの墓場になるけど」


そう言ううちにあのボスの身体はもう8割がた再出現していた。ウネウネと動くそのおぞましい姿に一人のプレイヤーがついに根を上げた。


「い、嫌だ!俺はまだ死にたくねぇ!!!」


そう言って武器を放りすてて、監獄エリアへと続くゲートに飛び込んだ。もうここまでくるとレンに罵倒や憎悪の視線を向けてくるオレンジプレイヤーはいなかった。そこにあるのは恐怖と救いを求めるものが見せる懇願の視線だけだった。


「お、俺もこんなところで死にたくなんかねぇ!!!」
「お、俺も………」
「シニタクナーイ」
(……なんかひとり偽物がいたような…………ま、いいか)





その後、それを皮切りに残りのオレンジプレイヤー達も、死の恐怖に駆られ必死の形相で光の中に消えていった。盗聴役のグリーンプレイヤーもそれに続き、ロザリア一人が残るだけとなった。が、それも後ろにいるボスモンスターの細い触手部分が見え始めるとついに恐怖に押しつぶされ中に入って行った。


「……ごめんね、シリカ。君を囮にするようなことになっちゃって。僕のこと、どこかで言おうと――思ったんだけど、言えなかった」


シリカは、必死に首を振ることしかできなかった。心の中にたくさんの気持ちがぐるぐると渦巻いている。
が、ある重大なことを思い出しレンに言った。


「そ、それよりこのままじゃまたボスと――――」
「ああ、それなら大丈夫……ほら」
「え!?」


見るとボスは完全に再出現していたが、一向に襲い掛かってくる気配はない。というより最初から自分たちが見えていないようにも見える。相変わらずうねうねと動いているが


「隠しエリアのボスは一度倒すと倒したプレイヤーのパーティーは襲わないんだよ。だから、再出現しても戦うのは彼らだけだったんだよ。といっても僕がアレを攻撃しても意味無いんだけどね……隠しエリアのボスは一回倒すともうそのボスとは戦えないからね。」
「そうだったんですか……」
「街まで、送るよ――――ほら」

そう言ってレンは手を差し伸べたシリカもそれに答えギュッ!と握りこの隠しエリアを後にした。



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