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【県人口試算】推移見据え定住促進を(9月4日)

 県が公表した人口・経済試算は衝撃的な内容だ。住民流出が長期化すれば、平成52年に最悪で約122万5000人となる。人口は将来の県土づくりや地域の在り方を左右する。過度な楽観や悲観は禁物だ。推移を毎年把握し、定住促進に向けた施策を展開していく必要がある。
 人口は52年、経済は32年をめどとする。県総合計画の見直しを進める上での基礎資料だ。東日本大震災からの復興と東京電力福島第一原発事故収束の先行きが不透明なことから、正確な推計は困難と判断した。最良と最悪の2つのシナリオを示し、この間で推移するとした。
 人口について、「最良」は流出が抑制されて県外避難者は全員戻る。「最悪」は流出が長期間続いて県外避難者は皆県外に定住する-と想定した。23年の約199万人と比較すると、最良は約43万人減の約155万8000人となる。最悪は76万人以上減る。現計画の想定と比べて、最良は減り具合が緩やかになり、最悪は減少数が25万人以上多くなる。
 今後の推移は除染など生活環境の改善や避難区域再編に懸かる。除染が進まず、減少の止まらない地域と、「仮の町」構想の具体化などで増加する地域に分かれる可能性がある。放射能の影響を心配して県外に避難した親子が戻らなければ、将来にわたって自然増は望めない。急速な少子高齢化が懸念される。
 人口減は経済にも影響を与える。県は(1)経済成長は22年度と比べて約4000億円増加する(2)産業振興策の効果が期待できない-の二案を示した。万1、経済状況が悪化すれば家計を圧迫する。雇用の機会が失われる恐れもある。消費の縮小は農林水産業、商業活動にも打撃を与えよう。税収が減り、自治体の住民サービスにも支障を生じる。
 悲嘆しても事態は好転しない。現実を直視し、人口減を食い止める手だてを冷静に講じていかなければならない。厳しい数字であっても、県は情報を迅速、正確に公表し、県内外の理解と協力を求めるべきだ。
 県民が自らの課題として捉え、発言できる「場」を常設してはどうか。県は現在、資料を県総合計画審議会で提示し、審議内容とともにホームページなどで公
開している。人口は個人の考え、家族の姿など微妙な問題をはらむ。行政主体の議論だけで解決の道筋を見いだすのは限界があるのではないか。関係機関や多くの県民が考察する場を設け、アイデアを議論する機会を増やしたい。(鞍田 炎)

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