| Home > トピックス > 放射線被曝とがんとの関連性 > 3 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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●チェルノブイリ原発事故と小児の甲状腺がん 1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故後はチェルノブイリ地方で小児、特に女児に多くの甲状腺がんが見られたことが報告されています。図3はチェルノブイリ原発事故後の人口100万人当たりの甲状腺がんの発生件数を示しています。一般に小児の甲状腺がんの発生は100万人当たり1〜3人といわれていますが、原発事故の2〜3年後から急な増加が見られます。そして、被爆時の年齢によってそのピークが異なることがわかります。0〜10歳までの乳幼児・小児は被曝7年後にピークがあり、以後漸減して、1997年以降はベースライン、すなわち通常の発生率に戻っています。10〜19歳の思春期では被曝10年後にピークが見られ、2002年以後は急激に増加しますが、ベースラインには戻っていません。
表1は長崎大学のグループが高濃度汚染地域の小児の甲状腺がんを数回にわたり現地調査した結果です。調査は3つのグループに分けて行われました。すなわち、グループIは原発事故後に妊娠・出産、グループIIは事故時に妊娠中、グループIIIは事故時すでに小児であったグループです。結果を見ると、事故時すでに小児であったグループIIIに甲状腺がんの発生率が高く、男児で4,810人中7人(約0.15%)、女児は4,910人中24人(約0.5%)と、女児に多いことがわかります。一方、事故時に妊娠中、事故後に妊娠したグループでは甲状腺がんの発生はほとんどみられていません。
また、今年(2011年)になって新たな調査結果が発表されました。原発事故の2〜3週間後に高濃度汚染地域に住んでいた小児32,385人の甲状腺のヨウ素-131(131I)摂取率を検査し、1998〜2000年の間に追跡しえた13,243人中45人に甲状腺がんが見つかったというのです。さらに2001〜2007年の間に追跡しえた12,514人には触診と超音波検査を実施し、触診で10mm以上の結節、超音波検査で5mm以上の腫瘤が認められた中から65人に甲状腺がんが発見され手術を行いました。病理組織学的は乳頭状がん61人、小胞性がん3人、髄質性がん1人でした。乳頭状がんは甲状腺がんの中でも比較的悪性度の低い“がん”です。
また、内部被曝を防ぐには体内に取り込まれる放射性物質の量を早期に規制する必要があります。ヨウ素-131(131I)に関していえば、チェルノブイリ原発事故の際は汚染された食品の摂取規制開始が1〜2週間後、福島の原発事故では1〜5日後に始まっています。放射性ヨウ素の量もチェルノブイリでは牛乳で3,700ベクレル(Bq/L)に対して、福島では300Bq/L以下、粉ミルクは100Bq/L以下に規制されています(表2)。もしこの規制値が日本で確実に守られていたのであれば、福島の原発事故による甲状腺がん発生の確率は、チェルノブイリの原発事故に比べてより低いかもしれません。
さらにチェルノブイリ原発事故から10年後の2005年の時点での小児の甲状腺がんの死亡率を見ると、被爆時14歳以下の小児甲状腺がん5,127人のうちの死亡者は9人、被爆時18歳以下の6,848人のうちの死亡者は15人です。実に死亡率は0.2%で、99.8%が生存しています。このように、小児の甲状腺がんはがんの中でも非常に治癒しやすい病気といえます。 |
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