旭天鵬(左)が寄り切りで隠岐の海を破る=両国国技館で
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◇秋場所<6日目>
(14日・両国国技館)
勝ちっ放しは5人だが、平幕では高安と東11枚目の旭天鵬(38)=友綱。夏場所で平幕優勝しながら、名古屋場所では初日から13連敗した“エレベーター力士”が、2度目の平幕優勝に虎視たんたん。綱とりに挑む大関日馬富士(28)=伊勢ケ浜=が豊真将をはたき込み、横綱白鵬は臥牙丸をすくい投げで難なく転がし、大関稀勢の里も豊ノ島を冷静に押し出して初日から6連勝とした。大関琴欧洲が右肩を痛めて休場した。
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「なぁいっちゅうねん!」。旭天鵬は笑顔を振りまき先手を取って否定したが、琴錦以来、史上2人目となる2度目の平幕Vへ。ファンは「あるぞ!」と期待する。
全勝同士の対戦となった11歳年下の隠岐の海を寄り切って6連勝。土俵際で右からグイッと振ってからの逆転勝ちに「たまたま、ギリギリのとこ」と謙そんするが、38歳とはこれっぽっちも感じさせない動きを披露した。
流れは史上最年長での初優勝を飾った夏場所と似てきている。「夏場所も最初の1週間は記録を見てきた。今場所も記録に挑むのが目標。その他は考えてない」。夏場所は貴乃花親方(元横綱貴乃花)の通算794勝に挑み、今場所は外国出身力士最多となる高見山の史上8位タイとなる通算812勝に目標を定め、あと2勝まで迫っている。戦後2人しかいない、38歳を超えての三役復帰も目標の1つ。
優勝しても燃え尽きることがないのは、そんなモチベーションがあるからだが、夏場所の優勝は旭天鵬を38歳にして成長させてくれた。
「優勝したお相撲さんが変化して勝つと、自分もすっきりしない。優勝する前はポンッとやってもと思ってたが、今は考えてない」。優勝翌場所の名古屋場所は14日目にやっとの思いで初白星を挙げた。「13連敗は地獄ですよ。(休場せず)最後まで出ることで精神的に鍛えられた」。どんなに負けが込んでも、常に手本となるような正攻法を心掛けていく。
誕生日の5日目夜は家族と付け人で焼き肉を食べに出かけ、長女の柚希ちゃん(3)がケーキを作ってくれた。「娘が先にフーッてやった」とロウソクの炎を消されてしまい「ほんとはオレじゃん」と笑わせたが、子どもの成長も楽しみ。
柚希ちゃんの誕生日は11日目の19日。そこまで負けられない? 「長いわ!」。そんなこと言わず、目標の1つに加えてみては。 (岸本隆)
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