安保闘争の時代の話って全然知らないので、産經新聞の書籍を手に取ってみました。読書メモをご共有。
全共闘世代の生の声
・学生運動が最も高揚したとされる68年から40年余り。当時20歳だった学生たちは、還暦を過ぎ始めている。彼らはひところ大量退職などで話題になった「団塊の世代」ではあるが、イコールではない。当時の大学進学率はわずか15%。「革命」を叫んだ若者たちは紛れもなく我が国のエリート層でもあった。
・「しょせん、コップの中のプチブル(小金持ち)学生の氾濫だった。一時的に盛り上がった局面はあったが、学生は根を張っていなかった。その点、商売はすべて実証主義。お客さんがついてくるかどうかという価値しかない。甘ったれた理論で社会が動いているわけではないと、この仕事を通じて痛感しました」
・「結局、私も含めた全共闘世代は理屈をこね回していただけで、上の世代の敷いたレールを忠実に歩いていてきたにすぎなかった。政治も経済も行き詰まる中で、アラタナ日本型システムを提示することもできなかった」
・「彼らは団塊の世代といわれるが、僕は風が吹けばすぐ形が変わる”砂山世代”だと思っている。革命を叫んでおきながら、エコノミックアニマルになったり、市民運動かになったり。雰囲気にあわせて姿形を変える世代だと思う。つまり典型的な『マス(大衆)』なんですよ。」
・「小泉純一郎さんの郵政選挙ですよ。郵政民営化とか規制緩和とか、シンボリックな旗を立てて、賛成しないものは排除する。そのやり方に国民が酔いしれて、ああいう結果になった。われわれなり、全共闘なりがやりたかったのは、あれに近いものだったのではないか。学生運動はその方法論をわかっていてできなかった。そして初老に近づいてから、まんまと自民党の小泉革命に一票を投じてしまった。」
・「先進国でこんなにビラがまきにくく、こんなに文句が言いにくい国もないでしょう。年金問題が起きても、大きなデモも起きない。信じられますか。あれだけ学生たちが立ち上がった時代があったのに、なぜこんな社会になったのか。」
・「当時は『学生がまず先頭に立ち、労働者を引っ張っていく』と言っていたが、今から思えば、おこがましい考えだった。労働の意味すら分からない連中から『立ち上がれ』といわれても、働いている人が聞いたら勝手な言い草に聞こえただろう」
などなど、全共闘世代を生きた人を中心に、様々な当事者の声が収録されている一冊です。
僕が卒業した早稲田にも、細々と全共闘の名残のような方々が活動していましたが、大方冷めた目で見られていた印象が残っています。彼らが共感しうる主張をしていなかったということも、「早大生」というコミュニティ意識が希薄になっていた、ということもあるのでしょう。
もう少しポジティブに見れば、今の若い世代は単純な「反体制」というよりは、体制を超えたところにある課題の解決に取り組み始めているように感じます。例えばうつ病の問題、自殺の問題など、これらは反体制という暴力ではなく、もっと温和で優しい活動を通して解決されうるものでしょう。
当時の雰囲気を知るには良い一冊です。巻末には膨大な関連本のリストも掲載されているので、全共闘運動に関する研究を始める方には役立ちそうです。