音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
熊使い
 昨晩、関口義人さんの「ジプシー・ミュージックの真実」発刊記念のイベントに出かけた。(※氏はロマという表現を使わず、ジプシーと著作の中でも表記されていますが、差別的な意味あいは全く無く、きちんとした理由があってそのように表記されているとのこと。)そこでは、興味深いロマの人々の生活ぶりに関しての解説や音楽、さらには取材先で収められた貴重な写真や映像の数々が惜しみなく紹介され、著作の延長線で少しお話が聞ければ、くらいに思って出かけた私は正直とても驚いてしまった。

 その中でも、ウルサリと呼ばれる熊使いの方に出くわした時の写真には、本当に驚いてしまった。何しろ立ち上がった熊は、背丈2メートル30センチというから、ちょっとしたマンションの天井の高さくらいあって、その大熊と鎖でつながった老いた熊使いが並んで立っている様は、ただそれだけで圧倒されてしまう。私は最初、背の高い人間の男性が着ぐるみをきているのではと勘違いしたが、それは、本物の熊をまるで猿回しのようにして芸をさせるということ自体、想像もできなかったからである。熊は後ろ足がしっかりとしていて、容易に立っていられる、という話は耳にしたことがあるにせよ、ぬうと立ったその大きな熊はそれだけですごかった。それも実物を見たのではない、写真をみただけの話である。

 熊使いの男性は何やら楽器を持っていて、熊を引き連れながら音楽も演奏するようだ。先日紹介したプレイリストの2曲目、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの「ウルサリのホラ」という曲が、熊使いの歌だということである。ただ残念なことに、そうした熊使いのファミリー(ロマの人々は代々世襲で職業を引き継いでいくため、ファミリー単位でカウントされるようである)も7つとか8つとか数少ないものになっているそうだ。町中で熊を引き連れて芸をさせることが安全性に問題ありとする今時の規制も大きなハードルになっているのではとのことだったが、おそらく今からヨーロッパに出かけても、そうした熊使いに遭遇する事はおそらく相当困難なことなのだろう。

 ロマの人々のそうした文化や音楽については氏の作品をご覧いただくとしても、熊使いがいる!ということがにわかに信じられない方も少なくないだろう。著作権の問題があるかも知れないので、ネットで写真を引っ張ってくるのはどうかと思わないでもないが、絵で見ないと伝わらないことなので、ある画像を引用させていただいた。


 




 私がイベントで見せていただいたような、大きな熊のものは見つける事ができなかったが、この画像よりもはるかに大きな熊が、都会の町中で主人に連れられて芸をしたり、レストランに背をかがめて(笑)入っていったりするというのだから、本当に驚きだ。一度でいいから自分の目でみてみたい。久しぶりに旅欲にかられ、驚きに満ちた夜であった。
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