芭蕉 −広がる世界、深まる心−
2012年9月29日(土)〜11月11日(日) 名古屋市博物館
【暮らし】不登校新聞 部数減で休刊の危機
不登校や引きこもりに関する専門紙「Fonte(フォンテ)」が、部数減で休刊の危機に立たされている。経験者自らが編集に携わり、体験談や識者インタビューなどを掲載。購読している不登校の子を持つ親からは「この新聞が生きる支え。なんとか存続してほしい」と、切実な声が上がっている。 (田辺利奈) 「二学期の行事では、体育祭がつらかったなぁ」「修学旅行の部屋割りもきついよ」。発行元のNPO法人「全国不登校新聞社」が入る東京都北区のビルで開かれた「子ども若者編集部」会議。不登校の経験者自らが、担当面の企画案を練る。十月一日号のテーマは「学校行事の苦痛」。登校のきっかけにと参加を勧められることが多いが、そこにはいろいろな問題があると訴える。メンバー自身の体験談や、親にしてほしい対応もまとめる。 会議は三時間以上に及んだ。「周りは休んでいいよと言いながら、本当に休むと行けって言うんだよね」。当事者の本音が飛び交う。この生の声が、読者の共感を呼ぶ。 同紙発行のきっかけは一九九七年に起きたいじめ自殺事件。自身の長男も不登校だった奥地圭子代表理事(71)らが同社を立ち上げ、九八年に創刊した。当時は約六千部発行していたが、活字離れなども影響して徐々に部数が減り、本年度当初時点で八百二十部と休刊の危機に。しかし、大津のいじめ自殺事件などを契機に、再び同紙への注目が高まっている。休刊回避まで「あと一歩」という。 奥地さんは「子どもの言葉を大人はすぐ『でも』と否定する。しっかり話を聞くことが一番大切」と話す。例年、二学期の始業式ごろに自殺が増えるといわれる。「休むことは自分の身を守ること。当然の権利」と強く訴える。当事者の立場から、学校に行かない道もあるのだと発信し続ける。 新聞は月二回の発行で、郵送で読者に届ける。購読の申し込みは、東京編集局=電03(5963)5526=へ。購読料は送料込みで一カ月八百円。 ◆生きる支え 存続をフォンテの輪は全国に広がっている。名古屋市に住む女性(51)と長男(20)も同紙に助けられている。長男は中学二年で不登校になった。原因はいじめ。使い走りにされたり、体育の時間に失敗を罵倒されたり。長男は、手の甲をカッターナイフで切り、血を流すことで苦しみを周囲に訴えた。 二歳下の弟が重度の自閉症で、両親は世話にかかりきり。女性は「長男の変化やサインに気付けなかった」と悔やむ。学校に事情を話しても、いじめを認めない。逆に「強くならないといけませんよ」と突き放された。結局、学校を休むことに。 二年前、インターネットでフォンテを知って購読を始め、生きる支えになってきたという。購読者のメーリングリストにも登録し、悩みを打ち明け合うことも。長男は現在も外出することが難しいなど、いじめの悪夢に苦しんでいる。だが、周囲の対応が変化したことで、パニック症状は治まったという。女性は「本人の気持ちを第一に、決して焦らせない心構えをフォンテから学ぶことができた」と話している。 PR情報
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