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介護の現場からのリポートです。
高齢化の進行に伴って、介護サービスを受ける人は、今後10年余りで1.5倍に増えると予測され、働き手の確保が大きな課題になっています。
そこで、これまで注目されてこなかった日系フィリピン人に、介護を担ってもらおうという動きが広がっています。
さいたま市にある、高齢者介護施設です。
ここでは、去年から、3人のフィリピン人女性が働いています。
その1人、ノリカ・アンドウさん、18歳。
日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた、日系フィリピン人です。
今、フィリピンから日本の介護施設に働きにくる人が、増えています。
アンドウさんは、
「介護の仕事は好きです。利用者の皆さんは、私のおばあちゃん、おじいちゃんだと思っています」と言います。
介護施設で働く外国人として注目を集めたのは、EPA(経済連携協定)に基づいて来日した、インドネシアやフィリピンの人たちでした。
しかし、この場合、介護福祉士の国家試験に4年以内に合格しなければ、在留資格は更新されず、日本で働き続けることは出来ません。
一方、日本人とフィリピン人の間に生まれた子や、その母親であれば、試験に関係なく在留資格を取って、働くことができるのです。
アンドウさんたちを受け入れた介護施設では、日本人の職員は一年ほどで辞めてしまう人も多く、慢性的な人手不足に陥っていると言います。
介護施設経営 高橋誠一さんは、
「人出が確実に足りないということですね。フィリピンの方に、こちらに来てもらいたいと思っています」と言います。
このところ、介護現場に日系フィリピン人が増えているのは、こうした人たちを紹介する会社が出来たからです。
東京 中央区にあるこの会社では、4年前から、全国の介護施設に230人を紹介しています。
フィリピンには、日本で出稼ぎをしていた女性と日本人男性との間に生まれた子が、数万人に上るといわれています。
さらに、終戦後、フィリピンに残留した日本人の子孫も、大勢います。
この会社では、こうした人たちを対象に、フィリピンの大学で研修を行っています。
3カ月半、介護の技術や日本語を教え、日本の介護施設に紹介しているのです。
人材紹介会社社長 鎌田昭仁さんは、
「明るくて、ホスピタリティにあふれてるということで、非常に好評で、こちらに電話で問い合わせるということも、かなり出てきました」と言います。
アンドウさんが、この介護施設に紹介されて1年。
今では、食事の介助や入浴の付き添いなど、日本人とほぼ同じ仕事を任されています。
アンドウさんの上司 太古裕一さんは、 「あの若さで日本で頑張っていて、私から見ても偉いなと思います」と言います。
アンドウさんが日本で働くことを決めた理由は、フィリピンで暮らす家族を支えるため。
そして、もう一つ、秘めた思いがありました。
かつて日本で出稼ぎをしていた母親と、妹。
父親には、会ったことがありません。
「お父さんに会いたい」。
打ち明けると、母親は連絡先を教えてくれました。
日本で、別の家庭を築いていた父親。
会って、話をすることができました。
アンドウさんは、
「うれしかった。『仕事 頑張って』って言われた」と言います。
アンドウさんは今、日本語の勉強に励んでいます。
お年寄りの気持ちを受け止めて働けるようになりたい、と考えているのです。
様々な思いを抱えて日本へやってくる、日系フィリピン人たち。
介護現場を支える力になろうとしています。
この会社は、4年間で40以上の介護施設に、日系フィリピン人などを紹介してきましたが、仕事を辞めた人はほとんどいない、ということです。