経営危機に直面するシャープとＮＥＣ。両社とも１０００人単位の人員削減に踏み切るなどリストラに必死だ。株価も最安値圏で張り付いている。
だがシャープとＮＥＣとでは、「決定的に違う点がある」――こう指摘する市場関係者が多い。
「ＮＥＣは、シャープのように海外企業が救済することはあり得ない」というのだ。どういうことか。経済ジャーナリストの深川孝行氏が言う。
「ＮＥＣは軍事産業とのつながりが深い。国防に関わる企業ですから、業績が悪化しても、簡単に海外企業に渡せません。国家機密が漏れる懸念があるので、いざとなれば政府が手を差し伸べるでしょう」
ＮＥＣは関連会社に「日本電気（ＮＥＣ）航空宇宙システム」や「ＮＥＣ東芝スペースシステム」など防衛と密接にかかわるビジネスを多く抱える。一方シャープは、液晶関連で技術流出の心配はあっても「国家機密漏洩」とは縁遠い。
株式評論家の倉多慎之助氏も言う。
「確かにＮＥＣは昔から防衛ビジネスを手掛けています。ミサイル関連の通信制御ソフトに強みを持っていたはずです。ただ、ここ数年は三菱電機や三菱重工などに比べ、防衛関連での存在感が薄れています。海外企業との再編は考えにくいですが、国内の電機メーカーとだったらあり得るでしょう。防衛ビジネスだけ切り離して、本体を海外メーカーに引き取ってもらう案も浮上するかもしれません」
とはいえ、シャープのように海外企業が命運を握るとは考えにくい。ＮＥＣは“軍事ビジネス”を強化したほうがよさそうだ。
（日刊ゲンダイ2012年9月11日掲載）