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自民党総裁選がきょう、告示される。5氏が立候補を予定しており、混戦になりそうだ。民主党政権は苦境にあり、遠からず総選挙もある。いま総裁になれば首相に手が届く。そんな思い[記事全文]
この地震列島では、原発からの高レベル放射性廃棄物を地中に廃棄する現行案は、とても安全とは言えない。白紙撤回も覚悟すべきである。多分野の学者の代表による日本学術会議が、こ[記事全文]
自民党総裁選がきょう、告示される。5氏が立候補を予定しており、混戦になりそうだ。
民主党政権は苦境にあり、遠からず総選挙もある。いま総裁になれば首相に手が届く。そんな思いからの乱立だろう。
であればなおさら、総裁選を浮ついた「選挙の顔」選びにしてはならない。
野田政権のどこに問題があり、自分なら日本をどうするのか。聞きたいのは、一国をになう覚悟とビジョンである。
これまでの各立候補予定者の記者会見や公約をみる限り、満足な答えは聞こえてこない。
たとえば、社会保障と税の一体改革だ。
いずれも、民主、自民、公明の3党合意を守ると語っているのはいい。だが、持続可能な年金や高齢者医療制度など、結論の出ていない課題にどんな答えを出すのか。
それをなおざりにして、「国土強靱(きょうじん)化」に名を借りた公共事業拡充に熱を入れている場合ではない。
原発・エネルギー政策もあいまいだ。
5氏は、再生可能エネルギーを広げ、状況を見極めて原発の扱いを判断する、などと言っている。これでは「脱原発」の世論が静まるのを待って、原発の維持をねらっているのかと受け取られても仕方がない。逃げずに明確に考えを示すべきだ。
気がかりなのは、安全保障政策だ。5氏とも集団的自衛権の行使を容認すべきだと主張している。党の方針に沿ったものだが、平和憲法に基づく安保政策の転換につながる問題だ。
領土や歴史問題をめぐって思慮に欠けた発言も目につく。
石破前政調会長や石原幹事長、安倍元首相は、国有化した尖閣諸島に灯台や避難港などの施設を造り、実効支配を強めるという。
安倍氏は、慰安婦問題で「おわびと反省」を表明した河野官房長官談話を見直す考えも示している。
尖閣や竹島問題で、日本と中国、韓国との緊張が高まっている。それをさらにあおって、近隣国との安定した関係をどう築くというのか。
日本の社会と経済の立て直しは容易ではない。だからといって、ナショナリズムに訴えて国民の目をそらしたり、それで民主党との違いを際だたせたりしようというなら願い下げだ。
いま日本の指導者に必要なのは、そんな勇ましいだけの発言ではない。山積する課題に真摯(しんし)に向き合い、粘り強く解決に取り組むことである。
この地震列島では、原発からの高レベル放射性廃棄物を地中に廃棄する現行案は、とても安全とは言えない。白紙撤回も覚悟すべきである。
多分野の学者の代表による日本学術会議が、こんな提言をまとめた。
原発は「トイレなきマンション」とも言われてきた。廃棄物処理の場所が確定しないままの運転を揶揄(やゆ)する言葉だ。
実際、日本の処分場選びは手詰まりの状態になっている。政府は02年から、多額の補助金を用意して自治体が名乗り出るのを待っている。だが、これまでの立候補は1件だけ。それすらすぐに撤回されて、展望が開けないままだ。
どう説明すれば廃棄場所がうまく決まるのか。原子力委員会は2年前、学術会議に提言を頼んだ。その回答が今回の提言で、火山国の日本では廃棄物を埋めても、何万年にもわたって「安全だ」と言えないのではと指摘した。
場所が決まらないのは説得技術の問題ではなく、「原子力政策そのものに社会合意がないこと」に最大の原因があり、場所だけを決めようとしても無理だとの見方も示した。
多くの人が感じていたことを、大所高所から明確に言い切った形で、強く共感する。政府は近くエネルギー・環境戦略を発表するが、この直言を真摯(しんし)に受け止めるべきである。
学術会議は代替策も示した。まず廃棄物を地表か浅い地中に数十〜数百年の間、暫定保管する。不測の事態に柔軟に対応できるうえ、その間に、最終処分法の研究も進められる。
電力需給見通しから、必要な原発発電量をはじいてみても、ごみ処理が行き詰まったままでは、絵に描いた餅になる。学術会議の提案を足場に、廃棄物問題の現実から原子力政策を見つめ直すべきだろう。
地表での暫定保管なら、地中での最終処分を前提にした現行の使用済み核燃料再処理計画は必要ない。青森県六ケ所村にある再処理施設で一時貯蔵中の使用済み核燃料は、再処理せずに暫定保管するのが得策だ。
学術会議は、原発を運転して廃棄物が増加の一途をたどらないよう、廃棄物の総量に上限を決めることも提言している。
暫定保管施設をつくるからと、どんどん廃棄物を増やすようでは、将来世代へのつけ回しが大きくなるばかりだ。
廃棄物の貯蔵可能量が原発運転の上限。この当たり前の現実を、原子力政策にしっかりと組み入れなければならない。