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まもなく収穫の最盛期を迎える、コメ。
新潟県が、全国の市場で行ってきた検査で、別の品種が混ぜられたコメが、“新潟県産コシヒカリ”として売られている実態が、次々と明らかになっています。
コメの偽装はなぜ行われるのか、取材しました。
新潟県燕市にある、食品の検査を行う研究所です。 新潟県の委託を受け、“新潟産コシヒカリ”として販売されているコメの、DNA検査を行っています。 1つのサンプルから20粒を選び、表示に偽りがないか、見分けていきます。
これまでに県が検査したコメは、500点。 そのうち39点で、他品種の混入が確認されています。 中には、20粒のうち、6割に上る12粒がコシヒカリではない、悪質なケースも見つかりました。
県はこの業者を刑事告発し、経営者と従業員、合わせて3人が逮捕されました。
彼らを偽装に駆り立てたのは、何だったのか。
偽装を行っていた、大阪のコメ販売店です。
今も営業を続け、販売しているコメの“安全・安心”を掲げています。
偽装の真相を聞くため、店を訪ねました。
NHKを名乗ると、従業員の態度が急に変わりました。
従業員「忙しいのでお引き取り下さい」
記者「社長は今日いらっしゃらない?」
従業員「帰ってこないって言ってるでしょ。ウチ関係ありませんので、お引き取り下さい」
何も知らないと繰り返す従業員。
逮捕された経営者は、結局取材に応じませんでした。
店の仕入れに詳しい人物に話を聞くと、業者は、偽装が発覚する前、大量に福島産のコメを購入していたことが分かりました。
電話取材に対し、
「卸から仕入れるコメの中で、福島のコメが安くて良かった。ほとんどが“ひとめぼれ”だったと思う」と話していました。
今年2月、業者が仕入れを行った時期のコメの相場です。
原発事故の風評被害で、福島産のコメは一時、60キロ1万3000円台まで下落。
一方、新潟産コシヒカリは、1万8000円。
5000円近く差が開いていたのです。
コメの卸売業を営む男性です。
取り引きの現場では、相場以上に福島産のコメが買いたたかれていた、と言います。
男性は、
「原価割れでも、福島のほうが売ってくる。こちらが1万2000円と言えば『はい』。1万1000円と言えば、『はい』。買い手側の意向に沿わなければ、福島の在庫は、はけなかったのは事実」と言います。
原発事故をきっかけに、破格の値段で流通する福島のコメが、偽装へと走る業者を生んでいたのです。
新潟大学でコメの流通を研究している、伊藤亮司さんです。
偽装が横行する背景には、スーパーとの価格競争などで、コメ販売店の経営が厳しいという実情もあると言います。
新潟大学農学部 伊藤亮司助教は、
「安く仕入れて不当に高く売ることでしか、利ざやを稼げない業者も、中には出てくる」と言います。
私たちの食を揺るがす、コメ偽装。
不安はぬぐえないまま、収穫の秋が、間近に迫っています。
新潟県が行っている検査では、品種の違いまでは分かりますが、どこで作られたのかまでは特定できません。
民間の研究機関では、産地を判別する技術が開発されていて、国は今後、そうした技術も使いながら、検査体制の拡充に取り組んでいくということです。