ジャンプSQ.
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マンガ家 直撃インタビュー[モノガタリ]

――今の仕事場は一軒家だそうですね。先生は3階に住んでいて1、2階が仕事場。毎朝1階に出勤する感じでしょうか。

●藤崎 そうですね。朝、というわけじゃないんですが。完全にサイクルが狂っているので。毎日2時間ぐらいずつずれていくんです。一日が24時間じゃなくて26時間ぐらいになってる。なので、昼寝ていたり、夜寝ていたり。

――体がつらいというようなことは……。

●藤崎 前は全然平気だったんですけど、最近はちょっと体調が悪いなと思うようになってきたので、なるべく明るいうちに起きるようにはなりましたね。暗いときにしか起きていなかったこともありました。

――26時間サイクルだと曜日の感覚とかもちょっとあいまいな感じになってきたり。

●藤崎 いや、不思議なことに曜日と日にちの感覚だけは完全にあるんですよ。常に締め切りが頭のこのあたりにあるので(笑)。

――月刊連載というペースは今回の『屍鬼』が初めてですよね。

●藤崎 初めてですね。最初はちょっととまどいました。何日までに何をやる、とスケジュールを立てていたんですが、今は週単位で考えるようにしました。ずっと週刊でやってきたので、週で区切るのが一番楽だということに気がついたんですよ。1週間でネームをやって、あとの3週間で作画ですね。

――ネームの週はネームの、下描きの週は下描きの締め切りがある、という感じですか。

●藤崎 そうですね。それでいくと完成までに全部で4週間かかるんですよ。

――1か月、少しあまるくらい。

●藤崎 そうすると正月とお盆とゴールデンウィークにちゃんと休めるんですよ!そのやり方に気がついたときには、感動しましたね。これか、って。そういうことはよく考えるほうですね。

――どれだけシステマチックに仕事をするか、ということですか。

●藤崎 ええ。どうすればスムーズにいけるだろうかとか。体を壊してしまっては元も子もないですから。余裕がないと、やっぱりよくないですよね。

――余裕が出てきたのは、月刊連載になってからでしょうか。

●藤崎 うーん、『封神演義』の最後のほうでは結構慣れてきて、余裕で描いたりもしましたけど。でも例えばカラーの仕事とか連載原稿以外のちょっとしたことがあると……。

――連載だけで大変なのに、プラスされていくわけですもんね。

●藤崎 「これもやるの?」って(笑)。

眠いときに出現する一筆描きの怖いもの!?

――藤崎先生のカラー原稿はすごくきれいで、手がかかっている印象があるので、かなり大変なのでは。

●藤崎 もともと子供のころはイラストレーターにもなりたかったくらいなので、カラーに手を抜くとか考えられないんです。

――もしイラストレーターだったら、というクオリティのものを。

●藤崎 そうです、そうです。それくらいのものじゃないとイヤなんです、自分の中で。まぁ結局やっていておもしろいからやっちゃうだけなんですけどね。

――もし今回はまぁこんなもので、と仕上げてしまったら後から見た時にきっと後悔を。

●藤崎 それは絶対にイヤなんです。そうでなくても、後から見てここを直したいとか思うことがいっぱいありますしね。

――単行本にするときにはだいぶ手を入れられるんですか?

●藤崎 いや、なるべく直さないようにはしてます。1回世に出したものだからそのままにしておこう、と。あまりにもひどい間違いがあったら直しますけど。トーンがはがれていたりとか。一番ひどかったのは『封神演義』のときにキャラクターの指を6本描いてしまったこと(笑)。これはさすがに直しました。

――それは勢いあまって描いてしまったのでしょうかね。

●藤崎 すごく眠いときに描いたんだと思います。眠いと、何を描いているか自分でもわからなくなって、大変なミスをすることがある。腕が左右逆だったり、あと原稿のワクの外とかに、何か得体の知れないものを描いたりすることがあります。

――得体の知れないもの……怖いですね。

●藤崎 いや怖いですよ、あれは本当に(笑)。

――それは化け物的な何かなんですか?だとすると作品に使えそうな気もしますが。

●藤崎 いや、化け物的なものじゃなくて、何かこう……基本的に一筆書きなんですよ。ぐしゃぐしゃっとした線で、顔があって、その下に建物みたいなものがあって……という。

――建物まであるんですか!途中でハッと気づいて、あわてて消して。

●藤崎 いや、ペンで描いてるので、すぐには消せない(笑)。おもしろくなってきて、アシスタントに見せたりします。こんなの描いちゃったよって。

――反応はどんな感じですか。

●藤崎 また何やってんだかって感じ。みんなもう慣れてます。

――それはすごく見てみたいですね。

●藤崎 いや、しっかりホワイトで修正してますので。

――ちょっと世には出せない感じですか。

●藤崎 うん(笑)。