焼きつけ作業まで、と、薬品処理~水洗までを別けることを考えて見ましょう。
引き伸ばしだけ出来る暗いスペース(兼用暗室・1のように普段の部屋や、勿論、押し入れでも良いのですよ)を確保し、そこで印画紙に焼きつけ、では印画紙に露光をするところまで行い、遮光性のある、ボックス、あるいはタンク等に露光済みの印画紙を入れて移動、暗室化した風呂場等で現像作業~水洗をする、と言うやり方です。
一回一回移動するのが面倒なら、何枚か焼きつけた後、まとめて現像場に移動すればよいのです。移動の際の遮光ボックスですが、これは使用済みの印画紙が入っていたケース・黒ビニール袋で十分です。(てかその状態で売っている訳ですから、ちゃんと入れれば露光しません)。大きな印画紙(全紙以上)の場合は「ドラム現像機」のドラムが良いです。
利点は下記の通り。
- これなら、兼用とした部屋や、暗室は臭くはなりません。
- 作業後の薬品の処理は水場に集中しているので簡単で清潔です。
- 引き伸ばし機に水がかかる事も無いし、湿気、有毒な蒸気にさらされる心配も無いため、専用暗室よりも長持ちします。
- 定着液の匂いにむせながら伸ばしの作業をせずにすみますので、健康的です。
- 普段は引き伸ばし機が洒落たインテリアになります:)
- 洗い場の大きさ次第で、伸ばすサイズにフレキシブルに対応できます。専用の暗室を作ってしまうと、その暗室自体のスペース(広さ)に伸ばしサイズを限定される事もありますが、この点この方式は非常に有利です。
難点としては、下記が挙げられます。
- 当たり前ですが伸ばしスペースと、水場の両方を暗室としなければなりません。風呂場がユニットバスなら、比較的楽(ユニットバス自体暗室になり易い)ですが、そうで無い場合暗幕などが余計に必要になるでしょう。
- 露光済み印画紙を運ぶのが場合によってはとても不便です。複数の大量ののネガから、一枚づつプリントするのは苦手となります。一方、一つのネガから、大量にプリントするには逆に便利さすら感じます。また、大伸ばし、アーカイバル処理目的の慎重な伸ばし等で、一枚一枚じっくり伸ばすときも、一枚にかける時間を考えるとあまり不便さはありません。
この方法をよく吟味しますと「引き伸ばしの際、一切水気が無くても良い」わけですから、露光作業に支障の無いスペースだけ暗ければ良いわけです。そこでこれをもう一歩進めたのが下記です。私がはじめての事務所を持った時はこの形式で作業しました。いつ何時でも作業をしたい人にはお勧めします。
そこは、めっちゃくっちゃ狭い(変形した4畳半位)ワンルームで、ユニットバスでした。押入れすら無かったのです(T_T)……
間取り↓

そこで、 部屋の窓にかからない部分に畳一畳 位のベニヤ板を立てて、天井も板で塞ぎ、図の青い部分を 伸ばす為のスペースとして使いました。そして、現像その他の作業は、ユニットバスの中で行いました。

まぁ、小さな押し入れスペースを自作したようなものです。勿論こんなので、市販のものもあります。作るのがめんどくさい向きにはお勧めします。
(注意)
先に、伸ばしサイズに対しフレキシブルに対応できる、と書きましたが、以下に述べるよう伸ばし用小部屋を作ってしまう場合、この伸ばしスペースの広さが極端に小さいと意味がありません。伸ばすサイズを十分考慮して下さい。ちなみにこの自作のスペースでは、大全紙まで伸ばしていました。→ユニットバス程度の広さで、大伸ばしプリントの処理をする(引き伸ばし作業は別部屋で行う場合に限ります)場合はこちらもご覧下さい。
これを応用すれば、例えば、へやの角の一角を確保し、特に私がやったように板張り等せずとも、例えばタンスで一方をふさぎ、板等で、タンスの上から壁までの各辺に桟を張り、天井部分から だらりと暗幕を垂らして、夜、部屋の電気を消して作業すれば(見栄えは悪いけど)
まあ伸ばすくらいはできるスペースが出来ます。
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入り口の暗幕は、ただ垂らすだけでなく、左右どちらか、あるいは両方を マジックテープを使って、タンスや、壁にくっつけて閉まる様に加工しておくと 光線漏れ防止になります。
これじゃあまりにぞんざいだって場合は、天井部は天井部で暗幕で覆ってしフタをしてまいましょう。4辺をしっかり桟に鋲でも、ガムテでも、張りつけて固定してしまいます。
渡した桟の部分にカーテンレールを取り付け、本格的なダークルームカーテンを引けば、もう一人前の暗室であるぞよ。

不思議な物で、カーテンレールで暗幕引くと、なんか凄くまともな気がしますが、上の方法より、光線漏れは多くなります。 カーテンの上部の弛みから、光が入ってきちゃうんです。
そこで、カーテンは2重にし、2つのレールの間に、巧く段差をつけられれば、カーテンの弛みから入る光を抑えられます。通常、しっかりしたまともな暗室を作る(昼間でもさぎょうできるようなものですよ)なら、暗幕カーテンは2重にします。ぶ厚いものを一つより、そこそこのものと薄めのもの2枚の方が、遮光はやりやすいものです。
▼写真屋さんに売っているビニール製暗幕ではおしゃれじゃない!という方には、こういった遮光カーテンもあります。実際こういう物の法が長持ちします。

▼準遮光とか2級遮光といわれるちょっと薄いもの。上記と二重にすれば完璧

タンスの隙間やら、天井やらから、光線漏れもあると思うけど、始めはあんまし気にしないで、夜作業しましょう。実際、かなり適当にやっても夜ならばモノクロプリント作業には十分です。場所によっては専用の暗幕すら必要ない?かも。(当たり前だが部屋の電気は消そうね(笑))
何も露光していない印画紙を10分~20分程置いといて、現像してみてださい。それと、現像せずに定着だけしたものと、比べてみてください。濃度に違いがあるようなら、光線かぶりの可能性があります。タンスの隙間には細く切った板や、厚紙等で少しずつ遮光性を補強しませう。
それより、くれぐれも耐震構造だけは保って下され。タンスに押しつぶされたくなければ、地震があったら、すぐ出てくる事。天井に物載せないこと!タンスもしっかり耐震器具で固定する事。
断念したほうが良い場合
「伸ばし場 と水場」が例えば「1階と2階」とか「母屋と犬小屋」「東京と大阪」のように、極端に離れた場所にしか確保できない場合は難しいかもしれません。でも、やっている人もいるので、できない事はないです。
ちなみに私は学生時代、家(八王子)で夜焼きつけた印画紙を大学(江古田)まで持って行って(勿論遮光性のあるボックスに入れて)、学校の暗室で現像~水洗した事が何度かあります。
一見馬鹿みたいですが、そもそも写真のフィルムってそうでしょう?外国で撮影しても大抵現地で現像しないで持って帰ってくるんですから。
引き伸ばしの焼付けも「一種の撮影」だと思えば良いんです。日本で引き伸ばしの露光をしてアメリカで現像しても一向に問題はありません。(フィルムと違って印画紙の場合は、露光してから現像まであまりに時間が経つのはあまりよろしくないですからほどほどに)
斜光線のあるボックスったって対しものは必要ありません。印画紙を買った時箱と黒ビニール袋が入っているのでそれを使うだけです。