【記者手帳】KORAILの割引制度変更で波紋

 単身赴任の会社員Pさん(32)は、毎週金曜日の夕方、ソウル駅から釜山行きのKTX(韓国高速鉄道)を3割引で利用している。しかし、来月15日からはPさんが受けられる割引が縮小される可能性が高まった。韓国鉄道公社(KORAIL)が割引制度の変更を発表し、企業割引の割引率が最大30%から10%に引き下げられることになったためだ。

 KORAILは11日、「KTXも最大5割引で利用しよう」と題するプレスリリースを配布した。KTXの乗車券を携帯電話やインターネットで事前購入すれば、乗車率によって15%、30%、50%割り引くという内容だ。しかし、KTXを頻繁に利用する単身赴任者、会社員、自営業者などからは「かえって値上げになる」との指摘が出ている。既存の割引制度が大幅に縮小されるか、廃止されるからだ。

 割引カードを購入すると15-30%の割引が受けられる制度、乗車券の予約購入時期によって5-20%割り引く制度は廃止される。運賃の5%を積み立てるKORAILメンバーシップ制度も、来年からは利用実績によって割引券を提供する方式に変更される。全国2000社以上の企業が利用している企業割引も、割引率が最大30%から10%に引き下げられる。KORAILと政府によると、割引カードの利用客は昨年時点で640万人、メンバーシップ加入者は約650万人で、両サービスの利用者だけで1300万人に達する。

 それでもKORAILは5割引だけを強調する。割引の対象になるのは全座席14万-15万席の6-7%に当たる8000-1万席だけだ。さらに、割引が多く適用される路線は、普段から乗客が少ない路線だ。KORAILは新制度の導入で収益がどれだけ増えるか分析したはずだが、試算結果を明らかにしていしない。

 そうした事実が明らかになり、国土海洋部(省に相当)は12日、「新たな割引制度はKTXを頻繁に利用する乗客の運賃負担をむしろ増大させる懸念がある」として再検討を求める考えを示した。高速鉄道市民の会のペ・ジュンホ代表は「KORAILは表向き、乗客に大きな恩恵があるように説明するが、実際は既に黒字化しているKTXの収益を最大化し、経営赤字を埋め合わせようとしている」と指摘した。1300万人の国民が利用するメンバーシップや割引カードを縮小・廃止し、ごく一部だけが受けられる「5割引」だけを強調するKORAILの姿勢をどう考えるべきか。

崔鍾錫(チェ・ジョンソク)記者(社会政策部)
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