色も味もウソ!あきれてしまう
(害)ニセモノ食品
マナメッセ6号(1993年4月1日発行)より抜粋
サラダ油で人造イクラ
大豆油脂から、とろりスライスチーズ
くず肉で作る形成ステーキ
シシャモの卵を固めてカズノコ
ゼラチン、強化剤、糊量で、フカヒレ
栄養価のない“ニセモノ”は危険だらけ
取材・文/工藤和子
撮影/松本健男
ニセモノ食品でグルメ気分!?
本物そっくり究極のコピー食品
一億総グルメ、飽食の時代と言われる今の日本ですが、その実情を調べてみて、改めてガク然!こんなにニセモノがあふれているのです。よくもまあ、こんなにソックリに・・・、とあきれるやら、感心するやら。でも感心してはいられません。それがいかにも本物らしく、外食産業やお惣菜や弁当や給食の材料として、幅広く大量に使われている事実を、私 たちはもっとよく知るべきでしょう。写真で紹介しているものは、スーパーなどで購入した他、プロの仕入れ先の築地市場で見つけたり、コピー食品研究会の佐藤雄三さんの協力で集めた一例です。
サラダ油エキスで人造イクラ
コピー食品の傑作!人造イクラは、本物と混ぜて、お店でよく使われています。以前は皮が固いといわれましたが、今はむしろ逆で、熱湯で白く濁るものが本物です。作り方は、海藻抽出物のカラギーナン、キサンタンガムなどの溶液を、天然着色料で着色、目玉には同様の着色をしたサラダ油を注入。それを包む皮膜は海藻エキスとか「案外ヘルシーね」なんて思わないでください!カラギーナンは発ガン性の疑いあり味つけはもちろん化学調味料です。
高級珍味はニセモノの宝庫
本物のからすみは、ボラの卵巣を塩漬けして乾燥したもの。コピー「唐干寿」は、サメとタラの卵を混ぜて、メタリン酸とポリリン酸の重合リン酸塩と、化学調味料・合成着色料(黄5、赤102)で作られています。そして、本物の値段の10分の1以下のこれが、小料理屋などで幅を利かせています。松茸の香りだけぷんぷんのきのこ状かまぼこや、タラや貝柱のすり身にウニ少々の「板ウニ」まであります。
オードブルやおつまみは、コピー食品の大集合
小型のお弁当箱ぐらいの量のキャビアが、築地でたった1500円で買えました。二セ物キャビアはランプフィッシュの卵に着色した輸入品も多いけれど、これはとび魚の卵に合成着色料(赤40、黄5、赤3、黄4、青1)としょう油、化学調味料などの添加物で作った固形品。サラミチーズは肉のかけらも入っていません。タラ、豚脂、澱粉、二セモノチーズ、着色料、増粘多糖頬、調味料、保存料その他添加物だらけといっていいシロモノ。ビーフジャーキーが大豆たんぱく入りなのに牛肉の味がするのは、合成化学調味料と香りで、どんな味でも出せるハイテク食品技術のせいです。
香りと色でおいしさ誘う
コピー食品の問題点は、本物とは全く違う安い原料を使って、本物らしい風味にするために、さまざまな添加物が使われることです。着色料、香料はごまかすためのまず第一の要素。天然系の着色料が増えていますが、安全なものばかりではありません(P.4のリスト参照)。どんな香りの味つけも、化学調味料フレーバーで可能といいます。アミノ酸などと表示された化学調味料の多用は脳神経系に害をおよぼします。市販品は表示をよく見てください。着色料と香料は、どんなコピー食品にも共通す添加物です。
タラでカニ爪フライ、イカリング、エビフライ
豪華なフライの盛り合わせに見えますが、カニ爪フライの本物は、爪の部分だけ。爪の下のちょっぴりのカニ肉に、あとはタラのすり身のカニかまぼこをくっつけ、たっぷりパン粉をまぶして売られています。イカリングも、最近少なくなったヤリイカの代わりにタラのすり身に澱粉、ラード、卵白などを練り合わせイカそっくりにできています。もちろん化学調味料と香料でそれらしい味だから、お弁当などに入っていても分からない。本物のイカの半値で同じ大きさの輪切りで衣もついているので、外食産業に大もてとか。ひとくちエビフライも、エビ少々にタラや植物たんばくが混ぜられていました。ホタテにも同様のものがあるそうですから、くれぐれも表示を見てください。
業務用ゆで卵の輪切り、卵サンドにも
ファーストフードのお店などでよく出るゆで卵の輪切りりには、こんなロングエッグが使われています。殻をむく手間もいらないし、大小の違いもでないので、便利。作り方は、卵黄と卵白を別々に分け、黄身にはカロチン色素で着色した澱粉を増量。そのほか植物油、調味料、結着や強化などにリン酸塩が欠かせませんが、これは私たちの骨をもろくします。卵サンドにはこれが本物に混ぜて使われるとか。どうりで粉っぽいねっとり味のはずです。
安物アイスクリームは増量剤がたっぷり
本物のアイスクリームは乳脂肪たっぷりの牛乳に、卵黄、砂糖でできる栄養価の高いものです。市販品の多くは乳脂肪が少なく、増量のため乳化剤や安定剤が必要になります。また安い植物油脂を使ったラクトアイスは、もうアイスクリームとは呼べないもの。脱脂粉乳の代わりにカゼイン、大豆たんばくなどを使い、安定剤にパルプから作られる合成糊料も使用。風味を出すために、香料やさまざまな甘味料、いちご色の着色料などがいっぱい。
フカヒレスープ、松茸のお吸い物、練りわさびも、当然二セモノ
フカヒレも、松茸も、本わさびも高価なものだから、めったに庶民の口には入りません。本物の味を知らない人が多いためか、こんな本物とはかなり違う味が、まかり通っています。練りわさびは、白い西洋わさび(ホースラデッシュ)を緑色に着色し、香料、酸味料に、澱粉を混ぜたものが多く、本物よりずっとピリッと辛い。松茸のお吸い物は、香りだけする化学調味料の汁と思ってください(松茸ごはんの素は、まずいうえにその香りが炊飯器に数日間も残って困りました)。フカヒレは、ゼラチンと合成糊料と強化剤で作った業務用のものが、本場中国へも輸出されているというから驚きです。
コピー食品が、どうしてこんなに作られるのか?
昔から、麩を油で揚げたらがんの肉に似ていたので「がんもどき」と命名したような食品はありました。しかし、今の化学合成技術、添加物で作られるコピー食品は、それとは違う背景から生まれます。
人造イクラはカーバイト工業から
"コピー食品"という言葉がマスコミに登場したのは、10年ほど前です。
昭和48年頃からスーパーマーケットなどに並びだしたカニあし、カニ棒が、実はタラの練り製品とは知らずに買った人から、だまされたと苦情が続出、主婦連が不当表示を規制するよう政府に申し入れて、やっと昭和59年に表示が厳しくなったことがキッカケ。通称カニかまは、もうその頃には71万tもの生産量で、ヒット商品になっていました。
それ以前の二セモノ食品は、例えばピンク色をした魚肉ソーセージにしろ、まっ赤なウインナにしろ、本物とはかなり違う姿と味でした(しかし、子どもの頃、ソーセージといえば魚肉ソーセージのことと思って育った世代の私ですが)。
本物そっくりの出現。で、コピー食品と名づけられたものの中では、人造イクラの出来がピカ一です。
人造イクラは化学メーカーの「日本カーバイト工業」が、接着剤を入れるマイクロカプセルを作るとき、偶然できた粒々状が、イクラに似ていたことから、その技術をそっくり食品に応用して誕生したもの。
オレンジ色の粒の中の、目玉がちょっとずれているのも、ぷちんと口の中ではじける感触も、すべて工業的ハイテク技術のたまもの!本物より安い値で、本物と見分けがつかないモノを作れば、それを使って本物らしい値段で商売できる、そういううま味が想定されたうえで、莫大な設備投資をし、工業的に作られる食品なのです。
天然系の原料、着色料だからって、安心できない
北海道消費者連盟
「コピー食品研究会」
佐藤雄三さんは語る 写真あり
最近は天然系の着色料を使っている「コピー食品がほとんどです。天然系なら安心でしょうか?そして香料は?『これがコピー食品だ!』を出版している北海道の"コピー食品研究会"を訪ねてみました。「最近は着色料も天然系が増えているし、本物とは違っても、安くてそれらしい味を楽しめるんだからいいじゃないという人が増えていますが、以前と加工技術、生産工程ラインは変わってないわけです。表示されないさまざまな化学処理加工助剤の助けを借りてできるものがほとんど。ムリに本物に似せようとするから不必要な添加物がいるわけで、その一つ一つは微量でも、香料や天然着色料の安全性の検査は、まだよくされていないのが現状です」と、「コピー食品研究会」の佐藤雄三さん。