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原爆 入市被爆者のがん死亡…広島大が統計解析

 原爆投下後の広島市に入り放射線を浴びた入市被爆者のうち、投下3日目までに入市した人は、それ以降に入った人に比べ、がんで死亡する確率(死亡リスク)が、被爆時20歳の人が75歳時点で男性は13%、女性は8%、それぞれ高いことが、広島大原爆放射線医科学研究所などの統計解析でわかった。残留放射線によるがんの死亡リスクが数値で示されるのは初めて。

 同研究所の大谷敬子助教らのグループが12日、札幌市で開かれた統計関連学会連合大会で発表した。

 グループは、同研究所が追跡調査している約24万人の被爆者のうち、1970年時点で生存した入市被爆者4万7144人について、2010年末までの固形がん(白血病を除く)による死亡者数を調べた。その結果、6139人のがん死亡者のうち、投下3日目までが4830人を占めるなど、この日を境に大きく異なっていた。

 これまでの研究では、がんの死亡リスクは100ミリ・シーベルトの放射線を浴びると0・5%上昇するとされる。100ミリ・シーベルトは、原発作業員の5年間の被曝(ひばく)限度とされる数値で、3日目までの入市被爆者は、その何倍もの残留放射線を浴びていた可能性が高まった。

 入市被爆者の健康への影響については、脱毛や下痢などの急性症状が知られるが、これまで本格的な統計解析はされていなかったという。大谷助教は「解析をさらに進め、福島第一原発事故でも問題化した残留放射線や低線量被爆(被曝)による健康被害の解明を目指したい」としている。

入市被爆者 被爆者援護法は、原爆投下から2週間以内に爆心地から2キロ以内に入った人と規定し、被爆者健康手帳が交付された。今年3月末現在で全国5万1140人。

2012年9月12日  読売新聞)
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