社説:慰安婦の河野談話 ないがしろにできぬ
毎日新聞 2012年09月13日 02時32分
李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領の竹島上陸と天皇陛下への謝罪要求発言をきっかけに、旧日本軍のいわゆる従軍慰安婦をめぐる論議が日韓間で再燃している。日本では「心からのおわびと反省」を表明した93年の河野洋平官房長官談話を見直すべきだとの声が上がり、韓国の国会は公式謝罪と賠償を日本に求めた。互いの反発がこのままエスカレートすることには深刻な懸念を持たざるを得ない。
日本が河野談話を白紙に戻せば、慰安婦問題を苦労して政治決着させようとした過去の真剣な努力を自ら否定することになる。一方、韓国が新たに公式謝罪と賠償を持ち出すことは「心からのおわびと反省」を踏まえ官民協力で償い金を集めた日本側の国民感情を逆なでするものであり、とうてい受け入れられない。ここは日韓両国とも冷静になり、これまで積み上げてきたものを壊さない努力をすべき時ではないか。
河野談話は慰安婦問題の調査報告書とともに発表された。組織的な強制連行を認めたものではないが、慰安所の設置や慰安婦の移送などに旧日本軍が関与し、「総じて本人たちの意思に反して行われた」として、多数の女性の尊厳と名誉を深く傷つけたと謝罪する内容だった。