SAO:デスゲームで少年はどう生きる――― (犠牲者)
<< 前の話 次の話 >> このページにしおりを挟む
ダークリパルサー入手は原作通りです。とはいえ、リズの心境はレンと会っていることもあり多少違いますけど。
そしてようやく本編突入です!
第十六話:SAO内ではいくら食べても太らない
ガキン!ガキン!!
剣線が舞う。
「せやああああああ!!」
その声と共に僕は敵:リザードマンロードに一閃した。
静寂と共にリザードマンロードはポリゴンとなり消え去った。
「ふう……」
リザードマンロードは強敵と周囲言われているが、僕の範囲圏内に入ってしまえば攻撃を躱すことも防御することもたやすい。減殺剣なしだと通常攻撃扱いになりダメージも著しく下がるが逆に言えばさまざまな技を試せる………僕にとってはちょうどいいサンドバック……苛めがいがあるのだ。
うーん、それにしてもこの刀とも結構長い付き合いだよね。防具は階層がいくつか上がるたびに替えているけど、因みに今の僕の防具は白に近い灰色のコートに黒に近いフードを装備している。しかし、この刀だけは一度も変えたことが無い。そう考えるとなんか感慨深いものがある。長年使ってきた道具には愛着が出るというが……今じゃもう最初の面影全くないけど第一層から使い続けているしなんだかんだ言ってコイツが一番の相棒な気がする。それにしても、ある時を境に武器が変化しなくなったんだよなぁ……確か七十層の隠しボスの【守護聖龍:アステロギア】あたりを倒して【極光刀:夢幻】という真っ白な刀になってから、能力は僕のステータスに比例して上がるけど形が変わらなくなったんだよね。そう思いつつ刀を納めた僕は
「けっこうアイテムも集まったし」
精神的にけっこう疲れたので帰ることにした。
ん?アステロギアの強さ?強かったよ。なんせ攻撃するたびに【スパイク】という敵専用スキルで割合ダメージ食らうし、しかも結晶無効化エリアはともかく回復スキル無効化空間とかいう鬼畜空間のせいで【極限への極致】発動しないから一回死にかけた。なぜか九殺一生は回復スキルじゃないんだよね。しかも相手は自然治癒するわ、攻撃は範囲広いわ、アレひどすぎるだろう。ジャック・ナイフなかったら終わってた。しかも立ち悪いことに七十一層から普通のボス部屋にもこの回復スキル無効化空間があるせいで、回復系スキルがほとんど意味のないものになってしまったのだ。………………制作陣ドS過ぎるだろ……
「転移!アルゲート!」
沢山の鈴を鳴らすような美しい音色と共に、手の中で結晶がはかなく砕け散る。
ひときわ眩しい光に包まれて、それが消えた時には転移終了。僕が出現したのはアルゲードの中央にある〈転移門〉だった。僕は馴染みにしている買い取り屋に足を運んだ。
「よし決まった!【ゴルドリザードの革】二十枚で五百コル!」
僕が馴染みにしている買い取り屋のエギルは、ゴツイ腕を振り回すと、商談相手の肩をばんばん叩いた。
「毎度!!また頼むよ兄ちゃん!」
ちゃんと空気を読んで、しばらく沈黙を守る。さっきの商談相手が遠くに行ってから僕は話し掛けた
「こんにちは。エギルさん相変わらずですね」
「よぉ、レンか。お前も相変わらずのフードだな!安く仕入れて安く提供するのが、ウチのモットーなんでね」
「後半は疑わしいものですね。じゃあ僕も買い取りお願いします。」
悪びれる様子もなくうそぶく。
「レンはお得様だしな、あくどい真似はしませんよっ、と・・・ほぉ~こりゃまたずいぶん剥ぎ取ったな?」
「わかります?」
「ああ………そうだな8万でどうだ?」
「え~……もうちょっと……ダメ?(じー)」
「ぐ…し、しかたねぇ10万だ!」
「やった~ありがとう!!」
(フードから見えるその表情は反則だろ……半年前に俺が少し交渉術教えてやったとはいえコイツの交渉スキル相当上がってやがるな……天然で)
※フードは至近距離からなら表情が少し見えます。
と、ここで再びドアが開き見知った顔の黒プレイヤーが出てきた。
「よぉ、キリト!」
「やっほー」
「うーっす、エギル、レン……お前も買取してもらったのか」
「うん、10万だったね」
「コイツの交渉術はエグ過ぎるぜ……ったく」
「はは……むしろそれで済んでよかったじゃないか」
「なに?」
「コイツは交渉で一時リザードマンの眼球を100万で売りつけたからな……」
「マジかよ……それ確か価値1万くらいじゃ……」
「レンのじー攻撃で一発堕ちしたよ。」
「それどこの店だ?」
「確か………道具屋LCだったか…」
「乙だな」
「僕としてはあれだけでなぜあんなに羽振りが良くなるのかがわからない」
「レンはそうだろうな………」
「?」
「それよりキリト、おめえは今回どうした?」
「ああ、俺も買い取り頼む」
「どうせそんなことだろうと思ったぜ」
言いながらエギルは猪頚を伸ばし、キリトの指示したトレードウインドウを覗き込んだ。分厚くせりでした眉稜の下の両眼が、トレードウインドウを見た途端驚きに目が丸くなった。何を見たんだろう?
「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。【ラグー・ラビットの肉】か、オレも現物を見るのは初めてだぜ・・・。キリト、おめえ別に金には困ってねえんだろ?自分で食おうとは思わんのか?」
ほほう、ラグー・ラビットの肉か……確か僕も持っていたな。諸事情で調理していないけど。
それよりも僕は何であんなかわいいウサギがあんな漫画肉になるのかが不思議だ。しかも明らかに大きさ違うし。でも確かにそんなものを手に入れたのなら食い意地の張ったキリトなら一も二も無く食べていると思うんだけど
因みに【ラグー・ラビット】とは一言で言うと超低確率でエンカウントする、超レアモンスターだ。基本樹上やその近くに生息するもこもこしたウサギはとりたてて強いわけでも経験値が高いわけでもないのだが……ラグー・ラビットの逃げ足の速さは既知のモンスター中最速でありそのウサギが落とすアイテムがこのラグー・ラビットの肉なのだ。もちろん売れば高値で売れる。その理由は前述のラグー・ラビットの特性もそうだが。なにより美味い。このSAOでは食うことのみがほとんど唯一の快楽であり、そして普段口にできるものはNPCの料理だがはっきり言ってあまり美味しくない。料理スキルを選択している職人プレイヤーが少しでも幅を広げようと工夫して作る食い物は多少マシだが、職人の数が圧倒的に少ない上に高級な食材アイテムが意外に入手しにくいという事情もあっておいそれと食べられるものでもなく、ほとんど全てのプレイヤーは慢性的に美味に餓えているという状況なのだ。なので、この手のアイテムは必然的に高く売れる。
「思ったよ。多分二度と手には入らんだろうしな…。ただなぁ、こんなアイテムを扱えるほど料理スキルを上げてる奴なんてそうそう……」
「キリト君」
と、ここでまた聞き覚えのある声が………
女の声でキリトにこれほどなれなれしく声を掛けてくる女性プレイヤーはそれほど多くない。キリトも顔を見る前から相手を察していたようだ。左肩に乗せられたままの相手の手をぐっ、と掴むと振り向きながらキリトは言った。
「―――シェフ捕獲」
「な……なによ」
相手――アスナはいぶかしげな顔で思わず後ずさった。後ろの二人は………護衛?でも、一人はともかく、もう一人は………ちょっと目がヤバいかな……
「珍しいなアスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」
キリトがアスナを呼び捨てにするとアスナの後ろにいた後者の長髪の男と、自分の店をゴミ溜め呼ばわりされた店主の顔が同時にぴくぴくと引き攣っている。だが、店主のほうはアスナから笑顔とともに、お久しぶりですエギルさん、と声をかけられると途端にだらしなく顔を緩ませている。相変わらずだ。
アスナは俺に向き直ると、不満そうに唇を尖らせた。
「なによう。ちゃんと生きてるか確認に来てあげたんじゃない。レン君も」
「フレンドリストに登録しているんだから生きてることくらいわかるだろ。そもそもマップでフレンド追跡したからここに来られたんじゃないのか?」
そうキリトに言われてアスナはぷいっと顔をそむけてしまう。
………何このかわいい生き物?
「そんなことより本題に入ったら?」
「そうよ。何よ?シェフどうこうって?」
「あ、そうだった。お前今料理スキルどのへん?」
アスナは戦闘スキル以外になんと職人スキルまで上げているという器用なことをしているのだ。
「聞いて驚きなさい! なんと先週に
「なぬっ!」
「ゑ?」
サポーターでもないのに完全習得?僕のような
「……その腕を見こんで頼みがある」
キリトはアスナに手招きをするとアイテムウィンドウを他人にも見える可視モードにして彼女に示した。
「うわっ!!これ、S級食材のラグー・ラビットの肉!?」
「取引だ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやる」
言い終わらないうちにアスナの右手がキリトの胸倉をガシッと掴んだ。そのまま顔を数センチの距離までぐいと寄せると、
「は・ん・ぶ・ん!!」
その凄まじい剣幕にキリトは思わず了承してしまい「あ、しまった!」的な表情をし、アスナは「やった~」とガッツポーズをしている。
………でも、ちょうどいいか……
「アスナ、アスナー」
「なに?」
そう言って僕も可視状態にしてアレを見せる
「ちょ……レン君も?しかも三つも!?」
「みっつぅ~?」
三つもあるということで流石のキリトも目を丸くして素頓狂な声を出した。
「ちょ……レン君いったいどうして……」
アスナが口をパクパクしていった。
「いや~少し前にラグー・ラビットが三匹いて、ジャック・ナイフで仕留めたんだけどさ~一枚上げるからキリトの分諦めてよ……そうすれば仲良く一枚ずつ食べれるでしょう?」
「わかったわ!」
はえーなオイ、まあ此処じゃいくら食べても太らないのがSAOクオリティだからね。
そしてキリトはエギルに向かって
「悪いな、そんな訳で取引は中止だ。」
「いや、それはいいけどよ……。オレたちダチだよな?な?オレにも味見くらい……」
その言葉に対してキリトはにっこりと微笑んで
「感想文を五百字以内で書いてきてやるよ」
「そ、そりゃあないだろ!」
この世の終わりか、といった顔で情けない声を出すエギルにここで僕参上
「エギルさん、肉上げるよ」
「え?」
「だって三つあるんだよ?一つ余るし……日ごろお世話になっているから」
「だから?」
「20万コルで手を打とうではないか」
「レンさん………あなたは天使だ……」
「それほどでも~」
※ラグー・ラビットの肉の価値は、40万は下りません。
トレードを済ませ店を出たところで料理はどうやらアスナの家で振る舞われるらしい。キリトが「それは、助かるぜ」と言うと、アスナは警備のギルドメンバー二人に向き直ると声をかけた。
「今日はここから直接セルムブルグまで転移するから、護衛はもういいです。お疲れ様」
そうアスナが言うと、一人の護衛は「了解しました」と短く言ったがもう一人の護衛は、その途端、我慢の限界にでも達したとでも言うように長髪の男が叫んだ。
「ア……アスナ様!こんなスラムに足をお運びになるだけに留まらず、素性の知れぬ奴をご自宅にいれるなどと、と、とんでもない事です!レン様ならともかく――――」
その大柳な台詞に僕は内心うんざりとさせられている。〈様〉と来たよしかも僕にまで………この人も紙一重級の崇拝者なんじゃなかろうか、と思いながら目を向けると、当人も相当うんざりとした表情である。
そして今のこのセリフから分かると思うが、僕の素顔は血盟騎士団の中ではすでに全員が知っている。あの団長こと糞GMがやらかしたせいで………まあこのことはまた今度にしよう。
「このヒトは素性はともかく腕は確かだわ。多分あなたよりも十はレベルが上よ、クラディール」
「な……何を馬鹿な!私がこのような奴に劣るなど…!」
男の半分裏返った声が路地に響き渡る。
三白眼ぎみの落ち窪んだ目で憎々しげにキリトを睨んでいた男の顔が、不意に何かを合点したかのように歪んだ。
「そうか…手前、たしか〈ビーター〉だろ!」
おおう、此処でその単語か。まあ、ビーターに対する偏見はあの時に多少和らいだとはいえ無いわけじゃないからね。仕方ないっちゃ仕方ないんだけど……
「ああ、それがどうした」
キリトは無表情に肯定した。
「アスナ様、こいつら自分が良けりゃいい連中ですよ!こんな奴と関わるとろくなことがないんだ!」
「それを行ったら僕だってビーターですよ?」
「レン様はむしろそれでいいのです!」
「なんで?」
「かわいいは正義だからです!!」
( ゚д゚ )ポカーン
ナ、ナニイッテルノカナーこの人は?僕にはこの人の思考が全く理解できません誰か説明プリーズ。
「ともかく今日はここで帰りなさい。副団長として命令します。」
そっけない言葉を投げ掛けたアスナは、左手でキリトの裾を握り右手で僕のフードを握りしめながら、ゲート広場へと足を向ける。
「え、えっと~」
「お…おいおい、いいのか?」
「いいんです!」
そう言われずるずると引きずられながらゲート広場に到着へむかった。ふと後ろを見ると、クラディールと呼ばれた男が憎々しげにキリトを見つめていたところだった。
おまけ
圏内事件のレンとの対話時のPoH達の心境
「ほう……こんなところで攻略組の神童……『瞬閃』に会うとはな。(マジ!?生のレンちゃん!?生のレンちゃんが俺の前に現れてくれたぁぁぁー!!)」
「知っていて光栄ですよ………PoH」
「フン………何の用だ?(今俺の名を呼んでくれた!?感激!!!神様ありがとおぉぉぉぉぉぉ!!!!)」
「決まっているでしょう?今すぐ此処から去れ……そうすれば見逃す。」
「………(おk!レンちゃんの命令ならいくらでも殺してあげるしもう死んでもいいや……)」
ジョニー(ああ、今この場面動画にして永久保存してェ……つかヘッド、名前呼んでもらってマジうらやましい……パルパル)
ここでザザ前へ
「やめろザザ……(あ、コラ!何前でて、臨戦態勢取ろうとしてんだこの野郎!)」
「なに?」
「ここで今コイツと殺りあってもよくて同士討ち………最悪全滅だ……(100%全滅or敗走だろうがな!)」
「こんなガキに……」
P(後でコイツにはOHANASHIが必要なようだな。………ついでに洗脳も)
ここでキリト参上
P(空気嫁KY!せっかくいろいろと話し合うことができるチャンスだっていうのに!!)
「十分……あと十分で攻略組の援軍が三十人くる。十分で僕たち二人を殺してその三人を殺すなんて流石のお前たちでもできないでしょ?」
「……………(余計なことしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)」
ジ(黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺黒殺)
殺人ギルド(笑)
<< 前の話 次の話 >> 目次 感想へのリンク このページにしおりを挟む ページの一番上に飛ぶ