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【自著を語る】

『ゴーマニズム宣言 SPECIAL脱原発論』 小林よしのりさん(漫画家)

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◆維持派の嘘 全部暴いた

 出来る限り早期の原発ゼロ達成が圧倒的な民意だということは、誰の目にも明らかなのに、その民意が政治につながらない。これが今の問題です。

 政府や専門家と称する人たちは、どんなに圧倒的な民意を見せつけられても「ポピュリズム」「感情論」のレッテルを貼って無視しようとします。

 自称保守の知識人は、「脱原発は左翼思想だ」と決めつけますし、それに影響される「ネトウヨ(ネット右翼)」と呼ばれる者たちは、脱原発デモを「売国奴」だの「国賊」だのと罵(ののし)る有様です。

 わしも、『脱原発論』で即時の原発全廃を強く主張して以来、散々「国賊」呼ばわりされています。

 しかし、そもそも「美しい国土を守ろう」とか「子孫の代まで国家の繁栄を保とう」というのが保守だとしたら、美しい国土を破壊し、十万年後の子孫にまで核廃棄物を押しつける原発には、保守こそ反対を唱えなければおかしいのです。あくまでも「パトリ(郷土)」を守ろうとする者こそが、保守であるというのが、わしの立場です。

 原発を守ることが目的化している人たちは、強引に嘘(うそ)のプロパガンダに励んでいます。「原発がないと電力不足になる」「原発は安い」「原発は安全保障上必要」「低線量の放射線ならば安全」「再生可能エネルギーの普及は困難」「原発がないと経済が落ち込む」…全部嘘です。

 『脱原発論』では、その嘘を一つ一つ暴きました。特に重視したのは「原発がないと経済が落ち込む」という嘘です。

 この嘘による脅しは、かなり効力を発揮しています。脱原発を唱える人ですらこの嘘に引っ掛かって「原発を動かすくらいなら、経済が落ち込んだっていい」と反論することがありますが、これでは原発維持を目論(もくろ)む者の思う壺(つぼ)です。実際には、原発をなくした方が経済成長できるのです。

 脱原発の民意は、決して「ポピュリズム」でも単なる「感情論」でも「左翼イデオロギー」でもなく、完全に論理に適(かな)うのです。原発を守りたいなら、この『脱原発論』を論破してみろ!との思いを、わしはこの一冊に込めました。

 (小学館・一七八五円)

 こばやし・よしのり 1953年福岡生まれ。76年、大学在学中に描いたデビュー作『東大一直線』が大ヒット。以降『おぼっちゃまくん』などギャグ漫画に新風を巻き起こす。92年、『ゴーマニズム宣言』の雑誌連載開始。

 

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