移住! de 沖縄  その2




「沖縄・宮城島の十二ケ月」   川上 宏 著   林檎プロモーション   1,429円+税
   2009年 9月17日 第1刷発行


 著者は、1954年生まれで、人気の旅行ガイド「沖縄・離島情報」の創刊時の編集長だった方です。その人の、沖縄通にもあまり知られていない宮城島桃原地区に移住しての1年間の生活の様子が、綴られています。
 都会やリゾート地での生活が長く、人付き合いがあまり得意なほうではないという著者でしたが、小学校の運動会や集落の一斉清掃などに参加しているうちに少しずつ地域に溶け込んでいく様子が伺えて、ほのぼの。
 著者は難病で苦しんだ後のいわば病み上がりの体調のようで、また、高齢の父親もいっしょに移住しています。
 それから高齢の犬を3匹飼っており、移住に際してこのわんこたちをどうやってストレスなく沖縄へと運んでくるかにかなり苦労、腐心していたのが印象的でした。
 一方で記述に謎めいた部分がないでもなく、たとえば、登場する何人かの同居人?って、どういう関係の人なのか、また韓国人の奥様セヒさんについては、一緒に行動している記述は多くあるのですが、なぜか親密な夫婦愛?のようなものについては、あまり伝わってこないなという印象。
 とまれ、いろいろあっても、まぁ、これもひとつの移住のかたちなのでしょう。人はそれぞれ指向、能力、財力、家庭環境などが違うわけですから、移住のしかたも移住者が百人いれば百とおりなのだと思います。
 移住ハウツー本ではなく、あの人の移住はこうだったというひとつのサンプルとして楽しみたい1冊です。
 著者は今後、「子供に夢を、若者に生き甲斐を、老人に安心を」とのスローガンを掲げ、さまざまなアイデアをもとに、会社を設立して島興しを試みようとしています。
 順調に進めば、きっとどこかで「川上宏」の名を目にすることがあるかもしれませんね。期待しましょう。
(2010. 7.11 読)


「セカンドライフ実践だより 沖縄山原にて」   平野 宏 著   鳥影社
   1,400円+税   2009年 7月11日 第1刷発行


「美しくて優しい沖縄山原で、さまざまな発見と感動をしながら自分探しの生活を体験してきた。そして、そこで自身の心の変遷と、心身とも元気になっていく暮らしぶりを随想してきた。セカンドライフを迎える読者の、これからの生き方探しに少しでもお役に立ち励ましになれたら幸いである。」
――というようなコンセプトで書かれた、セカンドライフを考える人たちへの贈り物。
 著者は1946年生まれで発行時は63歳。新潟生まれで医学部に学び、岡山県の私立医大で25年勤務したあと、人生の着地点を求めて沖縄に来たという人です。
 やんばるで仕事半分、家事半分の日々を送っている様子を書いていますが、家事についてはよくわかる反面、仕事のほうは何をしているのか、文章からは読み取ることができず、判然としません。
 疑ってしまえば、医大勤務時代にがっちり蓄えたからこそ、そのような生活ができるのだろうとも思えてしまいます。結局のところ、ふつうのサラリーマンがそういうことをやろうとしても、なかなか実現に至るには難しいのではないか、なんて思ってしまうのです。
 そうではない、ということであれば、「仕事半分」についてもしっかり記述すべきだったのではないかと考えます。
 また、シニア世代の方々の考え方については、まだ現役の自分ではあるけれど多少は理解できるだろうと思っていたのですが、朝の目覚めが楽しい、毎日の献立を考えるのが楽しい、週に3回の25キロの早足散歩が楽しい、そのためか健康診断では心肺機能が向上した・・・と言われても、正直言ってあまりピンときませんでした。
 そういうことってやはり、世のため人のためにやるべきことがなくなって自由な時間がたっぷりある人が、日々を無為に過ごさないために自分に課する毎日の宿題みたいなものなのだろうとしか、今の自分には思えませんでした。
 うーむ・・・。セカンドライフなんて、まだまだ先だものなぁ・・・。
 セカンドライフをどうするかということについては、リタイアがもう少し現実的なものになってきたあたりで、よく考えてみることにしましょう。
(2010. 5.14 読)


「おんなひとりの沖縄暮らし」   岡田清美 著   長崎出版   1,500円+税
   2008年10月30日 第1刷発行


 「三十にして起つ!」(2002年、文芸社刊)以来久々に読む岡田清美さんの作品。雑誌「うるま」のコラム「ちんだみ道中」、愛読していましたよ。
 「三十にして起つ!」は、沖縄移住に際しての様々な出来事や心境などが中心でしたが、移住して10年近くが経ち、今作では沖縄で暮らす島ナイチャーの日々がいろいろと綴られています。
 沖縄暮らしで見えてきたものや、沖縄の楽しみ方、そして沖縄のこんなところが好き!というあれこれなど。本人がまったく後悔していないと断言するほどに充実した沖縄ライフを送られているようですね。うらやましいったらありゃしない。
 読んでいて感じるのは、住んでいる場所の粗を探すのではなく、ステキなところをいかに探してそれらにどう関わっていくかが重要なのだなということ。何事にも前向きな姿勢が必要で、アグレッシヴなればこそ人生はいよいよ楽しくなれるのでしょう。
 彼女も、与那原の大綱曳や那覇ハーリーなどをはじめとして地元のイベントに積極的に参加したり、タンカン狩りやモズク採り、テニスやホテルのデザートバイキングなどをして友人たちとの時間を大切にして日々を過ごしたりしている様子がよくわかり、これなら楽しいだろうと思いますよ。
 さて、このような類いの沖縄のいいトコ紹介、あるいは住んでみてこう感じた、的な本ですが、もうこれまでにだいぶ読んできたためか、気分の高揚感はかつて感じていたものよりもやや低くなってきた印象。今後はどちらかというと、もう少し沖縄の各事象をじっくりと、というか、マニアックに掘り下げた趣向のものを読んでみたい気分です。
 カッコよく言えば、自分の中では「沖縄」は、今やムーブメントとしてではなく、しっかりと自分の位置取りを構成する一部として定着した――ということではないのかなと。(笑)
(2009. 2.14 読)


「沖縄に住む 理想のセカンドライフの過ごし方」   原田ゆふ子 黒川祐子 著
    角川SSC新書    740円+税   2008年 3月30日 第1刷発行


 実際に沖縄に移住してしまった女性2人による移住ハウツー本。
 主に定年退職後、あるいはセミリタイア後に沖縄への移住を果たし、理想のライフスタイルを実現している先輩シニア移住者の体験談をもとに構成されています。
 また、これから移住計画を練ろうとしている人たちのために、具体的なデータやお役立ち情報なども掲載されていて、読み手の沖縄でのセカンドライフへの夢をくすぐってくれます。
 多くの移住本とあまり変わることはないのですが、対象がシニアであることもあってか、勢いに任せての移住を勧めるようなことはなく、比較的冷静に解説してくれているような印象があり、自分としては読んでいてしっくり来るようなところがありました。
 しかし、いまさらながらよくよく認識したけど、沖縄移住って、すごいブームなのですね。
 リタイアして、退職金でマンションを買ったり一戸建てを建てたりして移住してしまうんだな。あとは年金で生活していこうということなのでしょう。
 うーむ・・・おれには真似できないかも。
 そんなに金があるわけでないし、いくらココがいいと思ってマンションを買っても、しばらく住んでみなければホントにいいかどうかはわからない。
 自分はこうするのだろうな、ということを述べれば、退職後すぐの2、3ヶ月は那覇でウィークリーマンションを借りて、芸能やライブを堪能し、その後しばらくは故郷に戻って、また一定期間を沖縄のどこかで暮らし・・・ということを繰り返すのだろうな。
 そして、居心地がよければ、もっとも落ち着く場所で2DKぐらいの賃貸アパートを借りて、悠々自適の日々を送るのだろう。
 基本的には、移住に関して家庭の理解は得られそうにない。なぜならば、家族のヒトビトたちはめっぽう定住的な生活を好むようで、いまさら見知らぬ土地で生活をするなどとは考えてもいないようだから。
 その点、自分はデラシネ的性格。現状維持がキライなのだ。まぁ、一人になって別々に暮らすのも、さほど苦にならないだろうし。
 ――あぁ、また夢を見てしまっているなぁ。
 こんなことができる自由な年齢に早くならないものかと、今から指折り数えて待っているのですな。(笑)
(2008.10. 6 読)


「私たちの沖縄移住 移住者たちの夢の沖縄スタイル」   沖縄スタイル編集部 編
    竢o版社    680円+税   2007年11月30日 第1刷発行


 これから沖縄移住を考えている人に向けられた、沖縄に暮らす先輩移住者たち15組の物語。
 初出は、隔月で発売されるムック「沖縄スタイル」です。
 南の島の暮らしを満喫している人たちのインタビューが厳選のうえ収録されており、南の島に宿を持った人、親子2代で完全移住した家族、赤瓦屋根の古い民家で念願の田舎暮らしを送っている人などが、それぞれのライフスタイルをもとに語ってくれています。
 海、空、家などをモチーフにした、移住者の笑顔たっぷり、太陽の光たっぷりのきれいな写真たちが、南島生活に対するあこがれを強烈にそそります。
 一般の沖縄移住のノウハウ本に見られるような、移住することの困難性についての記述をいさぎよく捨て去り、ホントにいいところばかりを強調しているので、沖縄好きの人が読めば、ボーゼン自失状態になること間違いありません。「夢」として眺めている分には、精神衛生上きわめてよろしい。まあ、実際には、このような極楽浄土のようなことばかりではないのでしょうけどね。
 巻末に、沖縄移住を考えている人向けとして、統計データをもとにしたリアルな沖縄がわかる「沖縄生活図鑑」が掲載されているのもお役立ち。エリア別に家賃を比較したページなどは参考になりました。
(2008. 2.21 読)


「住んでびっくり! 西表島」   山下智菜美 著   双葉社
    1,600円+税   2006年10月10日 第1刷発行


 2003年の夏から西表島の干立(ほしたて)という集落に住み始めた山下さん。
 ワイルドな生活、地縁血縁がモノを言う人間関係、さまざまな行事への参加・・・などなど、まさに住んでみてびっくりの体験をしている様子がとてもおもしろいです。
 大家さんが少しずつ手をかけてつくったという三軒長屋の真ん中に住んでみると・・・、いやはや、西表ってすごいトコロなのですね。高温多湿なためにカビが生えるし、また、シロアリ、ゴキブリ、蚊、ネズミ、ハブ、アリ・・・という具合に、「家」にまつわるありとあらゆる生物の侵攻を受けて四苦八苦しています。これではちょっと耐えられないかも。(笑)
 でも、悪いことばかりではないようで、ご近所さんからさまざまなおすそ分けをもらったり、公民館活動では若干の負担だけでさんざ飲み食いをしたりして楽しんでいるようです。
 そして公民館活動では婦人部に入り、海神祭、豊年祭、アンガマ、運動会、シチ祭、カジマヤーなどに参加して、忙しいと言いながらも着実にその地の文化や民俗、芸能に浸りこんでいっています。
 こういう生活って、好きな人にとっては、カネや出世や肩書きなどでは得られない贅沢なものなのでしょうね、きっと。
 食品の偽装問題や防衛事務次官の収賄をはじめとして、世の中では正義を忘れ、カネをひたすらに崇拝するような風潮が跋扈していますが、こういう本を読むと、何をどうすれば自分は満足できるのか、自分にとっての幸せとは何なのか――ということについてよく考えていて、自分なりの答えを持っている人間こそが一番強いのだなあと、つくづく思います。
 皆さん、いかがでしょうか。世の中の権力から発信されるプロパガンダのようなものに、我々は踊らされ、だまされてはいないでしょうか?
 自分がいいと思うことこそが、いい。そういう自信を持って生きていければシアワセなのでしょうね。
 しかし、双葉社が発行し続ける沖縄&島旅本はますます快調ですね。
(2007.12.16 読)


「沖縄通い婚 2泊3日のウチナー暮らし」  下川裕治 編   徳間文庫
    552円+税   2006年12月15日 第1刷発行


 住みたいけど住めない。でも気がつけば飛行機に乗っている。島の風とウチナーンチュの笑顔に逢いたくて。――こういうのを「通い婚」と言うのだそうです。そうだとすれば、自分は間違いなく通い婚組でありましょう。(笑)
 このページのジャンルは「移住」ですが、この本のテーマとするところは「旅」ではなく、沖縄への精神的移住なのでしょう。なのでココに入れておきましょうね。
 マイ沖縄訪問歴は数えて35回。何回行っても新鮮で、見る所がなくなるということがないこの島々は、自分にとっていまだに摩訶不思議な存在。そんな自分も相当なものだと思っていたのですが、この本を読んでみると、いやはや、ものすごい人たちがいるものですね。(笑)
 1年に9回も沖縄に通い、その都度毎日のように同じ居酒屋に通う男。
 1500キロ離れたところにダンボール一箱の沖縄食材を買うために頻繁に通っているカップル。
 埼玉から毎月1回、沖縄の三線教室に通っている女性。
 彼ら、彼女らの余暇時間やカネの使い道に対する考えというのは、いったいどうなっているのでしょうか。あぁね。あんまり人のことは言えないのだけどね・・・。
 さて、沖縄移住に関する本は最近特に多くなっていますが、おれとしては移住よりもこの“通い婚”というほうがなかなかしっくりきます。
 沖縄は好きだけど、なにもこれまでの自分の人生や生活を打ち消してまで新たな転地を求める必要は今のおれにはないし、背負っているものも多いけれどそれらはすべてが鬱陶しいわけでもない。時間とカネと健康があれば、通うことについても苦にならない。
 まあ、贅沢なことではあるけれど、地元と沖縄のいいトコ取りをしたい、どっちも失いたくない、ということなのでしょう。
 ゼロサム社会にあってともすればどっちつかずは悪いことのように捉えられがちですが、しかしいいトコ取りは悪いことではまったくなく、むしろこれこそ常識的な選択だとおれは思う。大人はきちっと現実と折り合いをつけるものなのダ、エヘン!
 下川裕治、仲村清司、はるやまひろぶみといった沖縄に関する著述をものする人間たちに加え、女優の水野美紀、漫画家のいしかわじゅん、元バレーボール選手の益子直美などの沖縄大ファンの方たちも「私たちも通ってま〜す」とばかりに寄稿しています。
 ますます沖縄通いの深みにハマっていきそうな1冊。多くの人の“症例”に触れ、自分がなぜこんなにも沖縄に通うことになってしまったのか――ということについて、少しそのわけがわかったような気がしました。
(2007.11.10 読)


「南の島で、暮らそうか!」  バンガートめぐみ 著   角川oneテーマ21
    895円+税   2005年 7月10日 第1刷発行


 青い空、白い屋根。その屋根にはユニークな顔をしたシーサーが鎮座していて・・・。
 いい表紙ですねぇ。南の島のイメージそのものだよなぁ。
 「南の島」暮らしには、人を惹きつけてやまないものがあります。それはいったい、何なのか?! 移住者はどんな生活を楽しんでいるのか。そして、移住を成功させるためにはどんな工夫とコツが必要なのか。
 ――そういった問いに答えるべく、本書では、中高・熟年齢層の移住者の話も加えて、幅広い層の人々に役立つ情報を網羅。移住には覚悟が必要だが、苦労してでも手に入れる価値がある!と確信する沖永良部島在住の著者が、自分の楽園を見つけてほしくて著した実用書です。
 ケーススタディとして9組の移住例を示したうえで、まず南の島を知り、どう職を得、どう住まうかについて解説しています。
 読んでの率直な感想なのですが、南の島への「移住」って、この島が好きになり、居ても立ってもいられなくなったので移住する――というのがフツーの移住形態なのだろうと私は思っていたのですが、どうもそういう人ばかりではないようです。
 本書は、移住する「島選び」の話から始まっているのですね。まず南の島へのあこがれがあって、それではどの島に移住しようかという・・・。移住って、そうやってするものなのかな。
 鹿児島の離島を含む島ごとデータブックが付いていることもあり、どの島に移住しようか迷っている方にはオススメ。薩南諸島まで視野に入れているところが目新しさのひとつでしょうか。
 でも、移住って、住むならどうしてもココじゃなきゃいやだっ! という気持ちこそが、ホントは大切なのだと思うのですが、皆様いかがでしょう。
(2007. 9.18 読)




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