水説:シェールガス革命=潮田道夫
毎日新聞 2012年09月05日 東京朝刊
シェールガスは中国や欧州そしてアルゼンチンなどにも存在する。これが一斉に開発されれば「天然ガスの黄金時代」(米エネルギー情報局)が到来し、余沢は日本にも及ぶ可能性がある。
しかし、これもどうか。ロシアのガスプロムの輸出担当役員が面白いことを言っている。「シェールガス革命は欧州にも波及するか」と聞かれて「トロツキーはロシア革命の世界拡散を夢見たが、幸いなことに実現しなかった」と答えた。つまりノーだ。
米国でシェールガス革命が起きたのは、土地所有者が地下資源の所有権を持っており開発誘因が働くからだ。しかし、そのような所有形態は米国特有で欧州は異なる。人口密度の高さも開発を妨げる。中国は水不足で掘れない。
それにシェールガス革命は本当に「革命」なのかどうかちょっとあやしい面がある。ニューヨーク・タイムズがシェールガス業界の内部文書や電子メールを入手して、業界の内情を暴露し続けている。面白い。「本質的にもうからないビジネスだ」「ネズミ講みたいなもの」など将来性を疑わせる内輪の話満載。
シェールガス革命の見極めにはまだ時間がかかるということだ。いましばらく見守りたい。(専門編集委員)