水説:シェールガス革命=潮田道夫
毎日新聞 2012年09月05日 東京朝刊
<sui−setsu>
わが国は原発の稼働停止を火力発電で補った結果、化石燃料代が膨れあがった。今年は大震災以前に比べ、石油代で2兆円、天然ガス代で2・5兆円、計4・5兆円の支払い増加になるという(日本エネルギー経済研究所)。
日本が貿易赤字国に転落した最大の要因だ。いまのところ海外の投資収益で赤字を消しているが、高齢化で海外資産も取り崩すことになる。あと数年もすれば経常赤字国に転落するだろう。国債相場の波乱が懸念される。
だから、化石燃料代をなんとか抑えたい。折から米国ではシェールガス革命が進行中である。米国のシェールガス価格は100万BTU(英熱量単位)当たり3ドル程度。日本が輸入しているLNG(液化天然ガス)は約17ドル。6分の1の安さである。
シェールガス革命を何とか利用できないか。そう考えて当然だが楽観できない。
まずは米国産天然ガスの輸入。大手商社などはすでにシェールガスの採掘に資本参加し始めているが、日本が輸入できるかどうかは別。
米政府は積極的とはいえない。輸出すれば価格が上昇する。エネルギー企業はもうかるが、安いエネルギーコストで米産業の国際競争力を引き上げる方が得策という声の方が強い。大統領選後の判断になろうが微妙である。