災害公営住宅 完成はわずか12戸9月8日 16時29分
東日本大震災では、およそ30万人の被災者が仮設住宅などで暮らす一方、被災した住宅を自力で再建できない人のための「災害公営住宅」は、建設用地の確保が進まず、震災から1年半となる今も、完成したのは12戸にとどまっています。
国や各自治体は、すべての住宅が完成するのは早くても平成27年度末になるとしていて、仮設住宅での生活の長期化が予想されています。
今回の震災で、仮設住宅や、国が借り上げた賃貸住宅などで暮らす人は、先月末現在で合わせておよそ30万人いて、岩手、宮城、福島など7つの県では、およそ2万3000戸の「災害公営住宅」の建設が計画されています。
しかし建設用地が確保できたのは3369戸と計画全体の15%にとどまり、着工したのは324戸、完成したのは福島県相馬市の12戸だけです。
建設が進まないのは、被災地では平地が少ないうえ、津波で多くの土地が浸水し、さらに災害公営住宅の建設に適した高台にはすでに仮設住宅が建設され、新たな建設用地を確保できないためとみられています。
国や各自治体は、すべての住宅が完成するのは早くても平成27年度末になるとしていて、仮設住宅での生活の長期化が予想されています。
まちづくりに詳しい東京大学の小泉秀樹准教授は、「災害公営住宅の建設を急ぐことは大事だが、建設に時間がかかることを想定し、今の仮設住宅でも希望を持って暮らせるよう心のケアや医療福祉の分野の専門家による支援態勢を整える必要がある」と話しています。
浸水地に住宅を建設できない事情
東日本大震災で、災害公営住宅の建設が進まないのは、津波で浸水した沿岸部の平地にそのまま住宅を建設しないとしているためです。
一方、平成7年の阪神・淡路大震災では、もとの平地での建設が可能だっため、2年後には、1150戸余りの災害公営住宅が完成しています。
また、福島県では、原発事故で避難区域に指定されている地域で、いつ地元に戻れるのか明確になっていないため、各自治体は、必要な災害公営住宅の戸数さえ示せない状況です。
“事前の準備が必要”
阪神・淡路大震災では、災害公営住宅の建設が比較的速く進められたものの、くじ引きで入居者を決めたり、もとの場所から離れた地域に建設したりするケースもあり、もとの住民がばらばらになって地域社会が失われたり、被災者が孤立したりしたという指摘もあります。
まちづくりに詳しい東京大学の小泉秀樹准教授は、「被災者の希望に沿わない形で焦って造っても、後からさまざまな問題が起きることもあるので、自治会を事前に立ち上げたり、支援の仕組みを準備したりして災害公営住宅が完成した時に、スムーズに新しい生活に移行できるようにしておくことが大事だ」と話しています。
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