日本原子力発電敦賀原発(福井県敦賀市)の大事故を想定して岐阜県が独自にまとめた被害予測を受け、高濃度の放射性物質が拡散する恐れがあるとされた尾張北部の三市二町からは戸惑いの声が相次いだ。年間の外部被ばく量はそれぞれ二〇ミリシーベルトを超えると予測され、各自治体は愛知県の対応を注視している。
「寝耳に水だ」。予測結果を受けた江南市の担当者は、驚きを隠さない。これまで原発事故の被害予測の範囲に含まれたことがなく、市の防災計画にも原発事故の具体的な対策はない。
担当者は「愛知県がどう受け止め、県の防災計画に反映させるか。それに連動させて、市も計画を見直したい」と話す。
県を通してメールで岐阜県の拡散予測を受け取った一宮市危機管理室の長谷川武室長は「滋賀県の予測などを踏まえ、最悪のケースを考えれば一宮に届くことも当然ある」と受け止める。
市の防災計画に原子力防災を盛り込むかどうかや、放射性セシウムによる土壌汚染や農林水産業への対策は「愛知県と相談しながら考える」と述べ、情報収集に努める考え。
犬山市は、県から四日に「岐阜県の被害予測では、犬山に放射性物質が届く恐れがある」と連絡を受けた。しかし具体的な資料を入手したのは十日。防災安全課の三輪雅仁課長は「まだ対策は取っていない。広域的な話なので、市単独ではなく、愛知県と協議していきたい」。
扶桑町や大口町も、県や近隣自治体と意見交換して対策を考える構え。必要なら町の防災計画に反映させる方向だ。
岐阜県の予測では、弱い北西の風と雨が重なった場合、一宮市、江南市、大口町、扶桑町が高濃度の放射性物質による被害を受けるとされる。放射性物質が福井県北部に滞留した後、弱い西風で飛散した場合には犬山市も被害区域に入るともされている。
年間の外部被ばく量二〇ミリシーベルトは、東京電力福島第一原発事故で住民を避難させた計画的避難区域の放射線量に相当する。
(安福晋一郎、添田隆典、金森篤史)
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