記者の目:大津・中2自殺=加藤明子(大津支局)
毎日新聞 2012年09月06日 00時12分
「自殺の練習をさせられていた」。いじめを受けていた大津市立中学2年の男子生徒が自殺した問題は、学校のアンケートに複数生徒がこう回答していたと7月4日に報じられて以降、各種メディアの集中的な報道が続いた。
◇いじめ「振り出し」から考えよう
昨年10月の自殺から9カ月後。遺族が市と同級生らを相手取り損害賠償を求めて提訴してから4カ月余り。真相解明に消極的だった市や県警は手のひらを返すように動き出した。7月10日、越直美市長が訴訟での和解方針を表明。翌11日、県警は学校と市教委を家宅捜索し、同26日から在校生らへの聞き取りを始めた。先月25日にはいじめの実態を再調査する市の第三者調査委員会が始動した。
こんな大人の右往左往ぶりを冷ややかに見つめる子どももいる。取材に応じた同校の女子生徒は「今さらじたばたしても遅い。手を打つなら自殺の前にやってほしかった」と話す。
自殺直後から取材してきた私にとって、この言葉は重い。当時、もっと多くの関係者から話を聞いていれば、より真相に迫れたかもしれない。