お昼ごはん
で、
ご飯をてんこ盛りに食べ、
おやつもしっかり食べた
後、
『森のイスキア』内にある温泉に入らせて頂き、
再び初女先生の横にちょこんと座って、
言葉もなく、
2人でボーっとしていると、
あと30分で帰る時間になってました。
最近の先生は、
殆どおむすびを握ることがないそうなので、
「おむすびは作ってもらえないのかぁ」と思っていた矢先、、、
突然、
先生がスタッフさんの耳元に手を当てて、
ひそひそ声で、
「おむすび握るから、準備して下さい」と。
その言葉が私の耳に伝わってきて、
あまりの嬉しさに、
大声で喜びたかったのですが、
心の中で、
大大万歳しながら、雄叫びを上げてました(*^_^*)
そして、
念願中の念願が叶い、
ここ数年内で、
一番食べたかった「命のおむすび」を、
この目で見て、
食べることができたんです。
お昼ごはんのお料理は、
ほぼスタッフさん達が作ってらっしゃいましたが、
(でも、先生は、ちゃんと味見をなさってます)
おむすびだけは、
全て先生が作られるそうです。
まず、
ややかために炊かれたご飯をささっとほぐして、
お茶碗によそって、
湿らせた木のまな板にポテッと置いて、
もう1回、同じ工程を繰り返し、
まな板上には、
ご飯のお山が2つできました。
それぞれに、
自家製の梅干しと、
昆布の佃煮をのせて、
水で手を濡らし、
粗塩をちょびっと指先につけたら、
「きゅっころ・きゅっころ」って、
軽やかに握られました。
先生曰く、
「お米が呼吸できるように、潰れないように、空気を含むように握るんですよ。生きてるからね」と。
まさに人間と一緒ですね。
梅干しの方には、
四角型の板海苔を全面にはり付けて、
昆布の方は、
金胡麻をまぶしつけて、
濡れタオルにのせられ、
出来上がりでした。
すぐにでも食べたかったのですが、
いったん冷まして、
おむすびを落ち着かせるために、
濡れタオルで覆われました。
すると、
私が、「自家製梅干し」を食べたそうにしていたのが伝わったのか、
「梅干し食べてみる?」と、
お料理を味見させて下さったように、
またまた掌にのせて下さいました。
躊躇せず、
即食べましたが、
ため息が出るほどの素朴な美味しさに、
またしても、じんわりきてました。。。
そして、
おむすびの粗熱がとれたところで、
金胡麻昆布むすびと、
海苔巻き梅干しむすびを、
「胡瓜と昆布の糠漬け」と共に、箱に入れて下さいました。
このおむすびは、
いつ食べるのがベストなのか聞いてみると、
スタッフさんからは、
「今はおなかいっぱいでしょうから、東京に着いてからでいいんじゃないですか。 でも、翌朝でも美味しいですよ」とおっしゃったのですが、
すかさず、
先生の口から出た言葉は、
「食べたい時に、食べたい場所で食べるのが一番ですよ」でした。
「食べたい時」となれば、
「今」だったので、
「では、今から頂きます」と伝え、
外に出て、
空の下で頂くことに。
スタッフさん達には、
「え、さっきあれだけ食べて、また食べるの?」って、
びっくりされましたが、
素直に「食べたい」と思ったので、
自分に正直に食べることにしました。
とはいえ、
いざ食べようとすると、
食べて、なくなるのがもったいなくて、
ぐだぐだしてたのですが、
あまりに海苔のいい香りに誘われて、
光沢のある海苔に見惚れながらも、
がぶっといきました。
先生のおっしゃる通り、
お米の粒が1つも潰れず、
でも、ぼろぼろに離れず、
適度な空気を含み、
ちゃんと呼吸してるかのようだったんです。
大げさかもしれませんが、
こんな風に感じるおむすびって、
これまで食べたことありません。
久々に、
食べものを食べて、
鳥肌が立ち、
背中がぞくぞくきてました。
真っ青な空を見上げながら、
時々、雲がゆるーく流れている姿を眺めては、
おむすびをじーっと見つめていると、
「やっぱり生きてて良かった。食や人に助けられてきたんだ」って、
妙にありがたみを感じ、
これが「食の原点」「美しいと感じる味」なのかもしれないと気づき、
少しの間、
呆然となっていたのですが、
ここで、
帰りのタクシーが到着したとのお呼びがかかり、
まるで夢の中から、
現実の世界に戻ってました。
帰り際、
先生のお部屋に入り、
「本当にありがとうございます。島根の黒豆を送りますね」等、
感謝の気持ちを伝えると、
「はい、どうぞ」と、
「おむすび用の自家製梅干し」と、
「笹餅」を手渡して下さったんです。
その時の先生の優しい目が、
私のおばあちゃんにそっくりで、
先生を見てられなかったのですが、
感激が頂点に達していたせいか、
自然と、
「この感動と、嬉しさと、幸せは、どうしたらいいんでしょう? 私、うまく言葉で伝えられないんです」って、
先生に尋ねてました。
すると、
先生から、
「そう思ったなら、同じように、大事な人に作ってあげたらどうですか」
とのお言葉が返ってきました。
確かに、
いつも美味しいものを食べると、
美味しいものを分かち合いたい人に食べてもらったり、
作ってあげたくなります。
だから、
東京に帰ってから、
頂いた梅干しで、
先生の「おむすび」を、
見よう見まねで作り、
※スタッフへのおむすび作り話は、後日ブログでご紹介致します。
また、
「梅干し」と「笹餅」を頂いた直後には、
私が購入しようとしていた本に、
先生が、筆ペンで何やら書きはじめて下さいました。
ゆーっくりゆっくり丁寧に。
そのお言葉は、
「食はいのち 生活の基本 佐藤初女」
でした。
一字一字から、
一生懸命さと、厚み・深み・温かみが感じられ、
思わず目を閉じて、
深々とお辞儀だけしていた私です。
その後、
玄関先で、
靴を履いて、
腰を上げると、
先生がおむすびを握るように、
私の手を両手で握って、
「他人を生かすことで、自分も生かされる」という言葉通り、
自分が救われて楽しく、嬉しく、幸せを感じると、
同じことを人にしてあげたくなるでしょ。
だから、あなたも今まで通り、
そうして人に喜ばれることをしてあげて下さいね。
でも、いつも大変でしょ、
たまには、ぼーっと休憩するんですよ。
また会いにいらしてね。
枝豆の糠漬けや、黒豆ご飯、用意しておくわね。
「食」に気づいて良かったね、「食」に気づいて良かったね。
との先生からの最高の贈り言葉を頂き、
目頭が熱くなったまま、
『森のイスキア』をあとにしました。
まだまだ書きたい心の内がありますが、
いつの日か、表現できる機会ができたら、
きちんとした言葉でお伝え致します。
私はこれからも、
この日の2時間を忘れず、
一日も早く、先生方への恩返しができるためにも、
自分を救ってくれた「食」と「人」と「家族」と「自分」、
「愛」と「命」と「運」と「縁」と「恩」を大切に、
どんな逆境が待ってようと、
食を通して、
自分がされて嬉しいことや、幸せに感じること・喜んでもらえることが
できるような、どんな料理でも盛り付けらるような器の大きな人間となり、
心のよりどころとなる心の料理を作り、伝え、食べ続け、
食に生きようと思います。
食に気づいて、本当に、良かったです。