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・第1章 始まりの『愚者』達 第2章 『運命の輪』と『審判』の日 第3章 嘆きの『恋人』
Sister's Diary (アルカナダイジェスト ※第1章~第3章)
■2117年7月30日
 明日から兄さんと旅行だ! 一緒に過ごすのは本当に久しぶりだ。
 数年前から兄さんはすっかりゲームをやらなくなってしまった。
 だから『アルカナオンライン特別テスターキャンペーン』のツアー旅行には、付き添ってもらえないと思っていた。
 けれど、兄さんは水泳部の予定を全部キャンセルしてくれた。
 ありがとう! いつも気にかけてくれて、ありがとう。これからもよろしくお願いします。

■2117年7月31日
 最低! 兄さんはデリカシーが無さすぎる!
 ……でも。思わず蹴ってしまって、ごめんなさい。私がドジしただけなのに、本当にごめんなさい。
 どうしてなんだろう? 兄さん相手だと、思わず手足が出てしまうのは……
 虐待を受けて育つと、身近な存在に対して暴力的になると言うけれど、私もそうなのだろうか?
 虐待と暴力の連鎖……そんなのは嫌だ。それに敬語も……
 治したい。色々なことを治したい。でもいつまで経っても治せない。
 あの辛い日々の中で、兄さんが私を守ってくれたことは、決して忘れてはいけない。
 けれど。暴力で躾られた敬語なんて……忘れ去ってしまいたい。
 いつかきっと。ちゃんと話せるようになるんだ。兄さんと普通に話せるようになるんだ。
 今の私では同じ場所に立てない。でも、いつか……きっと……

■8月1日 予言の日『運命の輪』クリア
 ――――へのへのもへじ
 よし。ちゃんと書けてる!
 まさかAO内でも、日記をつけることになるなんて……
 そもそも〝日記帳〟がNPC販売されているなんて……
 何故こうなってしまったかと言うと、私たちはログアウトできなくなってしまったのだ。
 そう! 大事件! ……いや、それはちょっと言いすぎかも?
 そもそもデスゲームじゃないもんね。というか、あれは都市伝説だし……
 とにかく。『外部からの救助を待とう』というのが、私と兄さんの結論だ。
 だからそれまではAOを思う存分に楽しもうと思う。ゲーム内では兄さんと別行動だけど、ちゃんと連絡は取り合える。私としては、兄さんと離れ離れにならないのなら、何も問題ないのである。
 ……でも残念なことが一つだけ。
 ログアウト不可のせいか、今はログインもできないようだ。
 これでは《円卓》のメンバーが全員揃わない。それが残念。
 結局揃ったのは、ヴィヴィさん、エンドルフさん、マーリンさん、ガラハドさん、ランスロットさん、フリスコさん、そして私。――以上七名だけ。
 十二名全員が揃っていればなぁ……本当に残念だ。

■8月2日
 昨日のスタートダッシュは、私のせいで少し遅れてしまった。
 ……いや、鮫を絞め殺していた兄さんのせい? ……やめよ。ただの八つ当たりだしね。
 ところが! その遅れも今日で取り戻せた。
 やっぱりヴィヴィさんはすごい! ――あれが〝思考操作〟……本当にすごい。
 ……はぁ。私もできるようになりたいな。
 ちょっと試してみたけど、全然ダメだった。
 とりあえず実戦で試すのはもう止そう……ランスロットさんが死にかけたし。
 そうそう。ランスロットさんといえば、ちょっと兄さんと似ているかもしれない。……エッチなところとか、デリカシーがないところとか。そういうダメな所だけだけど……
 初日は私やヴィヴィさんを見て騒いでいたし、今日はマーリンさんの胸を凝視して、ガラハドさんに斬られそうになっていたし……悪い人ではないんだけど、うーん……私は苦手だ。
 正直にそれをヴィヴィさんに伝えたら、ヴィヴィさんは苦笑いしていた。どうやらヴィヴィさんも苦手らしい。
 ちなみにマーリンさんは『若い子はあんなものよ。上手く利用しなくちゃ』と笑っていた。
 あれが大人の余裕……かっこいい。私だって、胸があれば! ……あれば……もう寝よう。

■8月3日
 今日は特に疲れた。とにかく狩って狩って狩り続けたせいだ。
 でも、そのおかげで〝亜人の森〟とは一旦さよならだ。
 やっぱり《円卓》はすごい! これで頭一つは抜け出せたはず。この調子でトップギルドの地位を築きたいものだ! ……早くギルドストーンが発見されないかな。
 それで今後の私たちについてだけど。ヴィヴィさんの案で、明日からは拠点を〝帝都アスガルド〟から〝魔法都市グレイプニル〟に移すことになった。
『アルカナクエスト達成のためにも、南砂漠の塔を攻略しましょう』と、ヴィヴィさんは語っていたけれど、本当のところは私とマーリンさんの事情も考慮してくれたのだと思う。
 魔女や魔術士が使う"魔法系スキル〟には、"触媒アイテム〟が必要だ。
 つまり〈体内触媒〉カードを手にいれるまでは、NPCからそれらを買う必要があるのだ。そして魔法都市のほうが、そういったアイテムは充実しているらしい。
 下位触媒ならば帝都でも手に入るのだけれど、中位・上位触媒はそうもいかない。
 《円卓》の火力役(Attacker)は、〈魔女〉である私とマーリンさんだ。
 いざという時に、触媒切れで魔法が撃てない事態だけは、絶対にあってはいけない。
 ……肝に銘じておかないと、私とマーリンさんが生命線なのだと。

■8月4日
 うぅ……〝トカゲ草原〟はきつかった。あんなに湧きがいいなんて……初めてデスペナをもらってしまった。もうトカゲなんて大嫌いだ!
 でも、デスペナの分を差し引いてもトカゲは美味しかった。
 おかげで皆のレベルも上がり、ようやく私たちも〝南砂漠の塔〟に挑戦できるようになった。まさにトカゲ様々である……大嫌いだけどね!
 そして。夕方から先程まで『太陽』の塔に挑戦したわけだけど……すごかった。
 こんなに作り込まれたVRMMO-RPGは、AOが世界で初めてなんじゃないだろうか?
 ドキドキ・ワクワク――本当にそんな感じだった。楽しい! 思わず兄さんに個別通話を繋いでしまい、長話してしまうほど楽しかった! ……話していたのは、ほとんど私だった気がするけれど。
 それでは兄さん。おやすみなさい。

■8月5日
 ……半魚ZIN……どうしよう。

■8月6日
 魔法都市では、私たちはある宿屋を拠点にしている。ツインルームが二部屋、大部屋が一部屋、合計三部屋だけの小さな宿屋だ。
 部屋割りは、ヴィヴィさん&私、ガラハドさん&マーリンさん、エンドルフさん&ランスロットさん&フリスコさんだ。
 ちなみに、ガラハドさんとマーリンさんはリアルで夫婦なのだ。
『寡黙なガラハドさんが、妖艶なマーリンさんをどうやって口説いたのか?』
 私とヴィヴィさんの今夜の話題はそれだった。
 そして一昨日の夜の話題は……兄さんだった。私が兄さんのことばかり話していたらしい。
 ヴィヴィさんに――『お兄さんのことが本当に好きなのね』と言われるまで、兄さんのことばかり話している自分に、まったく気付かなかったのだ。……うぅ、恥ずかしい。
 そして! そんな恥ずかしい思いまでしたというのに! ……半魚ZIN……どうしよう。
 今更、『昨日アルカナ掲示板で騒ぎになってた〝半魚ZIN〟が、私の兄なんです』なんて絶対に言えない。
 だいたい兄さんは間違ってる!
『ゲーム内の名前は、お酒の名前からとったことにするつもりだ』とか言ってたくせに、そもそもスペルが間違ってる!
 お酒の"ジン〟は、"ZIN〟じゃなくて"GIN〟なのに……うぅ、兄さんのバカ……

■8月7日
 AOでは六人PT(通称:ウィズPT)が基本だ。
 よって私たちのPTは特殊なのだ。なんせPT上限は六人なのに、常に七人で行動しているのだから。
 でも、これまでのところ上手くやれている。
 これもヴィヴィさんが機転を利かせてくれたおかげだ。こういった小さな問題も、みんなが気付かない間にそれとなく解決してしまう。本当にすごい人なのだ。
 いまやヴィヴィさんは、私の憧れだ。スタイルもいいしね! ……羨ましい。チャンスがあれば一緒にお風呂だって……ふっふっふ。
 ちなみにヴィヴィさんの機転とは、『私とマーリンさんを中心に育てていく』という案だ。
 前衛は騎士三人(ヴィヴィさん、ランスロットさん、ガラハドさん)で固定。
 後衛も司祭のエンドルフさんと、狩人のフリスコさんは固定。
 残り1枠に、私かマーリンさんが入る。そして余った方も一緒に狩りをする。
 つまり――"PT六人+魔女一人〟という編成だ。
 そして、私たちのメイン火力は〈魔女〉の魔法スキルだ!
 もしもPT内の魔女がモブを倒せば経験値はPTで等分されるが、PT外の魔女がモブを倒した場合は、その魔女に多くの経験値が入る。
 つまりPT外の魔女の方が、レベルが上がりやすいのだ。
 現在私の〈魔女〉カードレベルは"31〟で、マーリンさんは"29〟だ
 明日からは私がPT内で、マーリンさんがPT外になる予定だ。
『……明日からは私がPT外なのね……』
 マーリンさんの愚痴が耳から離れない。そうですよね……PT外で狩りするのってすごく神経使いますよね……
 経験値がたくさん入るのはうれしいんだけど、PT内と違い、立ち回りとか、全体支援をもらえないとか、色々と大変なのだ。
 マーリンさん、頑張って下さい。私はちょっぴり楽します。

■8月8日
 衝撃の事実! ヴィヴィさんって怖い人なのかもしれない……
 詳細は明日にしよう。今日はドキドキして手が震えてるから。
 ……どっちが、どっちを……なんだろう?
 そう想像してしまうのは、女の子としては仕方のないことだと思うんです。もしもこれが兄さんだったら……ゴクリ。

■8月9日
 ヴィヴィさんとエンドルフさんは幼馴染だという。
 そして、かっこいいヴィヴィさんと、子供っぽいエンドルフさんの組み合わせは、それはそれでお似合いだなんて思っていたら……
『エンドルフ? あれはホモセクシャルよ』
 昨夜のヴィヴィさん曰く、そういう事らしい。
『……ら、ランスロットさんとフリスコさんと同部屋ですけど、大丈夫なんですか?』
 私がそう聞くと、ヴィヴィさんはこう言った。
『フリスコは好みじゃないだろうから、大丈夫よ』
『ランスロットさんは!?』
『……ランスロットはかなり飢えてるようだし、別にいいんじゃないかしら?』
 ヴィヴィさんは笑いながら言っていたが、目が笑っていなかった。
 初日の騒ぎをまだ根に持っているみたいだ……女って怖い。私が言うのもおかしいけど……
 そして、日記を書いていて気付いたことがある。
 ランスロットさんと兄さんって、ダメなところがどこか似ている。
 エンドルフさんの好みのタイプはランスロットさん。
 それで兄さんはどこか似ていて……つまり……
 ……どっちが受けで、どっちが攻めるんだろう……? ――キャー!!

■8月10日
 エンドルフさんとは、なんだか話しやすくなった。
 ……ランスロットさんとは、ちょっと目を合わせにくくなった。
 いつも話しかけてくるランスロットさんが、そのせいで少し落ち込んでしまった。
 ごめんなさい。色々と想像してしまって……
 そして、それを見ていたヴィヴィさんが、楽しそうに笑っていたのを私は見逃さなかった。
 策士すぎますよ……ヴィヴィさん……

■8月11日
 むぅ。。。
 今日はちょっと日記を書ける気分じゃないので、お休み!
 また明日! ふんだ!

■8月12日
 やっぱり納得いかない。
 でも。ログアウト不可という異常事態、外部からの救助活動も不明、意味深なゲーム内アナウンス、そしてアルカナクエスト……
 私も頭では分かっているんだ。協力し合わないといけない状況だって。
 でも、それでも! やっぱり《漆黒の騎士団》と手を組むのは嫌!
 ヴィヴィさんやマーリンさんに説得されたし、納得しておくけど……やっぱり嫌だな……

■8月13日
 昨日とはうって変わって、今日の私はご機嫌だ。
 何故かというと――そう! 遂に《円卓》ギルド正式結成!
 ようやく百万ゴールド貯まったのだ! そして私たちが手に入れたのは……
 虹色に煌くギルドストーン! 二日前に錬金術士が練成に成功したというレアアイテム!
『絆よ! 何よりも偉大なる力となれ!』
 ふっふっふ……うれしい!

■8月14日
 今日は一日中会議でした。なので狩りはしていません。
 『太陽』の塔、攻略作戦を検討するためです。
 とりあえず参加するギルドの中で、中心となる七つのギルドが決まった。
 《円卓》、《Big Moon Shadow》、《クルセイダーズ》
 《戦国絵巻》、《魔女巫女同盟》、《沈黙の料理人》、《漆黒の騎士団》
 ……六つでいいのに!

■8月15日 お盆
 久しぶりに兄さんと個別通話した。元気そうでよかった!
 せっかく良い気分なのに、明日も私たちは会議らしい。……憂鬱だ。
 だって全然話が進まないんだもん! 会議より狩りしたいなー。

■8月16日
 二日前と違い、今日の会議はスムーズに進んだのでビックリ。
『中心となるギルドだけで話し合ったからよ』
 ヴィヴィさん曰く、そういう事らしい。なるほど。
 おかげで午後からは狩り! 今日は久しぶりに"トカゲ草原〟でした。……へっへっへ~トカゲなんてもう余裕だもんね!

■8月17日
 今朝ヴィヴィさんが呟いてた『白い夢』って何だろう?
『"白い夢〟を見なかった?』
 朝一番にそう聞かれたけど、私は何も見ていない。……うーん、気になる。

■8月18日 三階層クリア
 今日から『太陽』の塔への挑戦が始まった。
 今朝、まずは全ギルドの代表が集まり、それぞれが作成済みの地図を交換し合った。
 昨日の時点では、私たち《円卓》は二階層までしか到達できていなかった。
 だが悔しいことに、すでに三階層まで到達していたギルドがいくつかあったようだ。
 新たな地図を手に入れたヴィヴィさんが私たちの元へと戻ってきた時、薄くて綺麗な唇がギュっと噛み締められていた。その後方には《漆黒の騎士団》のマスターが……遠目からこちらを嘲笑していた。
 ……悔しい。彼らは三階層に到達していたんだ! つまり私たちは《漆黒》に負けていたんだ……!
 この【アルカナオンライン】をプレイする以前、私たち《円卓》は、【ミスティックオンライン】という別のゲームで《漆黒》に何度も苦渋を舐めさせられてきた。
 はっきり言って、彼らは強いし、上手い……そして姑息だ。
 油断のならない相手。因縁の相手。絶対に負けたくないライバル。
 だからものすごく火がついた。そう! 心に火がついたのだ!
『《漆黒》よりも先に、最上層へ到達してやるのだ!』
 そして、この意気込みは私だけでは無かったらしい。
 今日の私たちは今まで以上に集中していた。なかでもフリスコさんはいつになく研ぎ澄まされていて、話しかけることすら躊躇われたほどだ。
 そのおかげもあって、私たちは"転移トラップ〟の多かった三階層の探索をほぼ終了し、四階層への階段も発見できた。
 フリスコさんは本当に冴えていた! 全ての罠を事前に察知し、解除も全て成功したのだ。本当にすごい! 間違いなく今日のMVPである。
 結局、この地図情報は今夜すべての参加ギルドに共有されてしまったわけだけど、《漆黒》に対しての借りは返せた気がする。とりあえず、今日はそれだけで満足! 明日も頑張ろう!

■8月19日 四階層クリア
 今のところ攻略作戦は順調だ。なぜなら、今日も何とか階層クリアとなったからだ。
 五階層への活路を開いたのは、《沈黙の料理人》のギルドマスターでした。
 四階層は、"トラップ〟が三階層より少なく、夕方頃には参加ギルドのほとんどが四階層の探索をほぼ終了していた。
 そして四階層の地図上で『Unkown』となっていたのは、大きな通路ただ一本だけ……
 この通路の探索が後回しにされていたのには、もちろん理由がある。あるモブがいたのだ。
 ――百眼触手ひゃくがんしょくしゅ
 その触手を全面に広げて通路を塞ぎ、防御に徹するモブ。触手が毛玉のように集まったモブのため、本体がないに等しい。そしてそれぞれの触手の先にある眼でこちらの動きを常に把握するため、なかなか決定打を与えられない。たとえ触手を切り落としたり、焼き尽くしたとしても、しばらくするとすぐに再生してしまう。本当に厄介なモブだった。
『全ての触手を一気に殲滅すればいい』
 このモブの攻略方法なんて、みんな分かっていたけれど、誰もそれを実行できずにいた。
 なぜなら、通路では大きく横に広がることができない。
 つまり大人数での囲い込みができず、数の暴力で一気に殲滅するのは不可能な状況だったのだ。
 けれど! この膠着を解いた強者がいた! それが《沈黙の料理人》のギルドマスターである『セガール』さんだ。
 風の噂で『《沈黙の料理人》のギルドマスターが強い』と聞いたことがあったのだけれど、あんなに強い人がいるなんて驚きだ。――そして、やっぱり"思考操作〟を使える人だった。
 ヴィヴィさんとどっちが強いのだろう? ……うーん、考えても仕方のないことだよね。二人はあまりに対極すぎて比較ができないもの。
 ヴィヴィさんが"城壁〟だとすれば、セガールさんは"竜巻〟だった。
 触手の群れへと突き進み、思考操作で〈パリィ〉を自在に操りながら、その"大包丁〟で触手を弾き、切り落とす。一瞬の出来事だった。
 それまでの膠着状態が何だったのかと思ってしまう程、簡単に終わらせてしまった。
 ……やっぱり私も"思考操作〟を身につけたい!

■8月20日 五階層クリア
 今日は多くの脱落PTがでた。
 私たちを含め、中心となる七つのトップギルドは何とか探索できたけれど、その他の中堅ギルドはほとんど全滅してしまったのだ。
 これは、五階層がモブの大PTばかり闊歩する危険ゾーンだったためだ。
『……どこに行ってもモンスターハウスなのでは?』
 思わずそんなツッコミを入れたくなるほどで――テラーバット、ファイヤハウンド、アイスハウンド、ファイヤスケルトン、リザード種、ピクシー、等々。
 最低でも職業カードレベルが"35〟はないと、とてもじゃないが生き残れない階層だった。
 そして、今夜の代表者会議は紛糾したらしい。
 中堅ギルドからの『物資がもたない! 塔の攻略を一旦中止すべきだ!』という意見と、トップギルドからの『このまま継続すべきだ!』という意見に分かれ、議論は平行線となってしまったという。
 先ほど宿屋に帰ってきたばかりのヴィヴィさんが、疲れた顔でそう教えてくれた。
 今は隣のベッドでぐっすりに眠っている。
 ヴィヴィさんの性格からして、五階層の探索よりも、きっと代表者会議のほうが疲れたんだろう。無防備な寝姿にちょっとドキドキしてしまう。同じ女性なのに、そう思ってしまうほどヴィヴィさんは綺麗だ。
 こんなお姉さんがいたらいいのになぁ……いやダメだ! きっと兄さんがよくないことをする。
 ……えっと、それで明日についてだけれど。
 とりあえず明日も、塔の攻略を継続することとなったとの事だ。
 五階層の全域探索は完了できなかったけれど、実は《クルセイダーズ》が六階層への階段を発見していたらしい。もしも階段を発見できていなければ、塔の攻略は一時中止されていたという。
 とりあえず明日の予定はこうだ。
『五階層の全域探索を放棄して、とにかく六階層を目指す』
 そして六階層の状況を確認した上で、『太陽』の塔攻略を今後も継続するか? もう一度話し合うとのことだ。
 私としては、このまま継続したいな……

■8月21日 『太陽』クリア
 六階層には『太陽の守護者』が鎮座していた。ボスだ。
 円形広場の中心に玉座が一つ。炎を纏いし人型のモブが鎮座していた。
 仮面をつけていた。太陽を模した仮面だ。
 私たちが近づくと、"守護者〟はゆっくりと炎を吐きながら立ち上がった。
 吐き出された炎からファイヤスケルトン、ファイヤハウンドが生まれでて、一気に私たちに襲いかかってくる。
 さらに、その身に纏いし炎からは、各種様々な火魔法が飛んできた。
 まるで空母のようだった。
 そして――それらとの激しい戦闘の最中、『太陽の守護者』まで到達できたのは、《Big Moon Shadow》、《クルセイダーズ》、《漆黒の騎士団》だった。
『しまった!』
 気付いた時には手遅れだった。
 私たち《円卓》や《沈黙の料理人》、それに《戦国絵巻》や《魔女巫女同盟》は、絶え間なく生まれでてくる雑魚モブを、いつの間にか押し付けられてしまっていた。
 悔しい……今、こうして日記を書いてる時ですら、悔しくてたまらない。隣のベッドでしきりに寝返りをうっているヴィヴィさんも、きっと悔しさで寝付けないんだろう。
 私たちは"上手く利用された〟だけだったのだから……
 もちろん。初めからそんなことは想定済みだった。だからこそ私たちも"上手く利用してやる〟つもりだったのだ。けれど……
 私たちは、ただ見ていることしかできなかったんだ。『太陽の守護者』が倒され、そのドロップアイテムのルート争いへの参加すら、許されなかったのだ。
 ……悔しい。
 一つだけ救いがあるとするならば、ドロップアイテムをルートしたのが《漆黒》では無かったことだろう。どうやら《BMS》がルートしたようだ。
 その後、両者がボスドロップのことで揉めていたようだが、もはや私たちには関係の無いことだ。
 これでアルカナクエスト『太陽』は達成されたが、"南砂漠の塔〟は、まだ五つ残っている。――『月』『星』『力』『魔術士』『吊られた男』
 次は……私たちだけで攻略してやるんだ!

■8月22日
 今朝、《沈黙の料理人》のギルドマスターがヴィヴィさんを訪ねてきた。
 その時――『白い夢』という言葉が聞こえた気がする。……ヴィヴィさんとセガールさんは、何やら共通点をもっているらしい。
 すごく興味があったので、何を話していたのか聞いてみたのだけれど――
『まだ……私もよく分からないのよ。あちらは何か知っているようだけど……』
 ヴィヴィさんは軽く首を振るだけで、それ以上のことは教えてくれなかった。……うーん、やっぱり気になる。

■8月23日
 現在、私たちは『太陽』の塔の五階層で狩りをしている。
『五階層を全域探索できる強さが無ければ、私たちだけで他の塔を攻略するなんて絶対に不可能よ』
 このヴィヴィさんの言葉を否定できるだけの強さを、私たちは手に入れなければならない。

■8月24日
 うぅ……デスペナ八回……悔しい!
 でも経験値は美味しいもんね! うまうま。

■8月25日
 やった! "ダマスカス鋼・インゴット〟が出た!
 ダマスカス鋼はまだ製造レシピが見つかっていない。
 よって、今のところ南砂漠の塔でしか入手できないレアアイテムなのだ!
 これでヴィヴィさんの盾をダマスカス鋼製にできる。そうしたら、シルバー製の盾はガラハドさんに回して、ランスロットさんは……そのままで。
 それで前衛の防御があがるから、後衛の私たちも楽になって。
 ……とりあえず、ランスロットさん以外のデスペナは減りそう。やったね!
 ごめんなさいランスロットさん。傷ついた体は、きっとエンドルフさんが癒してくれるはずですので、それで許して下さい……色々な意味で癒されると思いますが……ふふふ。

■8月26日
 私は見てしまった。
 ヴィヴィさんがベッドの上で、ダマスカス鋼製の盾を抱えながら、うれしそうにゴロゴロと転がっていたのを……か、かわいい!

■8月27日
 ヴィヴィさんが絶好調! おかげで五階層での狩りも、だいぶ形になってきた。
 この人は本当に強い。そしてかっこいい。……ふっふっふ、でも実はかわいい人なのだ!

■8月28日
 みんな強くなった。ヴィヴィさんに引っ張られながら、本当に私たちは強くなれた。
『今日、私たちは五階層の全域探索を完了しました』
 今日の日記はこれだけでいい。
 みんな、おやすみなさい。……それと兄さんも。

■8月29日
 今日はフリスコさんが不在だったので、トカゲ草原の奥地で狩りをした。いわゆる激湧きポイントだ。……うーん、六人PTじゃちょっと余裕すぎたかも。
 ちなみにフリスコさん不在の理由は、五階層で手に入ったアイテムを"帝都アスガルド〟の露店広場で売りに出すためなのと、〈弓〉カードを〈森人流弓術〉カードに変化させるために"港町スキーズ〟に行くためだ。
 フリスコさんだけでこれらの用事をすませて、明日の夕方には合流する予定だ。
 狩人であるフリスコさんがいないだけで、いける狩場が一気に減ってしまう。
 罠解除技能持ちユーザーは本当に貴重な存在なんだと、改めて実感する一日だった。
 フリスコさん、いつもありがとうございます。
 それと明日は、私たちは"亜人の森〟でオークキングと戦ってみる予定だ。ものすごく強いらしいけど、どんなボスなのかな~。楽しみ!

■8月30日 豚王戦
 兄さんの馬鹿! 変態!
 どうしてあんな姿でいきなり現れるんですか!
 ……どうしよう……本当にどうしよう。
 今更絶対に言えない。
『オークキングと下着一枚で打ち合った一刀流侍が、私の兄なんです』
『あの半魚ZINが、私の兄なんです』
 こんなこと絶対に言えない……うぅ、どうしよう。
 でも、助けてくれてありがとうございます。
 そして"思考操作〟――兄さんが使えるのなら、私にだってできるはず!
 もう一度がんばってみよう。絶対に兄さんに追いついてやるのだ。そう、いつかきっと。

■8月31日 予言の日『審判』クリア
 薄々は気付いていたんだ。これは今までにない異常事態ではないかと。
 そして、いつか……"デスゲーム〟化するんではないかと。
 みんな気付いていたんだ。心の奥底で。
 そして、それが実現されようとしている。
 今日の予言――"五十六の夜を越えた日〟に、恐らくこのゲームはデスゲーム化するだろう。
 デスゲーム化後に、何が起きるのかはまだ分からない。けれど、これだけは心に決めておくのだ。
『絶対に兄さんと一緒に生き残ってみせる』
 兄さんだけが、私のただ唯一の人なのだから……
 そして今夜兄さんと話した時、あの人はこう言っていた。
『デスゲームが始まるまでは、二人別れて、それぞれで信頼できる仲間を探すべきだ』
 私にならできると言っていたのだ。
 この兄さんの期待にこたえねばならない。そう……あの頃とは違うのだ。私だって成長したのだ。
 決して忘れてはいけない。今の私は、兄さんがいてくれるからこそ、存在していることを。
 だからがんばろう! 兄さんの頼りになれるよう、がんばるのだ。
 ……でもですよ? 一緒にいてほしいとお願いする妹の願いを断ったわけですから、もしも兄さんが『やっぱりオレ一人じゃ無理だった』なんて泣きついてきた時には、色々と要求しますよ? 分かってますか? 兄さん。

■9月1日
 へぇ……貧乳ロリ魔女ですか。面白いことを言う方がいるんですね。……へぇ、そうですか。
 そういえば、昨日からPK行為が解禁されたんですよね。
 街中や街周辺ではPKできないそうですが。具体的にPKシステムがどういったものなのか、一度試しておくべきだと、今日の私は思ったわけです。他意はありませんよ? ええ、本当に。

■9月2日
 三十一日の予言以降、"人〟としての感覚がリアルになってしまった。
 痛覚、食事、睡眠はもちろん、ちょっとした体臭だとか、そんな色々なことまで……。
 つまり! 私たち女性陣にとって、お風呂はかかせない存在となってしまったのだ!
 はぁ……やっぱりお風呂は気持ちいい! どこかに浮かべるアヒル売ってないかな~。

■9月3日
 予言の日以降、戦闘職から生産職に変わるユーザーが増えている。
 今日も顔見知りの中堅ギルドが、『これからは生産職ギルドとしてやっていくのでよろしく』と挨拶にきた。
 気持ちは分かる。私だって不安がないと言えば嘘になる。だから戦闘職から生産職になることを否定するつもりは一切ないのだ。
 でも! はっきり言っていい加減にしてほしい!
 自分で言うのもおかしいけれど、そりゃ《円卓》はトップギルドとして有名ですよ?
 それにうちのマスターは飛びっきりの美人ですよ?
 だから贔屓にしてもらえると、生産職として成功しやすいという事情も分かるし、そのために挨拶回りしている事情も理解できる。挨拶にくる人が男性ばかりだという事情も分からないでもない。
 でも、それでもだ! 『朝から何組も何組も挨拶にくるな!』と言いたい。
 おかげで今日も昨日も、狩りが午後からになってしまった。
 そもそも今更生産職になろうだなんて、なんだかかっこよくない!

■9月4日
 このゲームには色々な生活雑貨アイテムが存在する。
 例えば、この"日記帳〟アイテムがそうだし、後は"手紙〟アイテムなんてものもある。
 そして……今日もヴィヴィさんはかっこよかった!
『話が長い。手紙で』
 そう、たったこの一言で終わらせたのだ。
 今日もノコノコと挨拶にやってきた人たちに対して、この一言で帰らせたのだ。おかげでようやく腰を据えて"南砂漠の塔〟へ挑戦できそうだ。
 さすが私たちのヴィヴィさん! 今日もかっこよかったです。

■9月5日 『月』達成
 アルカナクエスト『月』が達成されました。
 これは、私たちが夕飯を食べている時のことだった。
 ここ数日の遅れを気にしていただけに、みんな黙ってしまった。危機感は募るばかりだ。デスゲーム化するのは、九月二十六日か、十月二十六日だろうと言われている。
 どちらなのか? まだ確定していないが、いずれにせよ残り時間が少ないということだけは確かだ。
 だから。それまでにせめて一つでいいから、アルカナクエストを私たち《円卓》だけでクリアしておきたいのだ。私たちにはまだ、何も実績がないのだから……

■9月6日
 今日から南砂漠の塔への挑戦が始まった。もちろん《円卓》単独でだ。
 私たちが挑戦する塔は――『吊られた男』!
 この塔には不死系モブが多いようだ。
 一階層はゾンビ系モブ、スケルトン系モブばかりだった。
 すでに二階層への階段は発見済みだが、一階層の全域探索を終えてから二階層へ向う予定だ。
『確実に一歩一歩進もう。時間が残り少ないのは確かだが、焦ってはいけない』
 今夜の会議で、いつも寡黙なガラハドさんが、渋い声でそう進言した。
 確かに、今日の私たちはちょっと勇み足だった気がする。小さなミスも多かった。
 だからガラハドさんの進言のおかげで、私たちは『二階層に向うのは、ちゃんと一階層の全域探索を終えてからにしよう』という結論を出すことができた。
 ガラハドさんありがとうございます。本当に頼もしいです!
 寡黙なガラハドさんに、妖艶なマーリンさん。二人がリアルで夫婦だと聞かされた時は、すごく違和感があったけれど、今なら分かる。
 お互いをすごく信頼し合っていて、とてもお似合いの二人なのだ。
 ……羨ましいなぁ。そんな人とずっと一緒にいられるなんて……

■9月7日
 一階層の全域探索が終わり、今日は二階層にも挑戦できた。
 まだ三階層への階段は発見できていないけれど、それも時間の問題だろう。
 そして、不死系モブとの戦いが続く私たちにとって、お風呂は絶対にかかせない存在だ!
 さらにさらに! 狩りや会議が長引くと、別々にお風呂を使っていては睡眠時間が減ってしまい、明日の狩りに支障がでるかもしれないのだ!
 そう! この完璧な理論武装により、遂に私は『念願のヴィヴィさんと一緒のお風呂を手に入れたぞ~』なのだ!
 お風呂に入る前の私。
『おっふっろ~ おっふっろ~ ヴィヴィさんとお風呂~!』
 お風呂から出た後の私。
『神様は不条理だ! 天はヴィヴィさんの胸に、見事な二物を与えてしまったのだ!』
 ……うぅ、神様は残酷だ。
 あんなに細くて、あんなに綺麗だというのに。
 さらにその胸には、充分すぎるほどの"二物〟があるなんて……
 どちらかというと、ヴィヴィさんは私寄りだと信じていたのに! マーリンさん寄りだとか……着やせするタイプだとか卑怯ですよ!
『……マーリンほど大きくないわよ』なんて言われても、全然慰めになってないです! ……でも、すっごく柔らかかったなぁ。またチャンスがあったら触るんだ……へっへっへ。

■9月8日
 うーん、見つからない……

■9月9日
 現在、私たちは『吊られた男』の塔を攻略中だ。
 そして、二階層で行き詰まってしまった。
 すでに二階層の全域探索は完了しているのに、見つからないのだ……三階層への階段が。
 どこかで何かを見落としているのは確かだ。でもそれが何か分からない。時間と共に、フラストレーションが溜まる。
 もしも時間に余裕があったなら、この状況も楽しめたのだろう。
 でも、今は時間が無いのだ。
 何としても、"五十六の夜を越えた日〟までに『吊られた男』の塔をクリアしたい。
 デスゲーム化する前に、確固たる名声を。実績を。そしてボスドロップを手に入れておきたい。

■9月10日
 三階層への階段が見つからない。
 そのせいで私たちは大きな焦燥感にかられている。
 でも、それを誰かにぶつけるような事はしない。
 ダンジョン探索の花形である〈狩人〉――フリスコさんに八つ当たりするような人など、この《円卓》にはいないのだ。
 この仮想世界において、私はいま、間違いなく信頼できる人たちに囲まれている。
 階段は見つからないけれど、今日見つけたこの気持ちは、何よりも大切なものとなるだろう。
 兄さんの言っていたことが少し分かった気がする。
 そちらどうですか? 兄さんは信頼できる誰かを見つけましたか?

■9月11日
 ようやく見つかった! 三階層への階段が!
『なんだ、そんな簡単なことだったんだ』
 そう言いたくなるような仕掛けだった。
 ダンジョン探索ゲームでは使い古されたネタだ。
『わざと"転移トラップ〟に引っ掛かればいい。その転移先に三階層の階段がある』
 そんな簡単な仕掛けだったのだ。
 けれども。なかなかこれに気付けなかったのは、この世界では、私たちはリアルの生身と遜色のない姿だからだろう。
 そのため、"トラップ〟に引っ掛かるという行為自体に、無意識的に恐怖を感じてしまっていたのだ。
 もしもこれが画面越しに見るゲームの世界であれば、そんな恐怖など感じず。こんな仕掛けなんてすぐに解けたはずだったのだ。
 ――忘れてはいけない。
 そう……これは"ゲーム〟なのだ! 現実世界ではなく、仮想世界なのだ!
 たとえデスゲームが始まろうとも、その根底にあるのは"ゲーム〟なのだ。
 この考え方こそが、この仮想世界をクリアする最大のヒントとなる気がする……

■9月12日
 三階層は厄介だ。モブとの戦闘よりも、トラップが多い。
 常に集中力を切らさないフリスコさんの精神力には、本当に感服させられる。
『罠解除に時間がかかってしまって、すまない』
 今夜の会議で、なかなか進まない三階層の探索ことを謝っていたけれど、誰もフリスコさんのせいだなんて思ってないですよ?
 どうか自信を持って下さい。

■9月13日
 一歩一歩確実に。焦らずいこう。
 まだ三階層だけど、私たちは着実に進んでいるのだから……

■9月14日 『恋人』クリア
 ……ごめんなさい。もう限界です。
 さすがの私もこれ以上は我慢できません。
 何のことか分かってますか?
 もちろん三階層のことじゃありませんよ?
 ……うぅ、兄さんのバカ。
 なんで、どうして、アルカナ掲示板で"あんなこと〟になってるんですか!
 アルカナクエスト『恋人』をクリアしたのに、あんな騒ぎになるなんて、兄さんぐらいですよ……普通ならもっと違う騒がれ方されるはずなのに……兄さんのバカ! 半魚ZIN!
 ひとまず。とっても申し訳ないのですが、少しの間だけ兄さんとは距離をとらせてもらいますからね? いいですか。街中で見かけても、安易に声をかけないで下さいよ?
 ……まぁ、兄さんがどうしても、どうしても! 私と一緒にいたいと言うのなら、少しは考えてあげますけど……
 ……ところで。さきほど聞くのを忘れましたが……『薙刀巫女』って誰ですか? 今度ゆっくり聞かせて下さいね、兄さん。

■9月15日
 ――to be continued. ArcanaOnline Chapter.4


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