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水引き陸地戻る やっと被災家屋解体 石巻・長面、尾崎地区
 | 震災で地盤沈下した上に津波が浸水した長面地区の田園地帯を北東方向に望む。仮堤防の建設で徐々に水が引き始めた=7日午前5時すぎ |
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 | がれきが散在する海底を泳ぐハゼ。さまざまな魚が戻り、震災前の生態系を取り戻しつつある=3日 |
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東日本大震災の津波で巨大な海原となった宮城県石巻市の長面浦が、日を追うごとに元の浦海に戻りつつある。浦を囲んでいた長面、尾崎両地区から徐々に水が引き始め、手付かずのままだった家屋の解体も進む。かつて「海の揺り籠」と呼ばれた浦を歩き、海に潜った。(写真部・及川圭一、庄子徳通)
今月初め、長面地区では水没した集落や農地の海水を仮堤防から流し出す作業が進んでいた。先月上旬まで一面海水に覆われたままだった風景から一変。田園地帯からは農機具やハウスの残骸が赤さびだらけで姿を現した。 水が引けば作業もはかどる。重機が出入りする道ができ、長面地区の全151戸と尾崎地区59戸の一部が瞬く間に取り壊された。 長面浦は川と海と山が気まぐれに造ったような小さな内海だ。周囲8キロを囲む広葉樹の山々からは豊かな清水が流れ込む。震災はこの自然と全住民約700人の生活を一瞬にして奪った。水が引くことで、その痕跡が今になって現れ、住居の解体も進んでいくのは何とも皮肉といえる。 尾崎地区に家を構えて14代目という浜畑吉文さん(63)は「今、完全に古里が消滅するかどうかという瀬戸際なんだろう。住民がばらばらになっても、みんなのつながりだけは守りたい」と目を潤ませて話した。 陸の「復興の出発点」を見届けた後、浦の海中はどんな様子なのだろうと潜ってみた。至る所にがれきが散乱。洗濯機にはカキやフジツボがへばり付き、その周囲をメジナの稚魚が悠々と群れをなしていた。 深さ2.5メートル地点。カニが二つのはさみを巧みに使って海藻をついばんでいた。突然、ハゼが飛び出した。静かに近寄るとこちらの動きをじいっと見ていた。どれもこれも震災後に生まれた生き物だった。
2012年09月11日火曜日
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