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NPO会計道

「会計で日本のNPOの発展に貢献したい!」という思いで始めたブログです。NPOの会計や税務はどのようになっているのか、どうあるべきかを考えていき、NPO会計の道を究めることを目指しています。


障害者自立支援法と就労支援事業会計 [2006年10月31日(Tue)]
 障害者自立支援法の施行に伴い法人格を取得するNPOが増加しています。この法律の施行により新たに就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型の事業が創設されました。これらの事業について、新たに「就労支援の事業の会計処理基準」が10月2日に発表されました。今日は、この「就労支援事業の会計処理基準」について、私の知っている範囲で述べます。

 最近、私の昔からの知り合いがこの事業でNPO法人格を取得してそれをお手伝いしているので少し勉強していますが、それ以前は社会福祉法人等を含め、この関係の知識はないので、詳しい方はフォローいただければ幸いです

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 就労支援事業は、障害者を雇用しながら、その障害者の就労を支援していくという事業です。以下、就労支援A型事業の場合です。

@ この支援(サービス)を雇用した障害者に提供すると、一人当たり一日決まった金額のサービス料が事業所に入ります。出所は、国から9割、雇用された障害者本人から1割です。

A 事業所の収入は、このサービス料と雇用した障害者の生産活動により生み出される利益です。

B これらの収入のなかから、雇用した障害者と支援スタッフに最低賃金以上のものを支払い、その他の必要経費も払っていきます。

C 現在の小規模作業所の利用者(通所者)は、この就労支援事業に移行することで、法人格を取ったNPOと雇用関係を結びながら就労に関する支援を受けることができます。
つまり、彼らは、福祉サービスの利用者であるだけでなく、雇用される労働者にもなるわけです。


 さて、今回、就労支援事業会計処理基準ができた背景ですが、10月2日にでた会計処理基準はわかりにくいので、手元にある8月24日の「就労支援事業会計処理基準の創設について」(障害保健福祉関係主観課長会議)からまとめます

1. 基本的考え方

@ 社会福祉事業の財源が措置日から利用料へ転換されたことから利用者の定率負担等が導入される。そこで、従来の単純消費会計方式から発生主義をベースに費用収益をきちんと対比させつつ把握していく企業会計方式へ転換することが必要(経営状況の適切な把握)

A 目標工賃の導入等の関係から、工賃については「事業収入から事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払う」ことを確保しつつ、簡単でわかりやすい会計方式とする必要

B 障害者自立支援法の全面施行によりNPO法人等の参入が予定されていることから、社会福祉法人以外の法人についても適用可能な会計方式が必要

2. 会計処理基準の概要

@ 従来の授産施設会計基準は廃止

A 就労支援事業については、事業活動収支計算(損益計算)上の事業収益、事業費用に適切な勘定科目を用いて経理し、
  (1) 製造原価計算を導入し就労支援事業の直接経費(工賃等)を経理
  (2) 法人職員の人件費については共通経費として適切な配分基準に基づき全事業に割りかけ
することにより施設毎の就労支援事業と法人全体の費用収益を適切に把握

B 社会福祉法人以外の法人については、税制上の特例措置等(←何??)の関係から就労支援事業を他の事業と区分して経理した上、セグメント別又は特別な勘定としてそれぞれの事業の決算概要の明示を要請

C 会計年度末に摩擦的に発生する未支給工賃については翌期における確実な配布を担保するため未払金経理を徹底(費用は当期に計上し、支給は翌期)

とあります。

また、会計基準では「就労支援事業別事業活動収支内訳書」(表1)「就労支援事業製造原価明細表」(表2)「販売費及び一般管理費明細表」(表3)の作成を義務付けています(会計基準を下にスクロールしていくと出てきます)

つまり、完全な企業会計方式の発生主義により経理し、製造原価計算書と販売費及び一般管理費の明細書まで求め、就労支援事業別(事業所別)の会計書類の提出を求めています

これって、私のような税理士や会計士には、営利企業と同じであり意外となじみやすいのですが(積立金の概念など別の難しい問題があるようですが)、資金収支方式で、事業費、管理費の区分けでやっていたNPO(もともと任意団体)にはわかりにくいだろなと感じています。引当金の計上まで求めているようですし。

多くのNPOで、実際に会計のことが問題になるのは、決算のころだと思いますし、就労支援事業に移行したNPOがどれだけあるのかわかりませんが、現場で相当混乱がおきるような気がしています。




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コメント
先ほどのコメントは、障害者継続支援B型事業所の話でした。すみません(^^;
Posted by:きみきみ  at 2011年05月29日(Sun) 00:07
NPO超初心者なのですが、ちょっと質問してもいいですか?
事業で得た収益は必要経費を差し引いた分は利用者に還元しなければいけない、との事ですが、必要経費の範囲がわかりません。職員の給与も最初に定められた額は必要経費とみなしていいと思うのですが、どうなのでしょうか?利益が出たからと言って、職員みんなでボーナス的に分け合うと駄目ですよね、絶対に!利用者のサービス費合計が職員の給与合計よりも少なかった場合、事業費の収益を回せるのかどうか…そんなところはないのか?!
Posted by:きみきみ  at 2011年05月28日(Sat) 23:51
岩永さん、解答ありがとうございました。
岩永さんはこの方面のスペシャリストで、頼ってしまいました。
このブログは私の個人的なものですので、シーズの何でも質問箱(リンク集参照)に投稿すれば、より素早く解答していただけると思います

Posted by:脇坂誠也  at 2007年02月20日(Tue) 17:54
こうのさん、公認会計士の岩永です。
実はまだ明確な通達等は出ていませんので不確定です。消費税の方は比較的はっきりしていて、事業収入は課税、自立支援給付は非課税だろうと思います。
法人税ですが、はっきりしません。ただ法律上、事業収入から生産活動の経費を控除した残額は、工賃として障害者に支払わなければならないことになっており、その意味で理屈上剰余は生じない仕組みになっています。したがって法人税を課税する根拠が見つからないと思います。これは私見です。
Posted by:岩永 清滋  at 2007年02月16日(Fri) 17:59
事業収入(利用者の売り上げに対する課税はどうなるのでしょうか、国税によればかつて授産収益に関しては非課税ではなく課税対象になるほどの収益も無く特に課税の方向にも無かったそうなのですが事業収益が月額100万円を超え年額が2000万円ともなると問題が起きるとの事だそうです、支援費と合わせると4000万円に手が届きます、課税部分と非課税(支援費については消費税は非課税らしい)の取り合いが不明瞭で府の指導課も税務署、明快な回答を貰えません。
 どうも支援法自体がB型に対して収益の見込みが低かった(課税の面)のではないかとは思うのですが、仕訳に窮し浮いてしまう収益が毎月たまり途方にくれています。
Posted by:こうの  at 2007年02月15日(Thu) 21:50
岩永さま

ご回答ありがとうございます。
横道にそれそうでした^^。
全うして就労支援事業を行うことですね。
Posted by:まさ  at 2007年02月14日(Wed) 09:54
公認会計士の岩永と言います。
内部からの委託を授産事業にできるかとなると相当難しいと思います。というのは就労支援事業を行うのはその法人の主たる目的であり、そのための費用をまかなうため、自立支援給付が行われているのであり、その原資は税金という整理になっているからです。これをそのまま認めると、福祉活動として給付された税金が、そのまま利用者の工賃になってしまうからです。
 しかし現場の皆さんのご意見は、確かにもっともだと思います。ですので以前、そのようなストレートな方法ではなく、合理的な経費の按分という方法をとることができないかと意見を申し上げたのです。
 なお内部加工費の規定はありますが、これは方向が逆の場合をさしています。
Posted by:岩永 清滋  at 2007年02月12日(Mon) 15:16
NPO法人で就労継続支援(B型)です。利用者の工賃に関して、法人の自己努力は確かに必要だと思います。しかし、障害の程度や人数によってどうしょうもない部分はでてくるのではないでしょうか?
その中で、掃除の内部外注加工費はよい安打と思います。当施設でも、午前中のプログラムとして、利用者が掃除に取り組んでいます。その部分を授産にできるのであれば、より掃除にも意欲が発揮でき、ゆくゆくは、外部清掃請負までつながると思います。
早速、取り組みたいと思うのですが、具体的には、製造業務の「内部外注加工費支出」→販売及び一般管理費の「就労支援事業収入」でよろしいのでしょうか?
Posted by:まさ  at 2007年02月08日(Thu) 16:21
継続支援B型の施設の関係者です、企業の概念として支援費は事業収入と利用者の売り上げととは一線を画するものであると思います。利用者の賃金は彼らの売り上げでまかなう事が基本ではないでしょうか、仮にそのことで利用者の収入が低いとすればそれは運営法人の問題で制度の問題ではないのではないでしょうか。
否みにうちの利用者の平均賃金は6万円です。
Posted by:こうの  at 2007年01月23日(Tue) 22:26
誤字脱字指摘です。読めば分かりますけども。

・対比させつつ把握してい【く】企業会計方式へ転換することが必要
・NPO法人等の×【算入】→○参入
・特別な×【感情】→○勘定
Posted by:はしはた  at 2007年01月07日(Sun) 20:40
本郷です。岩永先生、丁寧なコメントありがとうございました。なんだか元気が出てきました。
また再び、就労継続支援A型の指定申請にチャレンジしてみようかと思います。
Posted by:本郷 秀崇  at 2006年11月22日(Wed) 19:30
 NPO会計税務専門家ネットワークの岩永です。
 本郷さんの悩みはよくわります。おっしゃる案も1つの方法でしょうね。反対に就労継続支援の方から、他の法人内部の部署への「内部外注費」を認めているのですから、その逆もあってもおかしくはないことになります。
 訓練等給付の収入は福祉活動の部に記載され、就労継続支援活動の収入は、あくまで授産の売上だけとなっています。しかし、費用の方はどうやってわけるのでしょうか。以前の授産会計の場合は本当に直接的な材料費等しかだめだった費用の範囲に比べ、就労継続支援会計の原価の範囲は、販売費一般管理費まで拡張されています。こうなると、福祉活動の部に計上される費用(つまり訓練等給付の方でまかなわれるべき費用)と、どのようにわけるのでしょうか。多いに疑問があります。
 本郷さんのように正面だって聞くと、確かにだめといわれるでしょう。しかし、結果として、就労継続支援会計の方は赤字、福祉活動会計の方は黒字という決算をしたら、効果は内部売上を計上することと同じになります。就労継続支援会計の赤字が、障害者への工賃を支払ったことによるものか否か、検証しようがないからです。
 現実的に、この会計を適用したら、就労継続支援会計は赤字のところが続出すると思います。行政は当然努力せよ、黒字を出して障害者に最低賃金以上支払えと言ってくるでしょうが、そんなにうまくいくとは到底思えません。事実通り、赤字を計上することの方が実態に合致しており、この方策も検討して頂いたらどうかと思います。
Posted by:岩永 清滋  at 2006年11月22日(Wed) 09:37
本郷です。
先ほどは、途中で切れてしまってすみません。続けます。
厚労省の担当官は、サービス報酬を利用者の賃金に当ててはならないと言いました。確かに会計基準にもそれらしいことは出ています。賃金は、就労継続支援A型事業の会計から、すなわち、利用者が稼いだ中からしかだしてはいけないと言うことなのですね。
しかし、サービス報酬は、法人が稼いだお金ですよね。それをなぜ、法人の判断で、利用者の賃金にあててはいけないのでしょうか。
これは、企業会計を導入していくと言いながら旧態依然とした授産会計基準そのもの様な気がします。
担当者は、税金の横流しであるかの様に言いました。しかし、利用者の労働対価として支払うのです。決して働いてもないのにお金を回してあげるわけではないのです。抗議をしたら、「あなたが、会社を作って雇えばいい」と言われました。
そこでさきほどの例ですが、A法人は、法人会計から、自らの運営する事業へ掃除代を払うわけですね。そして、利用者は、事業会計から賃金をもらうわけですよね。このようなやり方だったら、会計基準に抵触せずにやれそうな気がするのですが、猿知恵でしょうか。
勿論、法人内での自給自足になってしまい、法人としての利益は、少なくなります。しかし、障害ゆえに、雇用契約のもとでの就労ができない利用者にとっては、朗報なのです。現にうちの利用者は、、この案で、就労継続支援A型をめざすという戦略にかなり期待していました。今は、所長の私ともどもがっかりしています。
さらに、たとえ自給自足的なお金のやりくりであったとしても、雇用と言うことで元気付いてきたら、法人外の仕事の割合を高くしていくことも可能になってくると思います。
もっと会計のことに精通していたら、この荒波を乗り越えられただろうにと思う今日この頃です。
Posted by:本郷  at 2006年11月19日(Sun) 20:13
自由空間ポーの本郷です。
脇坂さんお世話になっております。
ご存知のように、就労継続支援A型の指定申請を9月の土壇場で取り下げてしまいました。会計基準が出てきて、やっていくのが難しいと判断したからなのです厚労省から言われたことが、今でもいまいち理解できないでいます。

こんな例はいかがでしょうか。
A法人が、自分のところの就労継続支援A型事業の利用者に、仕事としてA法人の施設の清掃を任せたとします。
Posted by:本郷 秀崇  at 2006年11月19日(Sun) 19:28
 岩永さん、コメントありがとうございます。だいぶわかってきました。いろいろフォローいただければうれしいです。
Posted by:脇坂 誠也  at 2006年11月07日(Tue) 18:50
NPO@PRONO岩永です%
今回出た基準は脇坂さんのご説明通りです。
ただ、NPO法人等にも適用する指針ではありますが、現実的には社会福祉法人を念頭においていると思われます。また就労継続施設などは比較的大きい法人に限られます。
今回の自立支援法の成立により、経過措置はありますが、従来の授産施設はいずれなくなり、すべてが新体系の法人に衣替えせざるを得なくなっています。つまり、授産会計基準は放棄せざるを得なくなったわけです。
その際、公益法人会計基準もかわっていることを踏まえ、企業会計原則に近いものにしたのでしょう。
しかし、相も変わらず複雑で、はたしてこれが根付くことになるのか、疑問があります。福祉系NPOの大半は介護サービス系なので、一挙にこの基準にいくわけではありませんが、就労継続支援を行うNPO法人は、数は少ないと思われるもののあり得るので、また1つ勉強しなくてはいけないものが増えたことになります。
Posted by:岩永 清滋  at 2006年11月05日(Sun) 16:59
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