尖閣諸島を国有化9月11日 19時58分
政府は、11日の閣議で、沖縄県の尖閣諸島について、平穏かつ安定的に維持・管理するため、島の購入費用として今年度予算の予備費から20億円余りを支出することを決定し、11日午前、地権者側と契約書を取り交わし、国有化しました。
政府は、沖縄県の尖閣諸島について、周辺海域の航行の安全業務を適切に実施しながら、長期にわたって島を平穏かつ安定的に維持・管理するため、可及的速やかに島の所有権を国が取得する方針で、11日の閣議で、購入費として、今年度予算の予備費から20億5000万円を支出することを決定しました。
これに関連して、藤村官房長官は記者会見で「今後、速やかに、尖閣諸島の所有者との間で購入のための正式な契約を締結したい」と述べました。
政府は、11日午前、地権者と契約書を交わし、尖閣諸島を国有化しました。
また、藤村官房長官は、尖閣諸島の国有化に中国側が反発していることについて、「島の保有・取得は、日本の土地の所有権を個人から国に移転するもので、ほかの国や地域との間で、何ら問題をじゃっ起するものではない。日中関係の大局に影響を及ぼすことは全く望んでおらず、誤解や不測の事態を回避することが重要だ」と述べ日本の立場を中国側に丁寧に説明していく考えを示しました。
沖縄県知事 評価する考え
尖閣諸島の国有化について、沖縄県の仲井真知事は「個々の具体的な国の処分のしかたについてコメントする立場にないが、基本的には、政府のこれまでの尖閣諸島に関する発言が私にとって理解しやすい」と述べ、評価する考えを示しました。
また、国有化を巡る中国の反発については「外交官ではないので、コメントできない」として、言及を避けました。
尖閣諸島国有化までの経緯
沖縄県の尖閣諸島を巡っては、周辺海域に豊富な天然資源が埋蔵されていることが判明した1970年代から中国などが領有権を主張し始めます。
政府は、島を平穏かつ安定的に維持・管理する必要があるとして、小泉政権下の平成14年から、尖閣諸島のうち、魚釣島など民有地だった島について、地権者に賃借料を支払って借り上げました。
平成18年ごろからは、島の実効支配をより安定的なものにするため、地権者側に対し、国内のほかの土地と尖閣諸島を交換する案を提示し、水面下で国有化に向けた交渉を始めました。
しかし、条件面で折り合わないまま交渉は停滞し、政府は賃借契約の延長を繰り返しながら、維持・管理を続けてきました。
こうしたなか、ことし4月、東京都の石原知事が、都として尖閣諸島を購入する意向を表明し、地権者とも交渉を進めていることを明らかにしました。
政府は、賃借契約を来年3月まで延長したばかりということもあり、当初、東京都の対応を見守る構えでした。
しかし、日本国内で、国有化を巡る議論が活発になる一方、中国国内で反発が広がり、方針の転換を余儀なくされます。
政府は、領土を守る責任はあくまで国にあるとして、地権者側に島の買い取りを打診し交渉を本格化させました。
7月には、野田総理大臣が国有化に向けて国が島を買い取る意向を表明しました。
政府は、地権者側との交渉を円滑に進めるため、東京都側との協議にも乗り出し、野田総理大臣と石原都知事による会談も行われました。
しかし、石原知事は国が買い取る際の条件として、島に灯台や漁船の避難施設などを整備するよう求め、協議は難航しました。
石原知事は、島を購入するために呼びかけた寄付金が14億円余り集まっていることもあり、都が購入する姿勢を崩しませんでした。
今月2日には、海上から島の現地調査を行ったのに続いて、来月には、国の許可がなくてもみずから島に上陸して再調査を行う考えを示していました。
石原知事が尖閣諸島を購入する意向を表明してから、中国の漁業監視船が、周辺海域を航行する事案が相次いだほか、先月には香港の活動家らが尖閣諸島に不法上陸するなど、日中間で対立が深まっていました。
政府は、日中間の対立が先鋭化するのを避けるため、島の国有を急ぐ必要があると判断。
国の算定した島の価格としては最高額に当たる20億5000万円を提示し、今月はじめに、地権者側と大筋合意にこぎ着けていました。
石原知事 結構なようで不本意なところも
沖縄の尖閣諸島を政府が国有化したことを受けて、島の購入を検討していた東京都の石原知事は記者会見を開き、「もともと国がすべきことで最終的にはバトンタッチするつもりでいた。
結果的に国が購入したのは結構なようで、不本意なところもある」と述べました。
そのうえで石原知事は、東京都に売却する意思があると説明を受けていたという地権者の男性と今月7日に会談した際、地権者が「許して下さい。
申し訳ありません」と謝ってきたことを明らかにしたうえで、「いきなりテーブルに頭をつけて謝られても釈然としない。
相手の誠意やことばを信じてやってきたから土壇場でうっちゃりを食った感じだ」と述べ、悔しさをにじませました。
また、東京都に集まっている14億円余りの寄付金の今後の取り扱いについては、「条例を作って寄付金を基金にしたうえで漁業者のために最低限のインフラを作ると決心する政府に渡す」と述べ、政府が施設整備など島の活用を実行に移す方針に代わるまで寄付金を基金として保有していく考えを示しました。
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