社説:甲状腺検査 丁寧で科学的な説明を
毎日新聞 2012年09月03日 02時32分
福島第1原発の事故を受け福島県が実施している子どもの甲状腺の検査に対し、保護者らが不満や不安を感じている。検査結果の説明が不十分だったり、放射線の影響を判断するための疫学データが不足したりしているためだ。
科学的なデータと、それに基づく十分な説明によってしか人々の納得は得られない。国や県は住民の立場に立った検査や説明に心を砕いてほしい。
福島県が子どもの甲状腺検査を重点的に行っているのは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の4〜5年後に子どもの甲状腺がんが増えたためだ。事故で放出された放射性ヨウ素が原因だと考えられる。チェルノブイリに比べると福島での放射性ヨウ素の影響は非常に小さいと見られるが、人々が不安に思うのは当然だ。
県の検査の対象は震災時に18歳以下だった県民36万人。今年3月末までに約3万8000人が受診し、3割強の人に結節(しこり)やのう胞(液体がたまった袋状のもの)が見つかった。このうち、詳しい2次検査の対象となったのは結節やのう胞が大きい186人。大多数は問題がないと判断され、約2年後の次期調査まで検査は不要とされている。
ひとつの問題は、検査を行っている福島県立医大から受診者に送られる結果通知が不親切であることだ。結節などがあるのに2次検査は不要とされた人々への通知は、当初、見つかったのが結節なのか、のう胞なのかさえわからないものだった。