◇秋場所<2日目>
舛ノ山(左)が突き出しで豪風を破る=両国国技館で(武藤健一撮影)
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(10日・両国国技館)
心臓疾患の疑いから長い相撲が取れない西前頭6枚目の舛ノ山(21)=千賀ノ浦=が、豪風を突き出しで破って初日から2連勝を飾った。綱とりに挑む日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は阿覧を難なく退け、白星を2つ並べた。白鵬(27)=宮城野=は初顔の松鳳山を小手投げで下して2連勝。稀勢の里も初顔の魁聖を、琴奨菊は栃ノ心をそれぞれ寄り切った。初日黒星の把瑠都は碧山を小手投げで退けた。
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幕内最年少力士の21歳は振り返ることを知らない。名古屋場所で11勝を挙げ、平成生まれ初の三賞を受賞した舛ノ山。番付を東6枚目に上げた今場所も前へ前へ、そして前へ。ベテランの豪風を突き切って自己最高位で進撃を続けている。
「途中でちょっと苦しくなって。やばい、早く決めなきゃと思った。でも、きつくなってからの方が力が出るかもしれません」
押し相撲としては長い9秒8の激闘を終え、花道を引き揚げる舛ノ山はアゴを上げ、精いっぱいの酸素を吸い込もうとしていた。初日も雅山に9秒3の相撲で勝ったが苦笑いしながら「ガソリンのメーターがどんどん減っていくのが分かる」とスタミナ面の不安を口にしていた。
「おかしいなあ」と思ったのは昨年9月。稽古していてもすぐに息が上がるし、場所の後半になると風邪をひきやすくなっていた。東京都内の病院でエコー検査を受けたところ「心房中隔欠損の疑いがある」と診断された。新鮮な血液の一部が体に回らないというものだ。
「それが原因でスタミナが一般人の半分か、それ以下だそうです」。稽古をする上で持久力の問題は深刻だった。さらに心臓なので「怖さがあった」と打ち明ける。
心臓の負担を軽くするため、一時的に体重を170キロくらいまで落とした。ただ、「それだと勝てなくなって…」。完治には手術しかない。「切ると大変なので、カテーテル手術をするか、この相撲(押し相撲)を極めるか」。出した結論は「この相撲を極める」だった。
番付発表まで稽古は1日に3回。夕方は四股やてっぽうを1時間半、夜は散歩、プール歩行など。「普通の力士と同じ稽古ができない。それを取り返す以上のことをやらないと」。師匠の千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)に「稽古の虫なんです」と言わしめる。
「(病気は)現役をやめてから、ゆっくり治そうと思ってます」。21歳の若武者は、すべてを相撲にささげている。 (岸本隆)
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