すさまじい勢いで自民党の谷垣総裁降ろしが進んでいる。ついこの間まで「再選濃厚」とみられていた谷垣が、包囲網を敷かれ、総裁選に出馬できないかもしれないところにまで追い込まれているから奇怪だ。
この流れをつくったのは、大新聞。それをテレビが追いかけている。
「安倍氏、再登板に意欲」「維新の会と連携」とか「石破氏も出馬へ」「石原氏も総裁選に意欲」と大々的に報じられ、それで、「谷垣氏苦境 出馬断念も」となってきた。
「大新聞が谷垣を引きずり降ろしたいのは、野田政権継続のためですよ」と関係者が語る。
「谷垣は野田首相に早期解散を迫っている。問責決議案にも賛成して、野田を追い詰めている。その谷垣の再選が濃厚のままだと、今国会の会期末か、遅くとも１０月の臨時国会の冒頭で解散に踏み切らざるを得ない。それが先月８日の野田・谷垣会談の約束だからです。しかし、大新聞は早期解散をさせたくないのです」
どういうことなのか。
「いま大新聞各社は、消費増税に関して“新聞は軽減税率にしてくれ”とムシのいい要求をしている。増税法案成立を推進したのも、野田や財務省との間で、税金を安くしてもらうアウンの呼吸があったからといわれている。しかし、谷垣を生かしておくと、野田は惨敗確実な早期解散に追い込まれ、クビが確実だし、新聞社との連携も吹き飛びかねない。総選挙になれば、増税が一大争点になり、“なぜ新聞だけが軽減税率なのか”の批判も高まる。それで大新聞社は、早期解散の強硬論者である谷垣を葬ろうとしているのです」（前出の関係者）
安倍とか石破、石原伸晃は、大新聞の思惑で担ぎ出されたということだ。その思惑通り、谷垣が引きずり降ろされ、野田政権延命で大新聞への軽減税率決定なんて事態になったら、総裁選報道を見せつけられる国民はアホのようなものである。
（日刊ゲンダイ2012年9月5日掲載）