(cache) 復興庁の「機能不全」に被災地から諦めの声も(ガジェット通信)

復興庁の「機能不全」に被災地から諦めの声も

「この町のような田舎は国に捨てられているんじゃないか」……被災地で踏ん張って医療活動を続ける町医者に、こんな言葉を吐かせていて、何が「震災復興」だ。何が「がんばろうニッポン」だ。2012年9月9日のNHKスペシャル「シリーズ東日本大震災追求復興予算10億円」を観て、憤りを感じた読者は多かったのではないか。

番組では、予算の割り当てが少ないために、補助金の申請が却下された商店街の若手グループが紹介された。岩手県大槌町のグループなのだが、やる気があっても申請が通らない理由は、第1に国から県への予算配分の不足。第2は、商店を再興しても雇用が確保できないこと。以上の理由から、雇用の確保が見込める水産業者などに予算を優先的に配分していると言う。

また、宮城県気仙沼市では、いまだに3割の医療機関しか震災前の状況に戻っていない。補助金の配分が公共医療機関に偏っているため、民間の病院や町医者に対する支援が大幅に遅れているからだ。冒頭で紹介した亡国的な発言は、億単位の借金をして自ら医院を再興した医師のものである。そんな借金をする覚悟がある医師は少数で、多くの医師は気仙沼を離れ、別の土地で勤務医などとして働く。

このふたつの事例を見ただけでも、いま必要とされている人や場所に復興予算が行き渡っていないことが分かる。国の予算というのは、各省による予算の奪い合いが行われた後、年度末に配分が確定する。予算の使い道は、あらかじめ決められているため、柔軟に活用するのは難しい。それは分かっている。しかし、それでは震災復興が進まないということで、復興庁が設置されたのである。

復興庁は、復興に関する国の施策の企画立案およびその調整と、被災地に対する復興計画策定の助言、復興特区の認定、復興補助金の配分などを「政府の一元的な窓口として」行うために設置されたはずである。にもかかわらず、復興予算の経済産業省や厚生労働省への「縦割り」が弊害となって、大槌町の商店グループにも気仙沼の町医者にも補助金が行き届いていないのが実状なのだ。

初代の大臣となった平野達男震災復興担当相は、復興の「司令塔」になると明言していた。一方、復興庁の設置直後から、被災地では「看板を変えるだけでは何も変わらない」という声がささやかれていた。現状は、復興相の「司令塔」というかけ声は絵空事となっており、「何も変わらない」という現地でのささやきが真実となっている。

補助金を却下された商店主に「先が見えない」と言わせ、被災地の町医者に「この町のような田舎は国に捨てられているんじゃないか」と言わせるような復興支援の、どこに夢や希望があるのだろう。番組では、明らかに無駄だと思われる事業に対して、復興予算が使われたり、使われようとしている様子も紹介していた。どれもこれも、復興庁の「一元化」という部分がしっかりと機能していれば、解決できる問題だ。

機能しない役所を存続していること自体が、復興予算の無駄づかいとなる。省庁の縦割りを打開できず、復興支援の役に立たないのなら、復興庁など解体すべきだと筆者は思う。

（谷川　茂）

すべてのトピックスをみる - livedoor トップページ