長野市三輪5の市道で昨年11月、少女2人が死傷したひき逃げ事件で、殺人と自動車運転過失傷害、道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の罪に問われた市内の無職の男性被告(20)=事件当時(19)=の裁判員裁判初公判は10日午前、長野地裁(高木順子裁判長)で始まった。被告は起訴内容を認めるかどうかを問う罪状認否で、酒気帯び運転で死亡事故を起こしたことを認めた上で、「(被害者を)引きずって走行したことには気付きませんでした」と述べ、殺意を否認。弁護側は殺人罪ではなく、自動車運転過失致死罪に当たると主張した。
立証内容を説明する冒頭陳述で検察側は、男性被告は酒気帯びの状態で軽乗用車を運転中に交際相手に携帯電話をかけ、死亡した徳竹優菜さん=当時(17)=らの発見が遅れて2人をはねたと指摘。ハンドルを切ったものの急ブレーキはかけておらず、事故後は飲酒運転の発覚などを恐れて逃走を図ったとした。徳竹さんを軽乗用車の車底部に巻き込んだまま走行したのを認識しており、徳竹さんが死亡するかもしれないとの「未必(みひつ)の殺意」があったとした。
弁護側は、被告は事故を起こしたことで「極度のパニック状態」になり、徳竹さんの悲鳴や車底部に巻き込んだことによるアクセルの抵抗感などは分からなかったと主張。衝突したのは1人で車の後方に飛ばされたと思っていた―とし、「(被害者が)車底部にいる可能性は考えられなかった」と訴えた。事故後は車をUターンさせて戻り、倒れた徳竹さんに「大丈夫ですか」などと声を掛けたとした。
起訴状などによると、被告は昨年11月5日未明、友人の男性(21)=道交法違反(酒気帯び運転の同乗)の罪で懲役1年10月、執行猶予4年の判決が確定=を自宅に送るため、酒気帯びの状態で軽乗用車を運転し、市道を歩いていた徳竹さんら2人をはね、同市のアルバイト女性(17)に脳挫傷などの傷害を負わせた。さらに徳竹さんを軽乗用車の車底部に巻き込んで引きずり、悲鳴などに気付いていったん停止したが、事故の発覚を免れるために徳竹さんが死亡するかもしれないと思いながら再発進。徳竹さんを約400メートル引きずって頭蓋内損傷などで死亡させたとしている。
事件当時未成年の被告の裁判員裁判は県内2件目。判決を含めた公判期日は計16日間の予定で、県内の裁判員裁判としては過去最長となる。