死因究明制度:監察医の有無で解剖率に地域格差
毎日新聞 2012年06月15日 14時57分(最終更新 06月15日 15時06分)
死因究明制度が新たに法制化された背景には、現行の解剖制度で地域間に格差が生じている実情がある。解剖率の低迷や犯罪死見逃しの温床との見方もあり、新たな解剖制度の必要性が指摘されてきた。
警察庁によると、警察が昨年1年間に取り扱った死体の数は約17万体(交通事故・東日本大震災を除く)にのぼり、このうち約1万9000体が解剖された。解剖率は約11%で、英国の46%や豪州の54%などと比べて低い。また、犯罪死の見逃しは98年以降、45件発覚したが、うち40件では解剖が行われていなかった。
解剖制度は、刑事手続きとして行う「司法解剖」と、犯罪死を疑わせる状況はないものの、外見から死因を特定できない場合に行う「行政解剖」の二つ。行政解剖には遺族に同意を求める承諾解剖と同意のいらない監察医解剖がある。
全国では昨年、約1万1200件の行政解剖が実施された。このうち9割を超える1万616件が、監察医のいる5都府県に集中。さらに犯罪死見逃しの8割以上が、監察医のいない地域で起きた。【村上尊一】