【北京=大越匡洋】中国経済が停滞から抜け出せずにいる。中国国家統計局が9日発表した8月の経済統計によると、工業生産の伸びは前年同月比8.9%増と7月から0.3ポイント鈍化。国内外の需要の鈍化と過剰な生産能力の「二重苦」で在庫が積み上がり、3年3カ月ぶりの低水準となった。中国政府は積極的な投資で景気を下支えするが、8月は物価の伸びが拡大に転じ、経済政策運営は難しさを増している。
8月の生産は3カ月連続で伸びが鈍った。紡績業など10%超の伸びを確保した業種もあるが、鋼材が1.4%増、発電量も2.7%増と、企業の生産活動は総じて鈍い。
背景にあるのは、欧州債務危機による外需の不振と、不動産取引の引き締め策を受けた内需の伸び悩みだ。8月の輸入は7カ月ぶりの減少に転じ、輸出も低水準の伸びが続いており、内外の需要の弱さが鮮明だ。セメント、太陽光発電など幅広い業種で需要を上回る生産能力を抱え、企業は「在庫増→製品価格の下落→業績の悪化」という悪循環に陥っている。
8月の工業生産者出荷価格(卸売物価)指数をみても、前年同月に比べ3.5%低下した。6カ月連続のマイナスで低下幅も拡大し、企業間取引の鈍さを映す。8月は製造業購買担当者景気指数も9カ月ぶりに節目の50を割り込んでおり、先行きも楽観できない。
景気の先行きへの不安が消費者心理に影を落とす。8月の社会消費品小売総額(小売売上高)は13.2%増と、7月よりわずか0.1ポイントの拡大。消費は底堅いものの力強さを欠き、17~18%の伸びを示していた昨年後半に比べ、今年は緩やかな鈍化傾向が続いている。
減速する景気を下支えしているのが、積極的な投資だ。1~8月の固定資産投資(設備投資や建設投資の合計)は前年同期比20.2%増。1~7月より0.2ポイント低下したが、なお高水準を保つ。
中国政府は都市交通などのインフラ整備や、国有企業の大型事業を軸とする積極的な投資で景気の下支えに動いている。裏付けとなる銀行融資を確保するため、中国人民銀行(中央銀行)も金融緩和を続けている。
ただ足元では不動産価格が再び上昇する兆しをみせている。さらに、8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.0%上昇と5カ月ぶりに伸びが拡大に転じた。台風被害で生鮮野菜が高騰。米国の干ばつの影響で穀物価格も上昇傾向が長引く恐れが出ている。
最高指導部が交代する共産党大会を今秋に控え、中国政府は安定成長の確保を最優先に掲げるが、不動産バブルとインフレ懸念が再びくすぶっており、一段の投資の加速や追加の金融緩和に動きにくくなる展開も予想される。
太陽光発電
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