南海トラフ巨大地震を想定し、大阪府内全域で5日に行われた「大阪880万人訓練」で、府内にいた人の携帯電話に一斉送信された訓練用メールが一部の機種で届かず、府などに問い合わせが相次いだ。対応機種が限られていることが原因だが、名前が似た別のメールサービスと混同し、受信できると誤解していた利用者もいたとみられ、有事情報発信の課題が浮き彫りになった。
「電波が届くところにいたのに、届かない。危機管理はどうなっているんだ」。府や各自治体の担当部署にはこうした電話が相次いだ。
府は訓練で、府民の4割にあたる350万人に通知できると見込んだ。実際に何割の携帯電話が鳴ったかは確認できないが、問い合わせが相次いだことを受け、府の担当者は「4割も鳴らず、2割程度だったのかもしれない」と肩を落とした。
今回訓練に使われた緊急メールサービスは、自治体が避難情報などを携帯電話会社を介して配信する仕組み。このサービスは、携帯電話各社ごとに導入時期が異なり、各社によると、サービス開始前に販売された機種には対応していないものが多いという。
最新機種でも、海外製は未対応のものがあり、例えばスマートフォンの人気機種「アイフォーン」も対応していない。auとソフトバンクのサービス開始は今年1月から。対応機種は昨年秋以降の機種が中心で、両社の場合、今回の訓練で鳴ったのは購入から1年未満の機種が大半だったとみられる。
一方、今回のメールを府が「訓練緊急地震速報」と名付けたことで、「緊急地震速報」のメール配信サービスとの混同もあったようだ。
緊急地震速報は、地震の発生とともに、気象庁から自動的に定型文が発信されるもの。今回大阪府が利用したサービスは、自治体と携帯電話会社が個別に契約し、独自のメッセージを作り、送る仕組みで、緊急地震速報とは別物だ。
各社とも地震速報メールの方がサービス開始時期が早い。緊急地震速報は受信できるが、自治体発メールには非対応の機種もある。府危機管理室は「地震速報に対応しているから、自治体発のメールも受信できると勘違いした人がいたのではないか」と分析する。
松井一郎知事は5日の記者会見で「実際に災害が起きたときに届かないということがないよう、改善すべきは改善する」と課題を口にした。
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