飲酒:「入社願書に酒量を書くのは世界で韓国だけ」

禁酒を勧めない企業
酒癖の悪い人間を生み出す職場の文化

 しかし飲酒に関しては、事情が全く異なる。韓国の30大企業のうち、酒量を減らして最終的に酒を断つ「節酒・禁酒」運動に取り組んでいる企業は1社もないどころか、むしろ仕事と酒は切り離せない状況にある。ある建設会社に入社して12年目のCさん(42)は、酒に強いことで社内では有名だ。Cさんは「酒なしに仕事をしたことは、今から考えてもなかったと思う」と語る。入社直後は「自己紹介」を兼ねて酒を飲み、その後もチームが業績を上げたとき、業績が悪ければストレス解消のためなど、あらゆる理由で酒の席が準備されたという。Cさんによると、入社して最初に経験したことは、酒を飲んで酔いつぶれ、先輩の家で寝たことだという。

 禁煙を強く推進するある大手企業の関係者は「たばこは社会の目もあるし、社員の体に良くないのはもちろん、仕事にもプラスにならないため、禁煙を強く勧めている。しかし酒は取引先との付き合いや、オフィス内でのチームワークを高めるのに大きく影響するため、禁酒を強要するのは難しい」と語る。今も職場で酒は「仕事上」「社員間の親睦」などさまざまな理由で勧められており、自制を促す対象にはなっていない。

 しかし専門家の見方は異なる。韓国飲酒文化研究センターのチャン・ギフン研究員は「爆弾酒(ビールとウイスキーを混ぜたもの)のグラスの回し飲みを強要するのは深刻な問題だ。韓国社会の飲酒文化は多くが職場から始まっている」と指摘する。サラリーマンの飲酒文化が改善されない限り、韓国社会全体の飲酒文化も改善されないというわけだ。

■夜が明けても“今夜”と表現

 韓国ではごく当然の飲酒文化も、米国ではニュースのネタになる。昨年5月に米紙ワシントン・ポストは「ソウルでの徹夜の暴飲」と題する記事を掲載。韓国のサラリーマンの飲酒文化を好奇のまなざしで見詰めていた。

 同紙は「韓国では酒の席が3次会まで続くのが普通で、最初は夕食を兼ねて始まり、最終的には必ず徹夜の飲酒につながる」とした上で「韓国人は上司が酔いつぶれてその場が終わるまでは、誰も先に帰宅できない」「店を移る回数が増えれば増えるほど仲間意識が高まる」「重要な契約が酒の席で行われるケースもある」などと指摘した。酒の席が最終的に夜明けまで続き、過度の飲酒につながる文化に対しては「夜が明けても“今晩”と表現する」と報じた。

特別取材チーム
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