「世界の一流企業の中で、朝から酒のにおいをぷんぷんさせながら出勤する社員がこれほど多い企業はない」
2004年、サムスンの李健熙(イ・ゴンヒ)会長は内部会議でこのように話し「爆弾酒(ウイスキーや焼酎のビール割り)をやめるように」と指示した。
李会長のこの発言の直後、サムスンでは大々的な暴飲・爆弾酒禁止キャンペーンが展開された。
まず「爆弾酒の行く末は敗家亡身(身代をつぶし身を滅ぼすこと)」というポスターが社内の至る所に貼られた。
「自爆酒」と題するポスターには「爆弾酒、暴飲、回し飲み、2次会…誤った飲酒・飲酒習慣にこだわるあなたに一度お勧めしたい酒です。この酒の行く末は敗家亡身」という警告文が書かれている。
数カ月後には、サムスン本館と全国にあるサムスン電子の事業所に「暴飲1度で脳細胞10万個が破壊される」というヒヤリとする内容のポスターが貼られた。このポスターは「あなたの脳細胞が死にかけています」という恐ろしい文言で目を引き「酒を無理強いするのはやめましょう」と呼び掛けている。
だが、サムスンの節酒運動は長続きしなかった。同社の関係者は「企業では『酒をよく飲む人は能力がある』というイメージが強い。飲酒文化を変えるのは、社会の雰囲気とかみ合っているが、たばこと異なり飲酒は依然として広く寛容されているため、節酒を強制するのは容易ではない」と話した。