東北のニュース
世界的歴史書「137億年の物語」 福島の事故受け改訂
 | 福島第1原発事故を受けて、原発に関する記述が書き直された日本版「137億年の物語」 |
|
 | クリストファー・ロイド氏 |
|
|
英国人作家クリストファー・ロイド氏(44)の世界的ベストセラー「137億年の物語」の改訂日本版が10日、出版される。2008年刊行の英国版は原発をエネルギーの有力な選択肢として最終章を結んでいた。東日本大震災と福島第1原発事故を受け、日本版は原発からの脱却を促す記述に書き換え、英国でも同じ内容で新版を出す。 ロイド氏は河北新報社の取材に「福島の事故は人類の歴史において、エネルギーの供給方法を考え直す重要な出来事で、書き直す必要があった」と話している。 宇宙の誕生から現在のエネルギー、食料、人口などの問題までつづった「137億年の物語」は自然史、人類史双方の視点を備えた初の歴史書として注目を集め、英国で10万部を売り上げたほか、米国、ロシアなど14カ国で読まれている。 大学で歴史を学び、新聞社で科学記者を務めたロイド氏は震災前、「原発は地球環境を悪化させないエネルギーだ」と考え、原書の最終章では原発を将来のエネルギーの主軸と位置付けていた。 ところが、日本版の編集作業中に東日本大震災が発生。英国のメディアも福島第1原発で大事故が起きたことを詳しく報じた。「人間は自然をコントロールできない」と思い知らされ、書き換えを決意したという。 日本版の最終章には「原子力が世界を救うという考えは、果たして正しかったのだろうか。このような大惨事に直面して、原子力発電を推進しようとする政党など、日本にあるだろうか。(中略)アメリカや中国も原子力発電を推進しているが、やはり地震は多いのだ」と記した。英国でも近く、日本版を反映した形で新版が出版される。 ロイド氏は原発脱却の難しさを指摘しつつも、「日本には技術がある。太陽光や風力といったクリーンで持続可能なエネルギーの開発により、解決できると信じている」と期待を寄せている。 B5判変型で512ページ。3140円。連絡先は文芸春秋03(3265)1211。
2012年09月08日土曜日
|
|