飲酒:酔客多過ぎ、強盗事件の捜査ままならず

 「独身女性が住むソウル・新村のワンルームマンションに2人組みの強盗が侵入、金品を盗んで逃走した。出動せよ」

 5月26日午前2時ごろ、ソウル市西大門区新村地区隊(日本の交番に相当)所属のパトカーに緊急指令が下り、5台のパトカーが一斉に現場に駆け付けた。しかし、強盗が逮捕されていないにもかかわらず、3台のパトカーはほかの現場に移動しなければならなくなった。酒に酔った住民が騒ぎ立てているとの通報があったためだ。新村地区隊のチャン・グヒ警官は「泥棒を捕まえなければならないときに、警察が酔客の相手をしなければならないというのは、非常にもどかしい。112番(日本の110番に相当)の対応規定では、泥棒を捕まえた状況でなければ、まずは酔客の届出に対応するよう定められており、われわれとしても、どうしようもない」と話す。

 新村地区隊のこうしたジレンマは、毎晩のように全国の警察地区隊で繰り返されている現実だ。殺人や窃盗、性的暴行など5大凶悪犯罪(47万3966件)のうち37.7%(17万5790件)が午後10時から午前4時の間に発生している。酔客による暴力事件も、52%(警察に届出があった件数を基準に35万129件のうち18万3271件)が同時間帯に集中していた。酔客関連の届出が集中する時間帯と凶悪犯罪が最も起こりやすい時間帯がちょうど重なっているため「酔客のために強盗を逃がす」といった、笑うに笑えない言葉が飛び交っているほどだ。

 特に繁華街や大使館などの主要施設が集中している地域を管轄する地区隊は、殺到する酔客の相手と防犯巡察業務の二重苦に振り回されている。ソウル市内の梨泰院地区隊が代表的なケースだ。同地区隊は、繁華街・梨泰院のど真ん中にあり、在韓外国大使館や大使官邸、長官邸宅、大企業のオーナー宅などが密集した漢南洞一帯までを管轄している。最前線で活躍する警察官は、金曜日ごとに酔客の相手をしていては、ほかの業務に支障を来たすと訴える。

 梨泰院地区隊のイ・サンジン警官は「酔客を相手にしていると、実際に強盗など凶悪事件を予防するための巡察活動は、ほとんどできなくなる。酔客は普段に比べて力が強く、大声を張り上げて叫ぶため、一人でも相手をすると、耳が痛くなったり疲れてしまい、ほかの業務をこなす意欲まで失ってしまう」と話す。東国大学警察行政学科のクァク・テギョン教授の研究結果によると、地区隊が1人の酔客を相手するのにかかる時間は、平均2-3時間だという。

特別取材チーム
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