栗城史多×安藤美冬 【第2回】 「苦しいエベレスト挑戦もみんなで楽しみたい」 すべてをリアルタイムで伝える登山家が目指す夢

2012年09月02日(日) 安藤 美冬
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 登山の世界では、昔から「誰々がどうした」という部分ばかりが注目されるんです。「誰々があの壁を最初に登った」とか。でも、そんなレースみたいなことばかり考えていてはつまらないじゃないか、という気持ちがずっとありました。もっと自由に、他の人と一緒に楽しくやろうよ、って。

 そんなことを考えて動画もやったんですけど、ただ動画を撮って後で流すだけでは、やっぱり過去の話になってしまうじゃないですか。昨日のものを今日見ても、価値としては半分くらい。だったらリアルタイムで生のものを見せよう、その方が100%の価値がある。そう思ったんです。

安藤: オリンピックのサッカーの試合でも、パブなんかに集まって、みんなでビールを飲みながら見た方が盛り上がりますもんね。

栗城: そうなんです。まさにああいう風に見てほしいなと思って、生中継を始めたんですよ。

 昔から言ってるんですけど、僕のライバルはプロ野球やサッカーだと思っています。野球やサッカーは、みんな試合をリアルタイムで見て、展開をハラハラしながら楽しむじゃないですか。同じように、「栗城はあんなに得体の知れないエベレストの頂上にどう挑んでいくのか」って、その展開を見て盛り上がってもらえればいいんです。

 もちろん、エベレスト登頂に成功して、山頂から生中継をする場合は、機材や技術の問題とか、その開発を進めるための資金の問題とか、これから改良しなければならない点はいろいろあります。でも、何とか今までやってこられたし、自分のやり方は間違っていなかったと思いますね。

 これからも同じように、登山する自分を全部リアルタイムで伝えるという方針を貫いていきたいと思います。

〈次回に続く〉

 

栗城史多(くりき・のぶかず)
1982年北海道生まれ。大学山岳部に入部してから登山を始め、大学3年のとき、単独で北米最高峰のマッキンリーを登る。その後、6大陸の最高峰に登頂。2007年以降はヒマラヤの8000m峰に挑戦している。07年、自らの登山の動画配信をスタート。09年から「冒険の共有」としてのインターネット生中継登山を始め、同年ダウラギリ(8167m)の単独・無酸素登頂と6500m地点からのインターネット中継に成功。世界最高峰エベレスト(8848m)には登山隊の多い春ではなく、気象条件の厳しい秋に単独・無酸素で挑戦している。12年秋にもエベレストに単独・無酸素で挑戦する予定。
安藤美冬(あんどう・みふゆ)
株式会社spree代表取締役/フリーランス。1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業後、(株)集英社にてファッション誌の広告営業と書籍単行本の宣伝業務を積み、2008年には社長賞を受賞。2011年1月独立。
ソーシャルメディアでの発信とセルフブランディングを駆使し、一切の営業活動をすることなく、複数の肩書で複数の仕事をする独自のノマドワークスタイルが注目を浴び、MBS-TBS系列『情熱大陸』、朝日新聞などのメディアで多数取り上げられる。またNHK『ニッポンのジレンマ』、TBS『田村総研』にも30代の若手論客として出演。日本初のセルフブランディングをテーマにした「自分をつくる学校」学長を手がけるほか、書籍やイベントの企画•プロデュース、野村不動産、リクルート、東京ガスなど企業が参画する「ポスト団塊ジュニアプロジェクト」のアドバイザーも務めるなど、企業や分野を超えて活動中。
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