ヤッターマンのドロンボー一味。右がボヤッキー(C)タツノコプロ・読売テレビ 2008
笹川作品を手に、ボヤッキーにラブコールを送る会津マンガ文化研究会のメンバー
メンバーに笹川ひろしさんが贈った直筆のドロンボー一味。右がボヤッキー
実写版が公開中の人気アニメ「ヤッターマン」。その悪役3人組のひとりボヤッキーに市民登録してもらおうという声が、福島県会津若松市のファンの間で起きている。アニメ版の監督・笹川ひろしさん(72)が市出身で、ボヤッキーもそば職人を目指して市から上京したが、果たせずにいるという設定だからだ。
笹川さんは、地元の伝統産業である会津漆器の職人だったが、故・手塚治虫さんにあこがれて上京、初のアシスタントに採用された。その後、タツノコプロの創立にかかわり、ヤッターマンなどの「タイムボカンシリーズ」や「ハクション大魔王」など、子どもたちをテレビにくぎ付けにした多くの作品で総監督などを務めた。
笹川作品では、悪役ながら憎めないキャラクターにファンが多く、ヤッターマンではドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーらインチキ商売で稼ぐドロンボー一味の人気は高い。メカ開発担当のボヤッキーは「全国の女子高生のみなさ〜ん」と呼びかけるが相手にされず、「会津若松のお花ちゃん」に思いをはせる。
笹川さんによると、「会津若松のお花ちゃん」はスタッフとの雑談中、遊び心で口にしたが、その後愛されて定番化したという。
実写版公開を機に、笹川さんの郷土愛がにじむキャラクターのボヤッキーを街おこしにつなげようと、同市の写真家、佐久間庄司さん(58)ら漫画愛好家が立ち上がり、この2月、「会津マンガ文化研究会」準備室をつくった。6月にもNPOとしての活動を本格化させる予定。最近も上京して笹川さんに会い、「ぜひボヤッキーに市民になって」と呼びかけた。
故郷からの熱烈な声に笹川さんは「光栄です」。だが「ボヤッキーはドロンボー一味なので、伝統ある会津若松市民にふさわしいかどうか……」と照れている。
アニメのキャラクターでは「鉄腕アトム」が埼玉県新座市の名誉市民に、「クレヨンしんちゃん」一家が埼玉県春日部市に住民登録されるなどし、観光客の誘致やまちの活性化に一役買っている。(足立朋子)