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焦点 災害公営住宅着工率1.6% 用地と人手足りず 東北
東日本大震災で被災した東北地方で、災害公営住宅(復興住宅)の建設が進んでいない。青森、岩手、宮城、福島4県が計画する2万7667戸のうち、1日時点で着工したのはわずか1.6%だ。多くの仮設住宅が居住期間(現段階で3年間)を終える2014年度末までの完成は4割にとどまる見込み。背景には、被災地の適地不足と自治体職員の人手不足が横たわる。
<入居開始は24戸> 建設戸数や入居完了予定時期は表の通り。4県の沿岸39市町村と、建設予定がある内陸の7市町にアンケートするなどして調べた。 県別の建設戸数は青森が67戸、岩手5600戸、宮城1万5000戸、福島7000戸。地震で被災した内陸部では、大崎市や宮城県涌谷町などが建設するほか、一関市が検討する。福島は地震や津波の被災者に加え、福島第1原発事故の避難者向けにも用意する。 これまで完成したのは相馬市の2棟24戸。土地の造成や基礎工事に入ったのは八戸市や岩手県岩泉町、大船渡市、仙台市、岩沼市、宮城県山元町、相馬市の7市町の445戸で、着工率は1.6%だ。
<国「延長判断も」> 仮設住宅の入居期間は原則2年から1年延長され、大半の住宅は現段階で14年度中に期限となる。14年度末までに全戸完成の見込みは、釜石市や岩沼市など15市町村の計1万656戸(38.5%)。東松島市は17年度末を見込む。 阪神大震災では、仮設住宅の入居期間が3度延長され、被災者は最長で5年間入居した。厚生労働省は「復興状況や復興住宅建設の進行具合をみて、延長の必要性を判断する」という。 建設の遅れの要因について、多くの自治体は「適地がない」と口をそろえる。沿岸の高台や内陸の平地は既に仮設住宅が立ち並ぶ。「新たに高台を造成せざるを得ず、どうしても時間がかかる」(宮城県女川町) 気仙沼市や東松島市は土地不足から、津波被害を受けた学校などの公共施設跡地に復興住宅を建てる。 人手不足や事務手続きの煩雑さも自治体を悩ませる。復興交付金の申請手続きや用地の調査・測量に追われる石巻市は「技術職員が足りない」、相馬市は「土地の抵当権や相続関係の整理に人と時間が必要」と説明する。
<民間住宅を活用> 工事期間の短縮を狙い、釜石、石巻、東松島、大崎、仙台の各市と宮城県亘理町は民間企業が新築した集合住宅や一戸建て住宅を買い上げたり、借り上げたりする。東松島市は全体の3分の1を買い上げて復興住宅にする。市建設課は「用地造成に時間がかかる分、民間のノウハウを生かして少しでも早く完成させたい」と語る。 福島第1原発事故の影響で、福島県の一部では戸数の試算や場所の選定もできていない。県は避難者向けに復興住宅5000戸を整備する方針だが、「具体的な話はこれから」という。 町全域が警戒区域の富岡町は「現時点では県営住宅を他の自治体内に建ててもらうことになる。受け入れてくれる自治体と丁寧に調整したい」(企画課)と話す。
2012年09月09日日曜日
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