[ナナメ目線! ジャパコリアン Vol.6]
幼少期を日本で過ごし、今では日韓を股にかけるイケメン企業家の韓国人・具(Gu)。両国で過ごす中で培われたバランスのとれた視野と豊かな感性を持ち、両国の言葉を巧みに話すクレバーな彼は、はたして日韓をどう見ているのでしょうか。
本日は、彼が実際に担った韓国の兵役義務・諜報部隊(前編)についてお送りします。
今年も年末がやってきた。毎年、年末になると私は軍にいた頃を思い出す。特に紅白歌合戦は軍時代を彷彿させるトリガーとなっている。
紅白歌合戦と韓国の軍隊。まったく関係のないものであり、どうしてそれが結びつくのか不思議に思うことだろう。今回は年末の話を皮切りに私の韓国での軍生活について話をしてみようと思う。
私は今から6年前に多くの韓国人と同じように、軍に入隊した。この連載でも一度触れたことがあるが、韓国の男性には約2年の兵役義務が課せられている。一般的に韓国の大学生の場合、大学2年生になると大学を休学して軍に入隊、2年後に復学する流れだ。
しかし私はそのとき日本の大学に通っていて、すでに出版社で仕事も始めてしまっていたのでなかなか休学できずにいた。正直どうにかして軍隊に行かずに済む方法はないかと悩んだりもした。しかし結局大学4年の終わり頃にようやく休学届けを出し、その翌年の夏に軍に入隊する。
韓国軍は他国の軍隊と同じように、大きく陸軍・海軍・空軍・海兵隊などに分かれている。しかし陸軍以外は志願制で、試験や審査があるだけでなく服務期間も少し長期間なので、ほとんどの韓国人男性は陸軍に入る。陸軍もさまざまで、一般歩兵から砲兵、輸送兵、通信兵などかなり多ジャンルだ。
最初のブートキャンプまでは全員同じ場所で訓練を受け、ブートキャンプが修了すると部隊への振り分けが行われる。その基準は常にランダムだ。特別な資格を持っていると少し優遇されたりもするが、振り分け時の空き次第では資格と全く関係のない部隊に飛ぶことも多い。どの部隊に配属になるかで軍生活の天国と地獄が決まるので、配属にはかなりの運が必要だ。
ここまでは韓国人の知人を持つ人なら一度は聞いたことがある話かもしれない。日本のテレビなどでも度々特集を組まれたりもするので、今やそれほど珍しくない話になりつつある。しかし私の場合はイレギュラーであった。実際、私の軍生活は韓国人の友人でさえ珍しそうに聞いてくる。なぜなら私は諜報部隊に配属されたからである。
入隊前、私は肉体系の一般陸軍にはどうしても入りたくなかった。日本の大学へ通い、日本の出版社で仕事をした経験をまっさらにしたくなかったのだ。編集の仕事というのは常に感覚的なセンスを必要とする。2年も離れてしまったら復帰できなくなる可能性もある。
私はなにか方法はないかと必死に探した。情報を集めはじめて1年ほど経ったある日、たまたま韓国の防衛省(国防部)のホームページから諜報部隊員の募集が見つかった。仕事の内容は語学を生かした情報収集や事務とのこと。これまでやってきたこととなにか結びつくと思い、私はすぐに応募することにした。身体検査をはじめ、試験や面接も行うという。
『007』シリーズで有名になった英国の諜報部隊「MI6」も2006年から一般公募を行っているが、私が入隊したのはこれより前だ。想像もしていなかった現実がそこにはあったのだ。(ライター/ 具 滋宣)
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【具 滋宣(Shigenobu Gu)のプロフィール】
ソウル生まれ筑波育ちの編集ライター。
早稲田大学商学部卒。日本の出版社勤務を経てフリーに。
元韓国諜報部隊研究員やロックミュージシャンという異色の経歴を持つ。
現在は日本と韓国で2つの株式会社の代表を務める。
無類のバイリンガル。1981年生まれの蟹座。
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※ジャパコリアン(日韓の事情に精通し、両国に対して客観的で平等な価値観を持つ韓国人のこと。通称ジャコリンともジャパリンと呼ばれて日韓で愛される日も遠くないはずだ。逆はコリパニーズなど/ Pouch造語)
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photo by flickr MShades
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